転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi

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10章 アレクシアと愉快な仲間2

ルビー側妃の野望②

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今、ルビーの目の前ではとんでもない事が起こっていた。

(何なのこの状況は!?ハァハァ⋯落ち着くのよ私!!この天国は二度と味わえないから今がチャンスよ!!勇気を出して私!!!)

「この女子(おなご)は大丈夫かのう?息が荒いぞ?」

「グエーー!!」

金髪絶世美少年のミルキルズが何気無しに興奮MAXのルビーの顔を覗き込んだ。その時、ルビーの奇声と共に彼女の鼻から鮮血が飛び散った。その鮮血が覗き込んだミルキルズの顔に降りかかった。

それを見て大爆笑するのは魔国国王の優秀な側近であるランゴンザレスだった。他の爺や婆達はいきなりの事で驚き固まっている。

「ルビー様⋯これで拭いて下さい」

頭を抱えたまま、ロインは鼻血ブーのルビーにハンカチを渡した。それ受け取ったルビーはまずは血塗れになっているミルキルズの顔を急いで拭き始めた。

「ああ!!すみません!すみません!」

「⋯⋯」

だが、血が顔に広がり赤顔になっていくミルキルズを見て腹が捩れるくらい笑うアレクシアとランゴンザレス。

「ミル爺!!アハハハ!何でしゅかそのお顔ー!!赤鬼でしゅかーー!!」

「ちょっと!ちゃんと冷静に拭きなさいよ!アハハハ!」

アレクシアやランゴンザレスに揶揄われてちょっと落ち込んだミルキルズを見て、ロインが申し訳なさそうに洗面所に案内した。

「さて、鼻血のお嬢ちゃん!わしとアレクシアの絵を描いてくれんかのう!報酬は弾むぞ!」

デイルズが鼻に布を詰めた側妃とは到底思えないルビーに提案する。ちなみにルビーの鼻に布を詰めた犯人はアレクシアだ。

「報酬というか⋯その⋯私の書く物語にあなたを登場させたいのですが⋯良いですか?」

「おお!良いぞ!!良いぞ!!」

ルビーの悪魔の誘いに簡単に乗ってしまう初代魔国国王デイルズ。

「爺!あとで完成した本を読んで後悔してもシアは知りましぇんよ!!」

「ブッ⋯キラキラの瞳のデイルズ様⋯これはコレクションが増えそうね」

アレクシアは少しの罪悪感からデイルズを説得しようとするが、実はルビーの作家活動のスポンサーであるランゴンザレスは今から楽しみができたので嬉しそうだ。

「おい。お前は俺の専属絵師だ。勝手に決めるな」

アウラード大帝国皇帝でありアレクシアの父親でもあるルシアードがルビーに抗議する。

「ああ⋯すみません!すみません!どうか殺さないでください!!まだ書き残した事が沢山あります!!」

「そこはやり残したで良いでしょ」

肉を頬張りながらルビーにツッコミを入れるのは同じ側妃であるバレリーだ。

「む。まだ殺さないぞ」

「いつかは殺すのかよ」

肉を頬張りながら怖いもの知らずでルシアードに辛辣なツッコミを入れるバレリーを見て、ついつい拍手をしてしまうのはアレクシアと五匹の子犬従魔達だ。やっとアランカルトの背中から下りてきた子犬達は、ルシアードを全く怖がらずに堂々としているバレリーにキラキラした尊敬の眼差しを向けている。

「あらかわいい子犬ちゃんたち~!ほらおいで~?血が滴る肉よ~!」

『『『『『キャンキャン!!!!!』』』』』

嬉しそうに尻尾を振りながらバレリーに寄って行く五匹を複雑な感情で見つめているのは竜族のアランカルトだ。

(何なんだこの気持ちは⋯)

「恋でしゅよ!」

そんなアランカルトの気持ちを見透かした様に答えたのは適当幼女アレクシアである。

「恋⋯これが?」

「適当な事を言うんじゃない!この馬鹿ちんが!!」

「痛いでしゅ!!頭が割れまちたーー!!」

ある意味で純真なアランカルトを揶揄うアレクシアに魔国の大賢者ポーポトスが鉄拳を落とした。

「む。可愛い娘になんて事をするんだ!これ以上に馬鹿になったらどう責任取るつもりだ?」

頭を抑えて痛みに耐えるアレクシアを大事そうに抱っこしながらポーポトスに猛抗議するルシアード。

「何でしゅと!?シアは馬鹿じゃありましぇん!!失礼な父上とは一時間だけ絶交しましゅ!!はい無視!」

そう言うと、アレクシアはルシアードからズルズルと下りるとそっぽを向いてしまった。

「一時間って⋯」

ロインは呆れているが、ルシアードは相当ショックだったのかその場で崩れ落ちてしまった。

「馬鹿ばっかり」

バレリーはルシアードを見てそう吐き捨てると、今度はルビーに目線を向けた。

「オホホホー!ここは天国よ!ネタの宝庫よ!!ヒロインの恋のライバル役はエルフの女王⋯そして皇帝の恋のライバルはミステリアスな白銀の美青年⋯グフフ⋯萌えるわ!!」

そう言って神獣ガイアを観察しながら何やらメモしているルビーの姿は常軌を逸していた。

「ちょっと!私を巻き込まないで!それに何の本なのかも分からないのに、せめて作品を見せなさい!」

エルフの女王であるエルメニアがルビーに詰め寄る。

「あっ!実は数冊持ってきました!是非読んでください!!自信作です!」

ルビーは待機していた専属女官であるシトラを呼ぶと例の本を持ってきた。それを興味深そうに覗き込む爺や婆達。本の表紙はキラキラの瞳をした男性とキラキラした大きい瞳の女性が寄り添って描かれている。

「ちなみにこのキラキラした男性のモデルはあそこで崩れ落ちている皇帝よ?」

ランゴンザレスの衝撃発言に飲んでいたワインを吹き出すデイルズとポーポトス。いつの間にか戻って来たミルキルズは笑い転げていた。エルメニアと側近のナナーサも笑いを必死に堪えている。魔国国王デズモンドは鳥肌が立つほど引いていて、竜族族長のゼストは本を凝視したまま固まっていた。

気配を消していた小鳥姿のウロボロスはアレクシアの頭の上で羽をバタつかせながら爆笑していた。

「これは⋯まさかモデルが陛下だったとは⋯巷で流行っている小説ですよね?しかも作者はルビー様⋯確かペンネームはレディーレッド⋯」

赤髪のルビーを見て納得したロインも実は笑いを必死に堪えていた。

「この皇帝の台詞で人気なのは『僕が君を永遠に守るよ』なのよ~!!」

「⋯『俺がお前を永遠に葬るよ』の間違いでしょう?」

ランゴンザレスの言葉に全員が吹き出した。だがアランカルトはいまだに自分の感情の変化に戸惑い、バレリーは冷静にツッコむのだった。

「はぁ、レディーレッドの正体がバレてしまいまちた!絶対に内緒でしゅよ!」

アレクシアは亜空間からミミズの様な字で書かれた紙を数枚取り出して、一人また一人に配っていく。

「相変わらず汚い字ね」

苦笑いのエルメニアだが、次の瞬間にはその紙に書かれた内容を見て驚愕するのだった。










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