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11章 アレクシアと波乱のお披露目会
いよいよ始まるお披露目会②
「ライガ、この方達は何故私達を囲んでいるのですか?」
「⋯⋯。金目の物を奪うつもりのようです。アウラード大帝国は治安が悪いのでは?」
武器を手にニヤニヤと笑う男達を前にしても、冷静な二人の男性に周りの野次馬は釘付けだった。
「キャーー!かっこいい!どこの貴族?」
「見た事ないわ!お披露目会に招待された他国の方かしら?」
「でも護衛の方はいないのかしら?」
「⋯⋯なんで風呂敷なの?」
女達は黄色い声を上げ、男達は絡まれている者達の動向を見守っている。風呂敷を背負った麗しき男性達を不思議そうに見ている者も多い。
「ふむ。少し大人しくしていてもらいましょうか」
「殺したら大騒ぎになりますからね」
そう言うと、金髪の男性が武器を持つ男達の方へ自ら歩き出した。
「やめなしゃーーい!!」
そこに場違いな幼子の声がしてのでこの場にいる皆がそちらへ顔を向けた。褐色の肌の美青年に肩車された可愛らしい幼子と、子犬達に揉みくちゃにされている青髪の美青年が立っていた。
「ああん?お前⋯C級冒険者のガキか!ギルドマスターに目をかけてもらってるからって調子に乗りやがって!」
男達の標的がアレクシアに変わったらしくこちらに向かって来る。
「あんた達!ここは帝都でしゅよ!?こんな所で堂々とカツアゲでしゅか?馬鹿ちん共めー!!」
「クソガキが!ぶっ殺してやる!」
「ふん!シアが出るまでもないでしゅ!者ども!出会えーー!!」
アレクシアが執事である夜叉とアランカルトに勢いよく命じた。
「はいはい。殺しても良いの~?」
「ダメでしゅよ!馬鹿ちん!」
そんなやり取りをしている幼子と褐色の肌の青年を見て驚愕しているのは、先程まで絡まれていた二人の麗しき男性だ。
「ライガ⋯、あれは⋯本当にあの子だ!」
「ええ、ええ!馬鹿ちんなんて言うのはポーポトス殿とあの子ぐらいです!」
自然とこぼれ落ちる涙を拭うと、金髪の男性が動いた。武器を振り上げた男の手を持つと簡単に持ち上げて放り投げ壁に叩きつけた。そして他の男達は彼と目が合うと急に冷や汗が流れて震え出したまま動けなくなってしまった。中にはガタガタ震えたまま失禁している者もいた。
それを見ていた野次馬もあまりに突然の事に唖然としたままだ。
「ライアード!馬鹿ちんでしゅか!?“獅子王”の覇気を放ちまちたね!?ここにいる者達を殺す気でしゅか!!」
「いや、あれはかなり抑えているぞ?本気だったらここにいる者達は全員死んでたな」
とは言え夜叉も苦笑いしていた。
竜族のアランカルトですら驚きを隠せないでいた。獣人国のライアード王の事は聞いた事があったが、竜族至上主義のアランカルトは獣人国ですら馬鹿にして見下していた。だが、今はそんな自分がどれだけ愚かだったか身に沁みて理解した瞬間であった。
失神するように倒れた冒険者崩れ達を無視して、獣人国国王ライアードと宰相ライガがアレクシアの方へやって来た。
「⋯⋯。ラルフレアに聞いた時は驚きましたが、本当に貴女なのですね?」
「あい。今はアレクシアでしゅ!三歳でしゅ!」
アレクシアを嬉しそうに抱っこして涙するライアードの横で同じく涙するライガだったが、アレクシアと一緒にいるのが気配を消してはいるがその見た目や雰囲気からあの夜叉だと分かり警戒心を高めた。
「何故に夜叉がいるんだ?封印したはずだろう!?」
「ああ、自分で解いて城を半壊したんでしゅ⋯プッ!逃亡犯でしゅが、家無しで可哀想だったからシアのしちゅ⋯し⋯しちゅ⋯執事にしたあげまちた!」
「半壊って⋯あの阿修羅の怒りを想像すると、半殺しじゃ済まないぞ?」
ライガは想像して身震いする。
「アハハ~!その時はこのちんちくりんに庇ってもらう予定です~!」
「ちんちくりんでしゅと!?今すぐにあんたをボコボコにして阿修羅婆に届けましゅよ!着払いでしゅ!!」
「すみませんでした!!!」
すぐにアレクシアに土下座して謝る夜叉だが、ライアードやライガは彼の雰囲気があまりに違うので少し驚いたが警戒は怠らない。
「二人はなんでアウラードに来たんでしゅか?落ち着いたら遊びに行こうと思ってたんでしゅよ?」
