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10章 アレクシアと愉快な仲間2
閑話 アリアナと地獄森③
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地獄森の中心部には神聖な大木が存在するが、何故か選ばれた者しか辿り着けないのだ。その見事な大木こそがエント族の長であり世界樹だった。今目の前でアリアナを揶揄って遊んでる男性がエント族の長である“エン爺”であり、竜族よりも前から存在する最古種なのだ。
エント族は他者と関わる事なく静かに暮らしていたので、最近まで存在すら知られていなかったが、アリアナを通じて竜族とも関わる事になったのだ。ただ、竜の里からこの美しい大木は見えてはいたのだが、好奇心で何度も試した者が辿り着ける事は決してなかったのだ。
そう、アリアナを除いては⋯。
「あんたが消えた時はびっくりしたわよ!魔力は感じるのにいくら探してもいないんだもの!!」
アリアナが消えた事に驚いたランゴンザレスは、急いでロウジに報告した。だが、ロウジは慌てる事なく“世界樹に悪さして捕まったんだろ!”と笑うだけだった。世界樹と聞いて驚きのあまり固まってしまった事を思い出したランゴンザレスは、アリアナに抗議した。
「この爺さんに捕まっていまちた!よーじ誘拐のちゅみで枝を全部寄越せでしゅ!!」
「お前はずっとそればかりだな!」
何故か怒る事なく大笑いするエン爺に、小鳥サイズになってついて来た不死鳥の朱雀は呆れていた。
『お主もこの子に甘過ぎじゃ!だからこんな破天荒な小童になってしもうたんじゃ!』
「面白い魔力を持つガキだったから興味本位で招き入れたら、こいつはいきなり俺に”枝を寄越せでしゅ!“ときたもんだ!」
面白おかしく話すエン爺だが、聞いているポーポトスは冷や汗が止まらない。
「本当に命知らずの子じゃ!やはりわしがお主を教育しないといけないのう!」
「まだ言ってるんでしゅか!ポポ爺はしちゅこい!」
遂にポポ爺になってしまったポーポトスを見て、笑いが止まらない孫のランゴンザレス。魔国では偉大な大賢者として君臨するポーポトスだが、アリアナだけはただの煩い爺さん扱いだ。
「アリアナは俺と永遠に魔国で暮らすんだ。畑で野菜を育てて、それを街で売って生活して⋯」
「隠居した夫婦か!何言ってんだこのガキは!俺は大反対だからな!それに野菜売らなくても金は腐るほどあるだろ!!」
「わしも反対じゃ!アリアナは野菜嫌いじゃから畑で育てるなんてあり得んぞ!」
魔国の王太子であり、アリアナ大好きっ子のデズモンドの発言に大反対するのは竜族最強戦士ロウジと初代竜族族長であるミルキルズだった。
『童相手にムキになるでないわ!』
しょんぼりするデズモンドを庇うのは何故か子供に弱い不死鳥の朱雀だった。
「ガハハ!アリアナよ、ぜひ孫の嫁になっておくれ!わしは大賛成じゃ!」
初代魔国国王陛下であり、デズモンドの祖父であるデイルズが嬉しそうにアリアナに進言した。
「あたちは今が大事なんでしゅ!今でちょ!」
そう言いながらエン爺を急かすアリアナ。森を進んでいくと、今まで辿り着けなかった神聖な大木に呆気なく着いてしまった。
「これが世界樹⋯物凄い力じゃ⋯」
ただ呆然と世界樹を見つめて呟くポーポトス。長年生きて来てこんなにも感動したのは初めてだった。
「おお!もう思い残す事はないでしゅね⋯イテッ!」
余計な事を言い、ポーポトスの拳骨を喰らう事になったアリアナ。
ランゴンザレスやデズモンドもあまりにも凄まじい力に感動していたが、デイルズはアリアナがこの神聖な大木によじ登ろうとしているのにいち早く気付いてた。だが、注意するどころか指差して大爆笑している。
「ガハハ!おい、おチビがよじ登ろうとしてるぞ!どんだけ図々しいんじゃ!」
それを見たポーポトスが軽く指を動かした。すると、アリアナはふわりと浮いてしまう。
「何しゅるんでしゅか!エン爺は枝をくれるって言いまちた!今がチャンスでしゅ!今でちょ!」
必死に枝にしがみつくアリアナだったが、ポーポトスも負けていない。そんな二人を微笑ましく見ていたエン爺の元に何故かデズモンドが近づいて行く。
「エン爺様、枝を俺に下さい。俺からアリアナに渡したら好感度が上がる」
「お前は正直だな。心の声がダダ漏れだぞ?」
正直すぎるデズモンドに苦笑いするエン爺。
「ポポ爺、あたちが杖を作ったりゃあげま⋯⋯売りましゅよ!」
