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本編

Jのプロローグのオマケ2

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《破れた写真修復作業:Jack&Letizia》

 大釜が中心にあるLetiziaの部屋。
真夜中の時間、窓から見えるふたつの月が真上を越えた頃、ノックもしないで開く扉、Letiziaがそちらを見やると、Jackが息を切らしながら走ってきた。

「はぁはぁ…。ねぇLetty、これさ元に戻せない?」

 Jackがみせてきたのはバラバラになった写真。誰が写ってたのかさえももう分からないくらいだ。Letiziaは答える。

「魔法で完全に修復は無理ね…。この写真古い紙だから多分粉々になるわ。…そうね。破れ目なら綺麗に出来ると思うわ。繋げるのはジャックやってちょうだい。そういうのは私よりも得意でしょう?もし上手く繋げられたら、破れた時に出来た小さな穴くらいなら多分消えるわ。」

 そういうと、Letiziaは、紙に水のりと、ハケを渡す。それを受け取ったJackは、ありがとうと言って、部屋から出ていった。

ふぅ。とLetiziaは一息つくと、近くにある本棚から修繕の秘薬の本を探す。

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 「ふぅ…」

 破られた美琴(以下Juju)の家族写真を何とか拾い集めたJack、水のりとハケで頑張ること1時間半。拾った分はしっかり繋ぎ合わせることが出来たが、やはりいくつか拾えてない部分があり、虫食いのようになっている。もう一度外に探しに行くが、全て見つかることは無かった…。それでも見つけた破片は全て張り合わせ写真とは呼べる状態にまでなった。Jackは慎重かつ嬉しそうにLetiziaの元に持っていく。

……………………………………………………

コンコンコン

 今度はしっかりとノック音がしてから入ってくるJack。手には、穴がいくつか空いてはいるが、しっかり見ないと破れ目が見えないほど綺麗な写真があった。

「これくらい綺麗に貼れたなら、もしかしたら、小さな穴くらいなら、上手く消えるかもしれないわね。こっちに持ってきてちょうだい。」

 Letiziaの机の上には魔女には似合わない化学の道具、ビーカーと試験管。の中には黄色い液体と白い液体。Letiziaは、どこからともなくハケを取り出すと、黄色い液体にハケをつけて、写真につけていく…。すると少しづつ、破れ目が消え、写真の形が綺麗に整っていく。Jackは、興味津々にその光景を見ている。それを横目に見ながらLetiziaは、次の白い液をつけていく。すると、古く焼けた色をしていた写真が撮ったばかりのような綺麗な発色と、写真らしい艶のある見た目に変わっていく。

 ふとJackは、机の端に開かれた本があるのに気がつく。その本はLetiziaの住んでいた森のある国、Jatsuの言葉で書かれているらしい。Jackは、Jatsuの文字は少ししか知らず、あまり読めないが、数箇所『紙』『貼る』という文字があることに気がついた。頼んた事に親身になってくれたことが嬉しかったJackは、またLetiziaの作業の方に目を向ける。大きかった穴はさすがに修復はできなかったが、小さな隙間は完全に消え去っている。どういう原理なのかは魔法だから分からないけど…。

紙が乾くのを待つ間、破れた写真のについてJackの入れた紅茶を飲みながら話していた。Jackは、Jujuのおばさんがその写真からサーカス団に居るんじゃないかと予測してここに来たこと、目の前でその写真を破られたこと、この件に関しては団長がしっかり解決させたことを、ティーポットのお湯が半分なくなるくらい話した。写真はまだ湿っていた。写真を本に挟みシワができ内容にした。その後今日は遅いからと、お互い寝ることにした。

……………………………………………………………

大事な思い出を大切にするのは当たり前…。だけどあんなに真剣に訪ねてくるJackはなかなか珍しかった。Jackは自分の過去のことは全く話そうとしない。何かしら知っていることがあるようだが、人格のひとつだから知らないと回避するだけ…。そう考えているうちにだんだん目が冴えてきたLetiziaは、暖かいミルクでも飲もうかと、部屋を出て食堂に向かう。きょうの食堂のおばちゃんはなにかの仕込みで忙しそうだったので多分起きてこないだろうと思いながらコップを取り出そうとカウンターの上の戸棚へ背伸びをすると、ちらっと黒い影が見えた。その影はとても見覚えのある影だった。

「Jack?」

カウンターを隔てて話しかける。

「……、……!Letty。夜中だよ?眠れないのかい?」

 いつもより反応の鈍いJackは珍しかった。相変わらず夜のJackの目が赤く光るかのように強調されている。
Letiziaは、せっかくの機会だ、この際しっかり聞いてやろうと思った。

「ねぇJack?」

「ん?どうしたの?Letty」

さっきの鈍さとは一転して声の大きさは小さいが、いつもの調子の喋り方だった。

「なんで写真持ってきた時、自分のものかのような焦った行動をしたの?」

「えー?自分のじゃないけどさ、誰かの大切なものって壊れたら悲しいじゃない。」

Jackは、平然とした声で応える。
ただ、少し悲しそうな顔をしているように見えた。
鍋に入れたミルクがふつふつと音を立てている。

「それに、せっかく良い家族だったんだ、写真を持っておくと心の支えにきっとなってくれる。Lettyだって家族写真本棚の所に立て掛けてあるじゃない。そう思ったから…。それに…、僕…は…………。」 

Jackの言葉が珍しく詰まる。多分本心なのだろう。

「僕は、あんまりいい家族じゃなかったから、そういう温かさはわからないんだ。それに、今の家族は目の前にいるから、失った気持ちも分からないし。だから、ないよりあった方がと思って…。ああいうのって、お節介なのかな…」

 いつもを知ってるLetiziaにとって今のJackは見るに耐えない。やっぱり聞き出すより自分から話すのを待つ方がきっと良いと思った。

「そんなことは無いわ。ひとりぼっちで誰もいないと思うより幾分かマシよ。」

 平然とした顔つきで、温めたミルクを飲むLetizia少し熱かったのかすぐに顔をしかめる。
Jackは、一瞬悲しそうなうっすらと笑みを浮かべるが、すぐにいつもの純粋そうな笑顔になる。

「そっか。そっかー!少しになっちゃった!僕のカラーはなのにね!」

Jackは、席から立ち上がるとミルクを飲むLetiziaが居るキッチンの方に、歩いてくる。自分のと、Jackのとふたつのコップを洗い、一緒に部屋まで向かった。JackとLetiziaの部屋は隣り合わせ、扉前まで無言で向かいながらおやすみとだけ言ってお互い部屋に帰って行った。Letiziaは、モヤモヤが残る癖に何故かしっかりと眠れた自分に少しだけ腹が立った。

お昼前。朝の練習を終えたLetiziaとJackは、仕上げの魔法薬を作るためにLetiziaの部屋にいた。2人とも昨日のことが嘘のように話しながら作業をしている。せっかく綺麗にしたのだから長持ちさせようというLetiziaの意見からである。その結果……多分これ以上破れも日焼けもしないだろうというような写真ができてしまった。2人とも少しやりすぎたか?というような引き顔を浮かべる。

「L、Letty手伝ってくれてありがとう…。え、えーっと、Jujuが、Homeに来た時に渡すから預かっておくね。」

「え、えぇ…それがいいわ。」

まだ少し引き顔が残っている2人…。顔を見合せ感情の薄いアハハという笑いを2人でしてから、Jackは扉を出る。

今は太陽が真上をすぎた辺りを進んでいる。
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