62 / 163
8章 アレクシアと竜の谷の人々
閑話 アレクシアのモーニングルーティン(?)〜アレクシア幼女の事件簿〜②
しおりを挟む
アレクシアがロインに連行(?)された場所は、テーブルと椅子しか置いていない薄暗い部屋だった。
(暗殺される!?)
「暗殺なんかしませんよ」
アレクシアの心を読んだ様に答えるロインに震える。そんなロインに促されて椅子に座るアレクシアの足元には、ガタガタと震えながらも大好きな主の為について来た五匹の子犬従魔がいる。
アレクシアを座らせて、自身も座るロイン。手元には分厚い書類を持っていて、それを開きながら話し出した。
「たくさんあり過ぎてどこから話せば良いのか⋯。まずは闇ギルド殲滅事件からですかね?」
ロインの鋭い視線がアレクシアを捉えて離さない。
「シアは何も知りましぇんよ!闇ギルド~?そんな怪しいギルドがあるんでしゅか!?怖いでしゅねぇ~?」
「⋯⋯目が物凄い勢いで泳いでいますよ?貴女は分かりやすいですね?」
ロインに鼻で笑われるアレクシア。従魔達も興味津々に下から主を覗いている。
「貴女が闇ギルドを潰した調べはついています。ある方から全て聞いていますので今更弁解しても意味ないですよ?」
「何でしゅと!?ランしゃんめぇ~裏切りまちたね!!」
怒り心頭のアレクシアはランゴンザレスをボコボコにしようと心に決めた。
「ほぅ?ランゴンザレスも関わっているんですか?私は闇ギルドの連中から吐か⋯聞き出したんですがね」
「今吐かせたって言いまちたか!?⋯⋯ランしゃん!シアは信じていまちたよ!!」
今頃は悪寒がしているだろうランゴンザレスに向かい静かに手を合わせるアレクシア。
「何故闇ギルドのアジトが分かったんですか?私達も調べましたが中々情報が掴めなかったんです」
問いかけても何も話そうとしないアレクシアを見て、ロインが徐に話し出した。
「孤児院が闇ギルドの隠れ蓑だったんですね。子供達を人質にしていたから院長も職員も何も出来なかった。そこに新しい子供が保護されて来たんですよ。名前は確か⋯どんぐりでしたっけ?」
「どんぐり!?ドラでしゅよ!!って⋯⋯はっ!!」
やらかしたアレクシアは口を押さえるが後の祭りだ。
「本当に貴女は賢いのか馬鹿なのか分からなくなりますよ。⋯その幼いドラがやって来た日に闇ギルドの連中は捕まった。見るも無惨な姿でしたよ。裸で木に括り付けられて、顔中に落書きがされていました。第一発見者はあまりの光景に笑いが止まらず、孤児院の者達の証言は口を揃えてドラと五匹の子犬、そしてピンクが暴れていたでしたが⋯ああ、ピンクはランゴンザレスの事だったんですね」
ピンクの意味を今理解したロインであった。
「闇ギルドの奴らが捕まったんなら良いじゃないでしゅか!そのドラには感謝として金貨千枚を渡ちて下しゃいな!シアが渡ちておきましゅよ!」
そう言って手を伸ばして催促するアレクシアを見て溜め息を吐くロイン。
「貴女の叔父として言わせて下さい。あまり心配をかけるんじゃない」
ロインの心からの言葉に何も言えなくて黙ってしまうアレクシアだが、手だけは伸ばしたままだ。
「ですが貴女のお陰で子供達も助かり、怪我人やましてや死者を出さずに済みました。ありがとうございます」
アレクシアに頭を下げるロイン。
「頭を上げて下しゃいな!シアはそのドラとは知り合いでしゅから伝えましゅよ!あと⋯この前壁を破壊した罰を無しにしてくれたら⋯」
「それはそれですよ、皇女?」
アレクシアは一週間前に城の壁を破壊してロインに説教され、魔法使用禁止の壁修復作業の刑を言い渡されたのだ。まだ幼子でしかも皇女がたった一人で修復作業をしている光景は異様で、更にそこへこの帝国のトップが加わり黙々と親子作業をしている事で生きた心地がしない女官や従者達がロインに泣きついて中止になっていたのだった。
「嫌ならもう城内で暴れないで下さい。この子達と鬼ごっこしたらああなる事は分かっているでしょう?」
ちらっと見られた五匹はテーブルの下に潜って出てこない。
「分かりまちた!反省しましゅからもう終わりで良いでしゅか?」
そう言って椅子から降りようとしたアレクシアに無情にも伸ばされた手。
「まだですよ?ルシアード皇帝陛下の名を使ってある貴族からお金を巻き上げましたね?」
「何でしゅと!?失礼な言い方でしゅね!悪い事して溜め込んだお金を回収したんでしゅよ!」
またしても目が勢いよく泳いでいるアレクシア。
「ほう。その後にその貴族は裸で木に括り付けられて、顔中に落書きがされていました」
ロインの探る様な視線に冷や汗が止まらないアレクシア。
「ドラの仕業でしゅよ!シアは関係ありましぇん!!」
「貴女だと証言した者がいましてね」
「ランしゃんでしゅか!!あの裏切りランしゃんめぇ~!」
怒りに燃えるアレクシアだが、ロインは呆れている。
「その貴族が証言したんですよ。ランゴンザレスが関わっているのは知りませんでしたよ」
にこやかに話すロインだが、目は一切笑っていなかった。
「ランしゃん⋯ごめんちゃい」
その後、アレクシアから貴族から巻き上げたお金を孤児院の復興や支援に全額寄付したと聞いたロインはそれ以上何も言わなかった。その代わりにランゴンザレスには地獄の説教が待っていたのだった。
アレクシアは父親のルシアードと共になんと四日で壁を修復しましたとさ。
(暗殺される!?)