「⋯⋯」
実は喉から手が出るくらい欲しいポーポトスにこの邪悪なちんちくりんの魔の手が迫っていた。
「世界樹の枝に不死鳥の羽根~、そしてミル爺の鱗を混ぜて世界最強の魔法杖をちゅくりゅんでしゅよ!」
信じられないくらい超絶レアな杖に、ポーポトスの目が輝き出す。まるで好奇心旺盛な少年のようだ。
「面白そうじゃな!わしも参加させておくれ!」
「良いでしゅよ!⋯⋯でも研究費が足りないんでしゅ⋯」
悲しそうに下を向いてしまうアリアナ、周りはそんなアリアナをジト目で見ていた。
「金ならわしが出すぞ!一緒に最強の魔法杖を作るぞ!」
アリアナを抱っこしながら嬉しそうに宣言するポーポトスは気付いていない。邪悪なちんちくりんがニヤリと笑っている姿を見てしまったデイルズやランゴンザレスが呆れている中で、ミルキルズとエン爺は大笑いしていた。
「お前は⋯素材はタダで手に入るからって言ってたよな!?」
ロウジの苦言をまるっと無視したアリアナは愛の下僕であるデズモンドと共にエン爺に纏わりつき、枝だけでは無く“葉も寄越せでしゅ!”と騒ぎ始めた。
「お前は本当に強欲だな!本当に三歳か!?」
『妾もそこは信じておらぬ』
エン爺と不死鳥の朱雀は、アリアナの年齢詐称を疑う。
「何でしゅと!?あたちは生まれて三年のぴちぴちでちゅよ!」
「ぴちぴちって⋯三歳児が言うか!?」
エン爺は呆れながらも枝を数本纏めたものをアリアナに渡した。
「ウヒョーー!!」
嬉しそうなアリアナを見て満足げなエン爺であった。
それからも頻繁にエン爺と朱雀に会いに行く事になるアリアナは、神獣ガイアを無理矢理に地獄森へ連れて行き朱雀とお見合いさせたり、世界樹の根元に小さな秘密基地を作ったりとやりたい放題だったが、エン爺や朱雀にとっては今思えばかけがえのない日々だった。
アリアナの死を知った日。地獄森には朱雀の悲しい鳴き声が響き渡り、世界樹の葉は一枚、また一枚と枯れていった。それからは朱雀の存在も確認できず、世界樹にも拒まれ交流がなくなってしまったのだった。
そして現在。
「⋯⋯!?。この魔力は⋯嘘だろ!」
緑色の美しい長髪を靡かせた金色の瞳の美青年が世界樹から舞い降りて来た。枯れ始めて随分経つ世界樹の葉だったが、今その勢いが止まった。
『⋯⋯この生意気な魔力は⋯⋯小童かえ!?』
地獄森の最奥にある洞窟の奥深くで眠っていた美しい真紅の鳥が、目を覚ました瞬間に急いで洞窟を飛び出して行ったのだった。
*次回から本編に戻りましゅ!今でちょ!(アリアナの今のお気に入りの言葉)
エント族は他者と関わる事なく静かに暮らしていたので、最近まで存在すら知られていなかったが、アリアナを通じて竜族とも関わる事になったのだ。ただ、竜の里からこの美しい大木は見えてはいたのだが、好奇心で何度も試した者が辿り着ける事は決してなかったのだ。
そう、アリアナを除いては⋯。
「あんたが消えた時はびっくりしたわよ!魔力は感じるのにいくら探してもいないんだもの!!」
アリアナが消えた事に驚いたランゴンザレスは、急いでロウジに報告した。だが、ロウジは慌てる事なく“世界樹に悪さして捕まったんだろ!”と笑うだけだった。世界樹と聞いて驚きのあまり固まってしまった事を思い出したランゴンザレスは、アリアナに抗議した。
「この爺さんに捕まっていまちた!よーじ誘拐のちゅみで枝を全部寄越せでしゅ!!」
「お前はずっとそればかりだな!」
何故か怒る事なく大笑いするエン爺に、小鳥サイズになってついて来た不死鳥の朱雀は呆れていた。
『お主もこの子に甘過ぎじゃ!だからこんな破天荒な小童になってしもうたんじゃ!』
「面白い魔力を持つガキだったから興味本位で招き入れたら、こいつはいきなり俺に”枝を寄越せでしゅ!“ときたもんだ!」
面白おかしく話すエン爺だが、聞いているポーポトスは冷や汗が止まらない。
「本当に命知らずの子じゃ!やはりわしがお主を教育しないといけないのう!」
「まだ言ってるんでしゅか!ポポ爺はしちゅこい!」
遂にポポ爺になってしまったポーポトスを見て、笑いが止まらない孫のランゴンザレス。魔国では偉大な大賢者として君臨するポーポトスだが、アリアナだけはただの煩い爺さん扱いだ。
「アリアナは俺と永遠に魔国で暮らすんだ。畑で野菜を育てて、それを街で売って生活して⋯」
「隠居した夫婦か!何言ってんだこのガキは!俺は大反対だからな!それに野菜売らなくても金は腐るほどあるだろ!!」
「わしも反対じゃ!アリアナは野菜嫌いじゃから畑で育てるなんてあり得んぞ!」
