転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi

文字の大きさ
158 / 171
11章 アレクシアと波乱のお披露目会

いよいよ始まるお披露目会①

「ちゅかれまちた!もう嫌でしゅ!」

頭から湯気が出ているアレクシアは、お披露目会の授業中に熱でフラフラになりダウンしてしまった。そんなアレクシアが眠るベッドの周りには心配した爺達や魔国の国王陛下デズモンド、そして魔国のオネェ魔公爵ランゴンザレス(ちょっと!)が集まっていた。

「お主でも熱が出るんじゃな!馬鹿ちんは風邪を引かないって言うのにのう~?」

「ズビッ!鼻水攻撃を受けるがいい~!ズビッ!」

アレクシアは魔国の大賢者で憎き師匠のポポ爺に鼻水付きのちり紙を投げつける。だが力が出ないのか、すぐ近くにいた竜族族長であるゼストにぶつかった。

「おい!汚ねぇな!ゴミ箱に捨てろ!ってかお前、辛いなら治癒魔法で治せばいいだろ!」

文句を言いながらもアレクシアを心配するゼストが疑問を口にした。

「⋯⋯。ズビッ!何でも魔法に頼ったらダメでしゅよ!ズビッ!自分で治す事を覚えないと苦労知らずの馬鹿ちんな人になってしまいましゅ!ズビッ!」

良い事を言っているようだが、アレクシアのことなので何か魂胆があるのではと皆が疑いを持っていた。

「お前の事だからどうせ勉強会から逃げる口実だろう?」

世界樹であるエン爺は呆れながらも、苦しそうなアレクシアにちり紙を渡している。そんなエン爺も目の下に大きな隈ができていた。他の爺達も生気を失ったかのように弱々しい姿をしていた。

アウラード大帝国の裏ボスことロインの授業には、海千山千の爺達でも耐えられずにどうやって逃げようかを毎日話し合うまでになっていた。だが、可愛いアレクシアの為にと、あのサボりのプロである初代魔国国王陛下デイルズですら逃げずにちゃんと授業を受けていた。

「ズビッ!ズビッ!」

「アレクシア、大丈夫か?」

「婚約者ねぇ~?今回は上手くいくのか?前回みたいな事があったら俺が魔国を一掃するぞ~?掃除は得意なんだ」

いくら啜っても鼻水が垂れるアレクシアに、婚約者である魔国国王陛下デズモンドが嬉しそうにちり紙で拭いてあげている。そんなデズモンドを見ていた夜叉が嫌味ったらしく苦言を呈した。デイルズから婚約の話を聞いた時から気に入らなかったのだ。

「ああ、今回は絶対にアレクシアを守る。もう二度とあんな辛い決断をさせないし、二人でどんな苦難も乗り越えていく!」

デズモンドは決意を込めた真剣な眼差しを夜叉に向けた。そんなデズモンドを見て祖父であるデイルズは目頭が熱くなる。

「うぅ⋯。アレクシアとデズモンドはわしが全力で守り抜くぞ!二人を幸せにするまでわしは死ねんわい!」

「そうじゃな。お馬鹿な弟子じゃが、幸せになってもらわないとな」

ポーポトスも頷きながらアレクシアを見た。アレクシアは涙を見せたくなくて恥ずかしそうに顔を隠したが、皆が温かい視線を送っていた。

「む。婚約者(仮)だぞ!」

そこへアレクシアの父親でありアウラード大帝国皇帝であるルシアードと、優秀な側近で裏ボスと呼ばれるロインがやって来た。ルシアードは心配そうにアレクシアの元へ行くと優しくおでこを触った。

「む。まだ熱があるな。こんなに苦しそうなんだ、今回の婚約式は延期にしよう」

「陛下、寝言は寝てから言ってください。アレクシア様、具合はどうですか?」

ロインに笑顔で全否定されたルシアードだが、まだどうにかして婚約を破棄させたいので諦める様子はない。

「ズビッ!伯父上、シアは頑張りたいんでしゅが⋯ズビッ!⋯⋯ズビッ!」

「苦しそうですね、ここ数日は頑張っていたので疲れたのでしょう。ゆっくり休んで下さい」

ロインの言葉を聞いた瞬間、アレクシアがほくそ笑むのを多くの爺達が目撃したのだった。




翌日。

「ヒャッホーー!!自由でしゅーー!!」

ベッド中をコロコロと転がり叫び続けるアレクシアに、呆れた視線を向けるのは執事の夜叉とアランカルトだ。ミルキルズは執事なのだがまだ出勤してこない。

「おいおい、もう治ったのか~?」

「ふん!治癒魔法で一発でしゅよ!」

「「⋯⋯」」

弱々しかった昨日とは大違いで、いつも以上の悪童っぷりで大騒ぎするアレクシアの元へ子犬従魔達がよちよちと集まってきた。

『主しゃま~!元気になったんでしゅね~!』

白玉が嬉しそうにアレクシアに飛び込んだ。黒蜜もみたらしもきなこも、そしてあんこもアレクシアに抱っこして欲しそうによじ登って来た。

「白玉!皆んなも!昨日はどこにいたんでしゅか?」

『風邪が移ったら大変だかりゃ隣のお部屋にいまちた!』

『アランカリュトが来ちゃダメって言ったー!』

みたらしときなこが主に正直に報告した。アレクシアはジト目で涼しい顔をしているアランカルトを見た。

「アランカルト!主であるシアを放置してまちたね!!このしゅっとこどっこいめ!」

「夜叉様もミルキルズ様もいるので私は必要ないかと?それにこの子達が風邪ひいたら大変ですから」

「何でしゅと!?聖獣が風邪引くわけないでしゅよ!この馬鹿ちん!!それにミル爺は執事って言ってましゅがただの爺でしゅ!いつもソファーで寛いで茶を飲みながらまったりしてましゅし、昨日はそれでルルとララに怒られてまちた⋯⋯プッ!」

