ある警部補の事件記録

古郷智恵

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2.事情聴取

明智正雄

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聴取、一人目。「明智正雄」 職業、会社員。 被害者との関係、被害者の父親。

・「当時のアリバイを教えて下さい」

正雄「は、はい……。私はしがない会社員、……社畜、でして、今月は特別忙しかったため、遅くまでずっと、会社で仕事をしてました。家を出た6時から家に着いた24時まで、家にはいません。それに、家から職場まで遠いものですから、会社を抜け出して家に行くことは不可能です。会社にいたのも、タイムカードを見てくれれば、分かると思います。」

・「どのように、息子さんの遺体を見つけましたか?」

正雄「仕事に疲れて、よろよろで家に着いたときです。深夜にもなって今だカーテンも閉めず明かりがついていたものですから……疲れや色々相まって、早く閉めろ!と、つい怒鳴ってしまって……。息子は素直な性格です。いつもは分かったとかはいはいとか、返事がきて終わりなんですが、この日はなんも返事がありませんでした。それで、それで……息子の部屋に行ったら……ううぅ、うう(と泣き始める)」

・「包丁に見覚えはありますか?」

正雄「(涙をぐっとおさえ)……ありません。男二人暮らし。料理も苦手。あんなきらきらした危なっかしい包丁なんて、とてもじゃないが買いませんよ。」

・「何か、息子さんに悩みだとかトラブルだとかありましたか?」

正雄「……わかりません。最近は仕事が忙しかったもので、息子はほったらかしになってしまいました。ただ、一度だけ、就職について喧嘩したことがあります。息子が就職したい業界は、とても息子には荷が重いと思って、つい、つい反対してしまったんです。……実際、今だ内定は取れてませんでしたからね。それで、大げんかを……。ああ!こんなことになるなら、親としてやさしさを見せるべきでした!今も、息子は私を恨んでいるでしょう……」

・「ナオミ、という人について何か知っていますか」

正雄「……知り、ません。全く、聞いたことがないです……。ああ、確か、息子が恋人ができた、とか言っていたような……。……ほんと、私、息子のことが何もわからないんですね……う、うぅぅぅ(号泣する)」
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