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32.特別授業

天空の魔女 リプルとペブル

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32.特別授業

 翌朝。
 校庭をバタバタと走るふたりの魔女。

「急いで」「遅刻する~」
 リプルとペブルの二人は、学校の重々しい木の扉を開けると、つむじ風のように中へと入っていった。
 リプルが一歩早く教室に滑りこみ、続いてペブルが息を切らせながらドアをくぐり抜けた。

「いそいで、リプル、ペブル」
 ドアを開けて待っていてくれたマーサにリプルが笑顔で声をかけた。

「おはよう、マーサ……と、イザベス」
 マーサの後ろにかくれるように立っていたイザベスがツンと顔をそむける。
「ま、まったく朝からさわがしいことですわね」
 昨日、ふたりに助けられたイザベスは、ツンとした態度を保ちつつも、いままでとは少し態度がやわらかくなっている。

「今朝もペブルが寝坊したの?」
 赤茶色の髪をお下げにしたマーサは、おっとりした口調でたずねる。

「ペブルの寝坊は、もはや日課だから。平常運転ってことよ」
 リプルが苦笑する。

「それにしても不思議ですわ。どうして優秀なリプルのパルがペブルなんでしょう」
 イザベスが肩をすくめながら言う。

 パルというのは、この世界の独特の絆のこと。
 この世界の魔女や魔法士は、子どもの頃から、二人ずつペアで育てられるが、このペア同士がパルと呼ばれる。
 ただしパル同士に血のつながりは無く、身分も様々だ。
 ただ同じ頃に生まれたことが縁でパルという関係が定められる。
 ちなみに王家や貴族以外の者は、生まれるとすぐに乳幼児施設に引き取られ、そこで育てられる。
 だから、パルはほぼ私たちで言うところの兄弟、姉妹という関係に近い。

「でもね、今日は、昨日より三十分も早く起きたんだよ」
「とは言え、二度寝しちゃダメだよね」
 ペブルの使い魔であるシマリスのシズクがすぐさまツッコミを入れた。

 その言葉に、ペブルは、
「てへ」
 と、舌を出した。ただし満面の笑顔つきで。つまり反省の色は、なし。



 教室に彼女たちの担任のホキントン先生が入ってきた。
 すらりとした体型に上級魔女だけが帽子に付けられる紫色のリボンがよく似合っている。
「おはよう、みなさん。今日も魔法日よりですね」

 魔法界では、空気中に湿気がタップリあって、もやがかかった日の方が、魔力が高まるとされている。
 今日みたいに、もやにさえぎられて太陽の光が柔らかな日は、とびきりの魔法日より。

 先生は、スーッと大きく息をすうと、一瞬息をとめ、真剣な表情で教室を見渡すと、はき出す息にのせて決意のこもった声で言った。
「今日は、大切な話をします」

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