魔国の王太子であり、アリアナ大好きっ子のデズモンドの発言に大反対するのは竜族最強戦士ロウジと初代竜族族長であるミルキルズだった。
『童相手にムキになるでないわ!』
しょんぼりするデズモンドを庇うのは何故か子供に弱い不死鳥の朱雀だった。
「ガハハ!アリアナよ、ぜひ孫の嫁になっておくれ!わしは大賛成じゃ!」
初代魔国国王陛下であり、デズモンドの祖父であるデイルズが嬉しそうにアリアナに進言した。
「あたちは今が大事なんでしゅ!今でちょ!」
そう言いながらエン爺を急かすアリアナ。森を進んでいくと、今まで辿り着けなかった神聖な大木に呆気なく着いてしまった。
「これが世界樹⋯物凄い力じゃ⋯」
ただ呆然と世界樹を見つめて呟くポーポトス。長年生きて来てこんなにも感動したのは初めてだった。
「おお!もう思い残す事はないでしゅね⋯イテッ!」
余計な事を言い、ポーポトスの拳骨を喰らう事になったアリアナ。
ランゴンザレスやデズモンドもあまりにも凄まじい力に感動していたが、デイルズはアリアナがこの神聖な大木によじ登ろうとしているのにいち早く気付いてた。だが、注意するどころか指差して大爆笑している。
「ガハハ!おい、おチビがよじ登ろうとしてるぞ!どんだけ図々しいんじゃ!」
それを見たポーポトスが軽く指を動かした。すると、アリアナはふわりと浮いてしまう。
「何しゅるんでしゅか!エン爺は枝をくれるって言いまちた!今がチャンスでしゅ!今でちょ!」
必死に枝にしがみつくアリアナだったが、ポーポトスも負けていない。そんな二人を微笑ましく見ていたエン爺の元に何故かデズモンドが近づいて行く。
「エン爺様、枝を俺に下さい。俺からアリアナに渡したら好感度が上がる」
「お前は正直だな。心の声がダダ漏れだぞ?」
正直すぎるデズモンドに苦笑いするエン爺。
「ポポ爺、あたちが杖を作ったりゃあげま⋯⋯売りましゅよ!」
「⋯⋯」
実は喉から手が出るくらい欲しいポーポトスにこの邪悪なちんちくりんの魔の手が迫っていた。
「世界樹の枝に不死鳥の羽根~、そしてミル爺の鱗を混ぜて世界最強の魔法杖をちゅくりゅんでしゅよ!」
信じられないくらい超絶レアな杖に、ポーポトスの目が輝き出す。まるで好奇心旺盛な少年のようだ。
「面白そうじゃな!わしも参加させておくれ!」
「良いでしゅよ!⋯⋯でも研究費が足りないんでしゅ⋯」
悲しそうに下を向いてしまうアリアナ、周りはそんなアリアナをジト目で見ていた。
「金ならわしが出すぞ!一緒に最強の魔法杖を作るぞ!」
アリアナを抱っこしながら嬉しそうに宣言するポーポトスは気付いていない。邪悪なちんちくりんがニヤリと笑っている姿を見てしまったデイルズやランゴンザレスが呆れている中で、ミルキルズとエン爺は大笑いしていた。
「お前は⋯素材はタダで手に入るからって言ってたよな!?」
ロウジの苦言をまるっと無視したアリアナは愛の下僕であるデズモンドと共にエン爺に纏わりつき、枝だけでは無く“葉も寄越せでしゅ!”と騒ぎ始めた。
「お前は本当に強欲だな!本当に三歳か!?」
『妾もそこは信じておらぬ』
エン爺と不死鳥の朱雀は、アリアナの年齢詐称を疑う。
「何でしゅと!?あたちは生まれて三年のぴちぴちでちゅよ!」
「ぴちぴちって⋯三歳児が言うか!?」
エン爺は呆れながらも枝を数本纏めたものをアリアナに渡した。
「ウヒョーー!!」
嬉しそうなアリアナを見て満足げなエン爺であった。
それからも頻繁にエン爺と朱雀に会いに行く事になるアリアナは、神獣ガイアを無理矢理に地獄森へ連れて行き朱雀とお見合いさせたり、世界樹の根元に小さな秘密基地を作ったりとやりたい放題だったが、エン爺や朱雀にとっては今思えばかけがえのない日々だった。
アリアナの死を知った日。地獄森には朱雀の悲しい鳴き声が響き渡り、世界樹の葉は一枚、また一枚と枯れていった。それからは朱雀の存在も確認できず、世界樹にも拒まれ交流がなくなってしまったのだった。
そして現在。
「⋯⋯!?。この魔力は⋯嘘だろ!」
緑色の美しい長髪を靡かせた金色の瞳の美青年が世界樹から舞い降りて来た。枯れ始めて随分経つ世界樹の葉だったが、今その勢いが止まった。
『⋯⋯この生意気な魔力は⋯⋯小童かえ!?』
地獄森の最奥にある洞窟の奥深くで眠っていた美しい真紅の鳥が、目を覚ました瞬間に急いで洞窟を飛び出して行ったのだった。
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