何もしないミル爺を見かねた最強姉妹の女官であるルルとララに呼び出されて長らく説教されていたのだ。それを物陰から見ていたアレクシアと夜叉はそこに拗らせ女官ハナも呼んだのだった。

「ああ、あれは面白かったな!あのハナって女官はずっと変なネックレスをミルキルズの爺さんに向けて“悪霊退散ー!”って言ってたな!アハハハ!」

思い出し笑いをしている夜叉が一番ふざけていそうだが、実は優秀な執事だった。朝もアレクシアよりも早く起きて朝食の準備をしているし、癖の強すぎるルルララ姉妹や拗らせハナすらも上手く手懐けてもいた。

「ミル爺はまた寝坊でしゅか!?全く!減給でしゅね!」

「いつもの事だろ!で?今日はどうするんだよ?」

アランカルトは子犬達のご飯を準備していて、夜叉がそんなぶれないアランカルトに呆れながらも、アレクシアに今日の予定を聞いている。

「ふふ、今日は久しぶりにギルドに行ってアランしゃんに魔物の解体を頼みましゅ!色々と事情を説明しなきゃいけないでしゅしね!他の爺達はロイン伯父上が拘束してましゅし~?父上も仕事でしゅし~?デズモンドもランしゃんも魔国で仕事でしゅし~?」

「ここにお前の気配を残しておけば良いんだな!俺がやってやるから着替えて来い!」

「あい!」

アレクシアは嬉しそうに返事をするとスキップしながら着替えに行ったのだった。



いつもの軽装に着替えたアレクシアは、夜叉とアランカルト、そして久しぶりの外出に嬉しそうな子犬達と共に帝都の街に繰り出したのだった。

「ああ、外の空気はいいでしゅねぇ~!」

「ギルドはあの大きな建物か~?」

アレクシアの横に立つ夜叉の雰囲気がいつもと違う。あの姿だと目立つと思ったので毒々しい赤紫の瞳が普通の茶色に変わっていて、褐色の肌はそのままだが、異国出身の好青年にしか見えない。

アウラード大帝国には様々な冒険者が行き来している。その中には褐色の肌の者も多い。少数民族に多いとされるので特に違和感なく街に溶け込んでいる。夜叉はかなりの美青年なのでかなり目立っているが、本人はあまり気にしていない。

「さて、ギルドに出発ーー!!」

『『『『『キャンキャン!!(イエッサーーー!!)』』』』』

可愛らしい幼子の後ろをよちよちと歩く可愛らしい子犬達、そして息を呑むほど美しい青年が二人。街の人々の視線はアレクシア達に集中しているが、気付いていないのはやはり本人達だけだ。

「ん?なんか騒がしいでしゅね?」

前方に人だかりが出来ており、中心では怒鳴り声が響き渡っていた。

「夜叉!シアを肩車しなしゃい!」

「はいはい、見えないのね」

夜叉は苦笑いしながらもアレクシアを肩車した。子犬達もアレクシアを真似してアランカルトによじ登り始めた。

アレクシアの視線の先で、かなり大柄の二人の男性が数人の冒険者らしき男達に絡まれていた。一人は黄色の長髪に黒のメッシュが入った野生味溢れる男性で、瞳は赤く、身長も二メートル近い。もう一人は金髪を短く切り揃え、瞳も金色で全てが神秘的だ。体格もこちらの方は二メートルを超えているだろう。どちらも威風堂々としていて、格好もそうだがどこぞの王族のようだ。

だが、一つ違和感があるとすれば、金髪の男性の方は何故か風呂敷を背負っていた。そんな二人を見たアレクシアは驚きと共に懐かしさが一気に込み上げてきた。

「あれは⋯はぁ。おい、大物がまたお前目当てで来たぞ~?」

夜叉が苦笑いしながら視線をアレクシアに向けた。

「⋯⋯。二人とも変わらないでしゅね⋯」

「こいつらも来たという事は⋯大物達がもっと来るぞ?」

夜叉が確信した言い方をしたが、その通りで他にも大物達が次々と動き出していたのだった。



















感想 1,406

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます

青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。 藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。 溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。 その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。 目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。 前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。 リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。 アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。 当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。 そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。 ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。 彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。 やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。 これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

拾ってないのに、最上位が毎日“帰る”んですがーー飼い主じゃありません!ただの受付係です!

星乃和花
恋愛
王都ギルド受付係リナは、今日も平和に働く予定だった。 ……のに。 「お腹すいた」 そう言って現れたのは、最上位の英雄レオン。 強いのに生活力ゼロ、距離感ゼロ、甘え方だけは一流。 手当てすれば「危ない」と囲い込み、 看病すれば抱きしめて離さず、 ついには―― 「君が、俺の帰る場所」 拾ってない。飼ってない。 ただ世話を焼いただけなのに、英雄が毎日“帰ってくる”ようになりました。 無自覚世話焼き受付嬢 × 甘えた天然英雄の 距離感バグ甘々ラブコメ、開幕! ⭐︎火木土21:20更新ー本編8話+後日談9話⭐︎

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※