「エルフ族からお披露目会の件を聞きましてね?あなたの婚約式も行うらしいじゃないですか!」
興奮気味なライアードを宥めるライガ。
「ぐぬぬ⋯エルメニア婆め!年寄りになったら余計にお喋りになりまちたね!!」
婚約式と言われて恥ずかしそうなアレクシアは、八つ当たりでエルメニアに対して暴言を吐く。
「他には!?誰が来るんでしゅか!!⋯⋯地獄森に行った時、会いたかったのに会えなかった⋯⋯もう死んだんでしゅよね?」
悲しそうに下を向いてしまったアレクシアを見て、ライアードやライガは誰の事を言っているか理解した。アリアナ時代、赤ん坊の頃から面倒を見てくれた魔物がいた。地獄森でも恐れられるSSS級の魔物で名を“蒼天”と言う。天狼族の長であり、ゼストに並んで育ての親と言っていい魔物だった。
地獄森に行った時、彼方から会いに来てくれるんじゃないかと期待していたが来なかった。かなりの高齢だったし、皆も何も言わないのでもう死んだのだと思いその夜は蒼天との思い出が蘇り涙を流した。
「⋯⋯蒼天殿ですね。正直に言うと我々もずっと会っていないのです。一度心配で会いに行ったのですが洞窟の奥から出て来てくれませんでした」
「死んだとは聞いていない。生きてはいると思うが⋯⋯」
ライガもなんとも言えずに黙ってしまった。皆が何とも言えない空気になっていた時だった。
「アリアナーー!!」
手を振り、嬉しそうにこちらに向かって走って来る青年が見えた。年齢は二十代後半くらいだろうか、青紫の髪を後ろで軽くまとめ、ブルーサファイアのような神秘的な瞳をした精悍な男性だ。普通の平民服がこれほどに似合わないのは珍しいくらい上品で王族のような雰囲気の青年だった。
「知り合いか~?ってか今アリアナって言ったぞ?」
夜叉は見たこともない青年を見て警戒心を高め、すぐにアレクシアを背後に隠した。ライアードもライガも警戒するが、何故か子犬達は尻尾を振りながら嬉しそうに青年に向かって行こうとする。
「これ!少しは落ち着かんか!!」
そんな青年の首根っこを掴んだ人物は、アレクシア達も良く知っている人物だった。美しい銀髪を靡かせている絶世の美青年は神狼“ガイア”であった。
「そうじゃぞ!ここではちゃんと人族に見えるようにせんとな!」
ガイアの横には身に覚えがある燃えるような赤髪の美しく妖艶な女性がいた。
「朱雀婆!それにガイ爺!!派手でしゅがちゃんと人族に見えましゅ!!」
「ふん!妾にできない事は無いわ!⋯⋯そこの大柄な者達はライアードとライガか!?」
神狼と神鳥の登場に、ライアードとライガは急いで跪いた。獣人国では神獣は神として崇められているからだ。
「ガイア様、朱雀様。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。このようにまたお元気な姿を拝見するだけでも我々は感無量です」
獅子王ライアードがガイアと朱雀に深々と頭を下げる。
「頭を上げるが良い。ここでは目立つゆえ、移動した方がいいのう」
ガイアの言う通り、野次馬が次々と現れて大騒ぎになり始めた。
「はっ!兵士達が来る前にギルドに行きましゅよ!」
アレクシアが泣いている謎の青年を不思議そうに見ながらも、ギルドへ皆を促している。
こうして一同は逃げるようにギルドへ向かったのだった。
ギルドに入ると、アレクシアを見つけた冒険者達が嬉しそうに手を振っていた。それにアレクシアも反応して嬉しそうに手を振り返していた。
「やっぱりギルドは良いでしゅね~!!」
アレクシアは皆を併設する食堂に連れて行き席に座らせたが、あまりにキラキラした集団なのでかなり目立っていた。
「で!この泣き続けてるちとは誰でしゅか?」
ずっと泣き続けている青紫色の髪をした青年を見ながらアレクシアがガイア達に問う。
「分からんか?まぁ人化したばかりじゃから分からんのも当たり前かのう」
朱雀がニヤリと悪戯っぽく笑った。
「ほれ!泣いてないで魔力を少し解放してみるんじゃ!」
「うぅ⋯アリアナよ⋯」
青年は泣きながらも頷いて魔力を少し解放した。その瞬間、アレクシアは驚いて目を見開いた。
「ましゃか⋯蒼天でしゅか?」
自然と涙が溢れてくるアレクシア。
「ああ、わしじゃ!またお主と会えるとは!」
蒼天と呼ばれた青年は嬉しそうにアレクシアを抱きしめたのだった。
ーおまけー
