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43.消えたイザベス
天空の魔女 リプルとペブル
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43.消えたイザベス
その日の夜のこと。リプルとペブルが部屋で宿題をしていると、ためらいがちにドアがノックされた。
「はい、はーい!」
ペブルが飛んで行ってドアを開けると、立っていたのはマーサだった。
「いらっしゃいマーサ。こんな時間に珍しいね」
出迎えに立ったリプルが不思議そうな顔をする。
マーサは、落ち着かない様子でリプルとペブルに訴えた。
「あのね、イザベスの様子が何かおかしいの」
「いや、イザベスはいつもおかしいよ。いきなり一人芝居しちゃったり」
ペブルのことばにマーサはううんと首を振って続けた。
「夕飯を食べて寮の部屋に帰って、しばらくぼーっと鏡を見つめていたかと思うと、急に私に自分の右手を白い布で覆うよう言ってきて。それで、イザベスの言う通りに彼女の右手を白い布でぐるぐる巻きにしたの。その時は、右手についたリギン草の匂いが気になるんだと思ったから」
「そうね、今日もひどい匂いさせてたもんね」
またペブルがまぜかえす。
「ペブル。マーサの話をきちんと聞こうよ」
リプルがそうたしなめる。
「それで、その後、彼女の髪を整えるよう言われて、言われたように髪を整えたの。そしたら、急に『ちょっとお散歩に行ってくるわ』って、ふらりと部屋を出ていったの」
「うーん。話を聞いてる限りではいつものイザベスと変わりないような気がするけど」
リプルも首をひねった。
「いいえ、何かが違うの。うまく説明できないけど。そして、散歩に出たまま1時間も帰ってこないのよ」
「この時間は、中等部内といえども危険だものね。闇にまぎれて魔物が入り込んでいる可能性もあるかも」
寮の中は全て探したが、見つからなかったというマーサの言葉をうけて、リプルたちは、外を探すことにした。
「今の時間、学校は閉まっているし、寮の外の建物といえば、先生たちの宿舎とホール、それから校長先生の家ね」
リプルが魔法で空中に地図を映す。
「今日は、ホールで先生たちとジールたちの会食が行われているようだし、さすがにここにはいないでしょ」
「となると、先生達の宿舎か校長先生の家のどちらかね」
「この校長先生の家の隣にある建物は?」
「これは校長先生の家の離れかしら」
マーサが首をかしげる。
「待って! そういえばジールたち校長先生の家の離れに泊まるって言ってた!」
ペブルがハッとしたように叫ぶ。
「それがイザベスとなんの関係が?」
不思議そうに問うリプルにペブルが説明する。
「しのびこむんだよ。ジールたちの部屋に」
「イザベスったら……おもてなし心のかたまりなんだね。見直しちゃった」
胸の前で手を組み、感心しているリプルにむかってペブルは「いや、ちがうし」とツッコミを入れた。
「イザベスは、ジールに自分を売り込もうとしてるんだよ」
「王都のすてきな貴族の男性と結婚して王都に住むことがイザベスの夢なの」
ペブルとマーサのことばに、リプルはふ~んと首をかしげた。
「イザベスの夢の邪魔をすることになるかもだけど、連れ戻そう。この時間に寮からいなくなるなんて、重大な規則違反だから」
そう言いながら、リプルは部屋の外へとびだした。
その日の夜のこと。リプルとペブルが部屋で宿題をしていると、ためらいがちにドアがノックされた。
「はい、はーい!」
ペブルが飛んで行ってドアを開けると、立っていたのはマーサだった。
「いらっしゃいマーサ。こんな時間に珍しいね」
出迎えに立ったリプルが不思議そうな顔をする。
マーサは、落ち着かない様子でリプルとペブルに訴えた。
「あのね、イザベスの様子が何かおかしいの」
「いや、イザベスはいつもおかしいよ。いきなり一人芝居しちゃったり」
ペブルのことばにマーサはううんと首を振って続けた。
「夕飯を食べて寮の部屋に帰って、しばらくぼーっと鏡を見つめていたかと思うと、急に私に自分の右手を白い布で覆うよう言ってきて。それで、イザベスの言う通りに彼女の右手を白い布でぐるぐる巻きにしたの。その時は、右手についたリギン草の匂いが気になるんだと思ったから」
「そうね、今日もひどい匂いさせてたもんね」
またペブルがまぜかえす。
「ペブル。マーサの話をきちんと聞こうよ」
リプルがそうたしなめる。
「それで、その後、彼女の髪を整えるよう言われて、言われたように髪を整えたの。そしたら、急に『ちょっとお散歩に行ってくるわ』って、ふらりと部屋を出ていったの」
「うーん。話を聞いてる限りではいつものイザベスと変わりないような気がするけど」
リプルも首をひねった。
「いいえ、何かが違うの。うまく説明できないけど。そして、散歩に出たまま1時間も帰ってこないのよ」
「この時間は、中等部内といえども危険だものね。闇にまぎれて魔物が入り込んでいる可能性もあるかも」
寮の中は全て探したが、見つからなかったというマーサの言葉をうけて、リプルたちは、外を探すことにした。
「今の時間、学校は閉まっているし、寮の外の建物といえば、先生たちの宿舎とホール、それから校長先生の家ね」
リプルが魔法で空中に地図を映す。
「今日は、ホールで先生たちとジールたちの会食が行われているようだし、さすがにここにはいないでしょ」
「となると、先生達の宿舎か校長先生の家のどちらかね」
「この校長先生の家の隣にある建物は?」
「これは校長先生の家の離れかしら」
マーサが首をかしげる。
「待って! そういえばジールたち校長先生の家の離れに泊まるって言ってた!」
ペブルがハッとしたように叫ぶ。
「それがイザベスとなんの関係が?」
不思議そうに問うリプルにペブルが説明する。
「しのびこむんだよ。ジールたちの部屋に」
「イザベスったら……おもてなし心のかたまりなんだね。見直しちゃった」
胸の前で手を組み、感心しているリプルにむかってペブルは「いや、ちがうし」とツッコミを入れた。
「イザベスは、ジールに自分を売り込もうとしてるんだよ」
「王都のすてきな貴族の男性と結婚して王都に住むことがイザベスの夢なの」
ペブルとマーサのことばに、リプルはふ~んと首をかしげた。
「イザベスの夢の邪魔をすることになるかもだけど、連れ戻そう。この時間に寮からいなくなるなんて、重大な規則違反だから」
そう言いながら、リプルは部屋の外へとびだした。
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