「暗殺なんかしませんよ」
アレクシアの心を読んだ様に答えるロインに震える。そんなロインに促されて椅子に座るアレクシアの足元には、ガタガタと震えながらも大好きな主の為について来た五匹の子犬従魔がいる。
アレクシアを座らせて、自身も座るロイン。手元には分厚い書類を持っていて、それを開きながら話し出した。
「たくさんあり過ぎてどこから話せば良いのか⋯。まずは闇ギルド殲滅事件からですかね?」
ロインの鋭い視線がアレクシアを捉えて離さない。
「シアは何も知りましぇんよ!闇ギルド~?そんな怪しいギルドがあるんでしゅか!?怖いでしゅねぇ~?」
「⋯⋯目が物凄い勢いで泳いでいますよ?貴女は分かりやすいですね?」
ロインに鼻で笑われるアレクシア。従魔達も興味津々に下から主を覗いている。
「貴女が闇ギルドを潰した調べはついています。ある方から全て聞いていますので今更弁解しても意味ないですよ?」
「何でしゅと!?ランしゃんめぇ~裏切りまちたね!!」
怒り心頭のアレクシアはランゴンザレスをボコボコにしようと心に決めた。
「ほぅ?ランゴンザレスも関わっているんですか?私は闇ギルドの連中から吐か⋯聞き出したんですがね」
「今吐かせたって言いまちたか!?⋯⋯ランしゃん!シアは信じていまちたよ!!」
今頃は悪寒がしているだろうランゴンザレスに向かい静かに手を合わせるアレクシア。
「何故闇ギルドのアジトが分かったんですか?私達も調べましたが中々情報が掴めなかったんです」
問いかけても何も話そうとしないアレクシアを見て、ロインが徐に話し出した。
「孤児院が闇ギルドの隠れ蓑だったんですね。子供達を人質にしていたから院長も職員も何も出来なかった。そこに新しい子供が保護されて来たんですよ。名前は確か⋯どんぐりでしたっけ?」
「どんぐり!?ドラでしゅよ!!って⋯⋯はっ!!」
やらかしたアレクシアは口を押さえるが後の祭りだ。
「本当に貴女は賢いのか馬鹿なのか分からなくなりますよ。⋯その幼いドラがやって来た日に闇ギルドの連中は捕まった。見るも無惨な姿でしたよ。裸で木に括り付けられて、顔中に落書きがされていました。第一発見者はあまりの光景に笑いが止まらず、孤児院の者達の証言は口を揃えてドラと五匹の子犬、そしてピンクが暴れていたでしたが⋯ああ、ピンクはランゴンザレスの事だったんですね」
ピンクの意味を今理解したロインであった。
「闇ギルドの奴らが捕まったんなら良いじゃないでしゅか!そのドラには感謝として金貨千枚を渡ちて下しゃいな!シアが渡ちておきましゅよ!」
そう言って手を伸ばして催促するアレクシアを見て溜め息を吐くロイン。
「貴女の叔父として言わせて下さい。あまり心配をかけるんじゃない」
ロインの心からの言葉に何も言えなくて黙ってしまうアレクシアだが、手だけは伸ばしたままだ。
「ですが貴女のお陰で子供達も助かり、怪我人やましてや死者を出さずに済みました。ありがとうございます」
アレクシアに頭を下げるロイン。
「頭を上げて下しゃいな!シアはそのドラとは知り合いでしゅから伝えましゅよ!あと⋯この前壁を破壊した罰を無しにしてくれたら⋯」
「それはそれですよ、皇女?」
アレクシアは一週間前に城の壁を破壊してロインに説教され、魔法使用禁止の壁修復作業の刑を言い渡されたのだ。まだ幼子でしかも皇女がたった一人で修復作業をしている光景は異様で、更にそこへこの帝国のトップが加わり黙々と親子作業をしている事で生きた心地がしない女官や従者達がロインに泣きついて中止になっていたのだった。
「嫌ならもう城内で暴れないで下さい。この子達と鬼ごっこしたらああなる事は分かっているでしょう?」
ちらっと見られた五匹はテーブルの下に潜って出てこない。
「分かりまちた!反省しましゅからもう終わりで良いでしゅか?」
そう言って椅子から降りようとしたアレクシアに無情にも伸ばされた手。
「まだですよ?ルシアード皇帝陛下の名を使ってある貴族からお金を巻き上げましたね?」
「何でしゅと!?失礼な言い方でしゅね!悪い事して溜め込んだお金を回収したんでしゅよ!」
またしても目が勢いよく泳いでいるアレクシア。
「ほう。その後にその貴族は裸で木に括り付けられて、顔中に落書きがされていました」
ロインの探る様な視線に冷や汗が止まらないアレクシア。
「ドラの仕業でしゅよ!シアは関係ありましぇん!!」
「貴女だと証言した者がいましてね」
「ランしゃんでしゅか!!あの裏切りランしゃんめぇ~!」
怒りに燃えるアレクシアだが、ロインは呆れている。
「その貴族が証言したんですよ。ランゴンザレスが関わっているのは知りませんでしたよ」
にこやかに話すロインだが、目は一切笑っていなかった。
「ランしゃん⋯ごめんちゃい」
その後、アレクシアから貴族から巻き上げたお金を孤児院の復興や支援に全額寄付したと聞いたロインはそれ以上何も言わなかった。その代わりにランゴンザレスには地獄の説教が待っていたのだった。
アレクシアは父親のルシアードと共になんと四日で壁を修復しましたとさ。
700
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。