*アレクシア『爺ばかりでしゅ!作者!!どうにかしろでしゅ!』
作者『⋯⋯プッ』
「⋯⋯。金目の物を奪うつもりのようです。アウラード大帝国は治安が悪いのでは?」
武器を手にニヤニヤと笑う男達を前にしても、冷静な二人の男性に周りの野次馬は釘付けだった。
「キャーー!かっこいい!どこの貴族?」
「見た事ないわ!お披露目会に招待された他国の方かしら?」
「でも護衛の方はいないのかしら?」
「⋯⋯なんで風呂敷なの?」
女達は黄色い声を上げ、男達は絡まれている者達の動向を見守っている。風呂敷を背負った麗しき男性達を不思議そうに見ている者も多い。
「ふむ。少し大人しくしていてもらいましょうか」
「殺したら大騒ぎになりますからね」
そう言うと、金髪の男性が武器を持つ男達の方へ自ら歩き出した。
「やめなしゃーーい!!」
そこに場違いな幼子の声がしてのでこの場にいる皆がそちらへ顔を向けた。褐色の肌の美青年に肩車された可愛らしい幼子と、子犬達に揉みくちゃにされている青髪の美青年が立っていた。
「ああん?お前⋯C級冒険者のガキか!ギルドマスターに目をかけてもらってるからって調子に乗りやがって!」
男達の標的がアレクシアに変わったらしくこちらに向かって来る。
「あんた達!ここは帝都でしゅよ!?こんな所で堂々とカツアゲでしゅか?馬鹿ちん共めー!!」
「クソガキが!ぶっ殺してやる!」
「ふん!シアが出るまでもないでしゅ!者ども!出会えーー!!」
アレクシアが執事である夜叉とアランカルトに勢いよく命じた。
「はいはい。殺しても良いの~?」
「ダメでしゅよ!馬鹿ちん!」
そんなやり取りをしている幼子と褐色の肌の青年を見て驚愕しているのは、先程まで絡まれていた二人の麗しき男性だ。
「ライガ⋯、あれは⋯本当にあの子だ!」
「ええ、ええ!馬鹿ちんなんて言うのはポーポトス殿とあの子ぐらいです!」
自然とこぼれ落ちる涙を拭うと、金髪の男性が動いた。武器を振り上げた男の手を持つと簡単に持ち上げて放り投げ壁に叩きつけた。そして他の男達は彼と目が合うと急に冷や汗が流れて震え出したまま動けなくなってしまった。中にはガタガタ震えたまま失禁している者もいた。
それを見ていた野次馬もあまりに突然の事に唖然としたままだ。
「ライアード!馬鹿ちんでしゅか!?“獅子王”の覇気を放ちまちたね!?ここにいる者達を殺す気でしゅか!!」
「いや、あれはかなり抑えているぞ?本気だったらここにいる者達は全員死んでたな」
とは言え夜叉も苦笑いしていた。
竜族のアランカルトですら驚きを隠せないでいた。獣人国のライアード王の事は聞いた事があったが、竜族至上主義のアランカルトは獣人国ですら馬鹿にして見下していた。だが、今はそんな自分がどれだけ愚かだったか身に沁みて理解した瞬間であった。
失神するように倒れた冒険者崩れ達を無視して、獣人国国王ライアードと宰相ライガがアレクシアの方へやって来た。
「⋯⋯。ラルフレアに聞いた時は驚きましたが、本当に貴女なのですね?」
「あい。今はアレクシアでしゅ!三歳でしゅ!」
アレクシアを嬉しそうに抱っこして涙するライアードの横で同じく涙するライガだったが、アレクシアと一緒にいるのが気配を消してはいるがその見た目や雰囲気からあの夜叉だと分かり警戒心を高めた。
「何故に夜叉がいるんだ?封印したはずだろう!?」
「ああ、自分で解いて城を半壊したんでしゅ⋯プッ!逃亡犯でしゅが、家無しで可哀想だったからシアのしちゅ⋯し⋯しちゅ⋯執事にしたあげまちた!」
「半壊って⋯あの阿修羅の怒りを想像すると、半殺しじゃ済まないぞ?」
ライガは想像して身震いする。
「アハハ~!その時はこのちんちくりんに庇ってもらう予定です~!」
「ちんちくりんでしゅと!?今すぐにあんたをボコボコにして阿修羅婆に届けましゅよ!着払いでしゅ!!」
「すみませんでした!!!」
すぐにアレクシアに土下座して謝る夜叉だが、ライアードやライガは彼の雰囲気があまりに違うので少し驚いたが警戒は怠らない。
「二人はなんでアウラードに来たんでしゅか?落ち着いたら遊びに行こうと思ってたんでしゅよ?」
「エルフ族からお披露目会の件を聞きましてね?あなたの婚約式も行うらしいじゃないですか!」
興奮気味なライアードを宥めるライガ。
「ぐぬぬ⋯エルメニア婆め!年寄りになったら余計にお喋りになりまちたね!!」
