親を殺された勇者が親を殺した国々に復讐する話

豆狸ぽんすけ

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第9話

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投げ込まれていた遺体をよく見ると、赤ちゃんからお年寄りまで殺された年齢はバラバラだった。


「う、...........すみません。外に出ます。」



私は思わず、その悲惨な光景から目を背け外に出て家の玄関の隅に目を瞑ってしゃがみ込んだ。目を瞑っていても先程の光景が瞼の裏に焼き付いて離れず、耐えていたが思わず吐いてしまった。吐いても吐いても出てくるのは胃液ばかりなのだが、それでも胃のあたりの気持ち悪さはなかなか収まらなかった。



「大丈夫か?」



魔神様は私の様子をうかがいに来た様子で心配そうに声をかけてきたが、私はまだ気持ち悪く顔を上げることが出来なかった。



「すみません....。」


「あんな光景見たんだ。仕方あるまい。」


魔神様はそう言うと私の背中に手を添えてそっと擦りながら私に回復魔術をかけてくれた。私の母様も私が風邪引いてしんどそうにしているとよく背中を擦ってくれていたっけ。


「......あの者たちは妾の信者ばかりだった。」



私が母様との思い出に浸っていると、私の背中を擦りながら魔神様が突然ポツリと呟いた。


「えっ......どういうことですか?」


魔神様のおかげで体調が少し良くなった私は顔を上げ、魔神様の顔を見た。先程遺体を見た時の怒りの表情とは打って変わり、今にも泣きだしそうな表情だった。



「実は.....この時空の狭間にはお主ら以外にも妾の信者が住んでいたのじゃが、ほとんど皆殺されておったよ....。」



「えっ?私はこの空間で他の人には出会ったことないですよ?」



結界内とはいえ、物心ついてからあの伯父を含めた天族に出会うまで、一度も家族以外の人には出会ったことは無かった。両親からも他にも住んでいる人がいると聞いたことがない。



「妾の信者は人数が少ない上、迫害経験者が多いからあまり他の人と関わろうとしなかったが、お主が知らぬだけで交流をしている者もいたぞ?お主の両親もそれは知っていたはずじゃ。」


「そうなんですか?」


「ああ。世間は異種族婚やハーフの子を認めていないが、妾は気にしていないせいか、妾の信者は主に異種族婚した家族やその子供が大多数でな?可哀想だから妾の信者の中でも信心深い奴は迫害されないように家族ごとこちらに連れてきていたのじゃ。まあ、お主の両親は呼び寄せようと思っておったら自ら来よったがな。なかなかお主の両親は変わり者で.......でもかなり良い奴らじゃったよ。」



魔神様は楽しかった日々を思い出すかのように少し笑いながら私の両親の話をしてくれた。



「父様、母様だけ他の人と交流してたってこと?」



「いや、お主の両親....特にお主の父親であるリンクスが他の住民との交流を嫌ったからほとんど交流はなかったはずじゃ。お主が生まれた時だけ、妾が強引に産婆を連れてきたがな。」



「何で父様は他の住人と交流しようとしなかったのでしょう?」


父様は悪いことをすると厳しく叱ってきたが、それ以外では私にとって、とても優しい父親だった。天族の母様と異種族婚を果たすくらいだから、社交性はありそうだが.....?



「お主の父親の優しさを発揮していたのは家族と妾くらいじゃ。そもそもお主の父親の種族である悪魔族はこの世界でも特殊な種族でな?あらゆる種族の中で一番嫌われている種族なんじゃ。お金さえ積まれれば人を殺すことも厭わない、殺人なんて日常茶飯事、伝説級の悪人の殆どがこの種族だとも言われているんじゃが、そんな種族だからこそ、人一倍警戒心が強くての。お主の父親も例に漏れず、人一倍警戒心が強かったから家の周りに結界を張って外に出ようとしなかったのじゃ。」



確かに父様は森へ狩りに出ても、家からあまり離れることは無かった気がする。私にも遠くへ行ってはいけないと毎日のように言っていた。一度結界の外に出ようとしたらすぐ父様が駆け寄ってきて思いっきり怒られたっけ。それにしても父様がそんな恐ろしい種族出身だと知らなかった。母様との馴れ初めとかも聞いてみたかったな。




「天族の襲撃があった日は結界の修繕中に襲われたようじゃ。お主には言わなかったが.....あの結界杭にお主の父親の血痕がこびり付いておったわ。まあ、天族の血痕もかなりの量が地面に染み込んでいたからかなりの激戦だったんだろうよ。」



そう言うと魔神様はどす黒く汚れた結界杭の残骸を悲しそうに見つめていた。


家の周りには結界杭と言う結界を張る為に使う杭が4か所に刺さっており、それを点検するのが両親の日課だった。結界杭に込める魔力は一日半で無くなるから、魔力量が多い父様がよく点検に行っていたものだ。



私は亡くなった父様に思いをはせながら、しばらく黙って魔神様とボロボロに壊された結界杭の残骸を眺めていた
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