婚約式と言われて恥ずかしそうなアレクシアは、八つ当たりでエルメニアに対して暴言を吐く。
「他には!?誰が来るんでしゅか!!⋯⋯地獄森に行った時、会いたかったのに会えなかった⋯⋯もう死んだんでしゅよね?」
悲しそうに下を向いてしまったアレクシアを見て、ライアードやライガは誰の事を言っているか理解した。アリアナ時代、赤ん坊の頃から面倒を見てくれた魔物がいた。地獄森でも恐れられるSSS級の魔物で名を“蒼天”と言う。天狼族の長であり、ゼストに並んで育ての親と言っていい魔物だった。
地獄森に行った時、彼方から会いに来てくれるんじゃないかと期待していたが来なかった。かなりの高齢だったし、皆も何も言わないのでもう死んだのだと思いその夜は蒼天との思い出が蘇り涙を流した。
「⋯⋯蒼天殿ですね。正直に言うと我々もずっと会っていないのです。一度心配で会いに行ったのですが洞窟の奥から出て来てくれませんでした」
「死んだとは聞いていない。生きてはいると思うが⋯⋯」
ライガもなんとも言えずに黙ってしまった。皆が何とも言えない空気になっていた時だった。
「アリアナーー!!」
手を振り、嬉しそうにこちらに向かって走って来る青年が見えた。年齢は二十代後半くらいだろうか、青紫の髪を後ろで軽くまとめ、ブルーサファイアのような神秘的な瞳をした精悍な男性だ。普通の平民服がこれほどに似合わないのは珍しいくらい上品で王族のような雰囲気の青年だった。
「知り合いか~?ってか今アリアナって言ったぞ?」
夜叉は見たこともない青年を見て警戒心を高め、すぐにアレクシアを背後に隠した。ライアードもライガも警戒するが、何故か子犬達は尻尾を振りながら嬉しそうに青年に向かって行こうとする。
「これ!少しは落ち着かんか!!」
そんな青年の首根っこを掴んだ人物は、アレクシア達も良く知っている人物だった。美しい銀髪を靡かせている絶世の美青年は神狼“ガイア”であった。
「そうじゃぞ!ここではちゃんと人族に見えるようにせんとな!」
ガイアの横には身に覚えがある燃えるような赤髪の美しく妖艶な女性がいた。
「朱雀婆!それにガイ爺!!派手でしゅがちゃんと人族に見えましゅ!!」
「ふん!妾にできない事は無いわ!⋯⋯そこの大柄な者達はライアードとライガか!?」
神狼と神鳥の登場に、ライアードとライガは急いで跪いた。獣人国では神獣は神として崇められているからだ。
「ガイア様、朱雀様。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。このようにまたお元気な姿を拝見するだけでも我々は感無量です」
獅子王ライアードがガイアと朱雀に深々と頭を下げる。
「頭を上げるが良い。ここでは目立つゆえ、移動した方がいいのう」
ガイアの言う通り、野次馬が次々と現れて大騒ぎになり始めた。
「はっ!兵士達が来る前にギルドに行きましゅよ!」
アレクシアが泣いている謎の青年を不思議そうに見ながらも、ギルドへ皆を促している。
こうして一同は逃げるようにギルドへ向かったのだった。
ギルドに入ると、アレクシアを見つけた冒険者達が嬉しそうに手を振っていた。それにアレクシアも反応して嬉しそうに手を振り返していた。
「やっぱりギルドは良いでしゅね~!!」
アレクシアは皆を併設する食堂に連れて行き席に座らせたが、あまりにキラキラした集団なのでかなり目立っていた。
「で!この泣き続けてるちとは誰でしゅか?」
ずっと泣き続けている青紫色の髪をした青年を見ながらアレクシアがガイア達に問う。
「分からんか?まぁ人化したばかりじゃから分からんのも当たり前かのう」
朱雀がニヤリと悪戯っぽく笑った。
「ほれ!泣いてないで魔力を少し解放してみるんじゃ!」
「うぅ⋯アリアナよ⋯」
青年は泣きながらも頷いて魔力を少し解放した。その瞬間、アレクシアは驚いて目を見開いた。
「ましゃか⋯蒼天でしゅか?」
自然と涙が溢れてくるアレクシア。
「ああ、わしじゃ!またお主と会えるとは!」
蒼天と呼ばれた青年は嬉しそうにアレクシアを抱きしめたのだった。
ーおまけー
*アレクシア『爺ばかりでしゅ!作者!!どうにかしろでしゅ!』
作者『⋯⋯プッ』
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