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62.リプルのピンチ
天空の魔女 リプルとペブル
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62.リプルのピンチ
「洞窟が見えた!」
ジールの声に
「トッド、レッド、もう少しよ。がんばって」
リプルがそう言いながら、馬たちを励ますために正面を向こうとした時、ちょうどカーブにさしかかった。
そのタイミングで体を支えていた手を放していたリプルは、御者台から投げ出されてしまった。
「リプル!!」
ジールがとっさに手を伸ばしたが、届かなかった。
(落ちる!)
宙を舞いながら、リプルは、ギュッと目を閉じ、衝撃に備えようとした。
しかし、まさに地面に打ち付けられようとした瞬間、茂みから飛び出してきたファングが、リプルのもとへと飛び込み、その背で彼女をキャッチした。
おどろいて目を見ひらきつつ、リプルはファングの太い首に両腕をしっかりと巻きつけた。
「しっかりつかまっておれ」
ファングは、猛スピードで馬車を追って駆け出した。
しかし、ここは木々など障害物がない平原だ。
猛り狂ったカルキーが、ファングとリプルに迫ってきていた。
ファングは、カルキ―のするどい爪を避けるため、右へ左へとジャンプしながら、草原を駆け抜けていく。
しかし、それにもましてカルキーのスピードは速かった。
バサッ、バサッという重そうな羽ばたきが、リプルのすぐ頭上で響く。
「もうすぐ洞窟! ファング、がんばって」
リプルは、ファングに声をかけ、はげました。
一足早く、ジールの繰る馬車は、洞窟へと飛び込んでいった。
「ファング頼む!」
馬車から飛び降りたジールは、洞窟の入口へと戻った。
リプルとファングは、洞窟まであと百メートルほどだ。
ジールは、疾走してくるファングの姿を見つめつつ、祈るような思いだった。
とつぜんカルキ―が、空高く飛び上がった。
(あきらめたか!?)
ジールがホッと胸をなでおろしたとき、カルキ―は急降下してきた。
落下速度を利用したカルキ―がリプルたちを狙おうとしたのだ。
一度消えた羽音が、とつぜん耳のすぐそばで聞こえた。
丸太ほどもありそうな巨大な爪が、顔の横に何度もくりだされる。
リプルが(もう、ダメかも……)そう覚悟を決めた時だった。
急に木立の中から続々と茶色い物が飛び出してきて、ファングとカルキーの間に割って入った。
その数、百頭ほど。
「鹿たちだ」
ジールが驚きの面持ちで見ている。
カルキーは、茶色の群れにさえぎられ、目標を見失って爪を引っ込め上空へと浮き上がった。
その間に、リプルを載せたファングは、洞窟へと駆け込んできた。
「ガルゴーノ・リケルダード」
ペブルたちは、すぐさま魔法で洞窟内の岩を移動して、入り口をふさぐ。
カルキーが洞窟の外で悔しそうにギャーっと鳴くのが聞こえた。
「リプル。大丈夫?」
ペブルが、リプルに駆け寄る。
「うん。ファングのおかげでたすかったわ」
ファングの背をなでながらリプルが言った。
「リプル、ごめん!」
その声にリプルが振り返ると、つらそうな表情のジールが立ちすくんでいた。
リプルが首をかしげる。
ジールは、目を伏せると悔しそうに手をグッとにぎりしめた。
「君を守れなくてごめん。みんなを守るのが僕の役目なのに」
リプルは、そんなジールの表情に胸をうたれた。
「ううん。守ってくれたよ。ジールは、みんなのこと、こうしてちゃんと守ってくれた。だから今こうして、みんな無事にいられるんだよ。それに……」
と、言ってリプルは言いよどんだ。
ジールが、壁にこぶしを叩きつけ
「こんなじゃダメなんだ!」
と、叫んだからだった。
リプルは驚いてそんなジールをじっと見つめた。
本当はジールに言いたかった。
そんなに力まなくても、全てのことに責任を背負わなくてもいいんだと伝えたかった。
でも、思い詰めたようなジールの顔を見るとそれ以上は、ジールの心に踏み込めないリプルだった。
「洞窟が見えた!」
ジールの声に
「トッド、レッド、もう少しよ。がんばって」
リプルがそう言いながら、馬たちを励ますために正面を向こうとした時、ちょうどカーブにさしかかった。
そのタイミングで体を支えていた手を放していたリプルは、御者台から投げ出されてしまった。
「リプル!!」
ジールがとっさに手を伸ばしたが、届かなかった。
(落ちる!)
宙を舞いながら、リプルは、ギュッと目を閉じ、衝撃に備えようとした。
しかし、まさに地面に打ち付けられようとした瞬間、茂みから飛び出してきたファングが、リプルのもとへと飛び込み、その背で彼女をキャッチした。
おどろいて目を見ひらきつつ、リプルはファングの太い首に両腕をしっかりと巻きつけた。
「しっかりつかまっておれ」
ファングは、猛スピードで馬車を追って駆け出した。
しかし、ここは木々など障害物がない平原だ。
猛り狂ったカルキーが、ファングとリプルに迫ってきていた。
ファングは、カルキ―のするどい爪を避けるため、右へ左へとジャンプしながら、草原を駆け抜けていく。
しかし、それにもましてカルキーのスピードは速かった。
バサッ、バサッという重そうな羽ばたきが、リプルのすぐ頭上で響く。
「もうすぐ洞窟! ファング、がんばって」
リプルは、ファングに声をかけ、はげました。
一足早く、ジールの繰る馬車は、洞窟へと飛び込んでいった。
「ファング頼む!」
馬車から飛び降りたジールは、洞窟の入口へと戻った。
リプルとファングは、洞窟まであと百メートルほどだ。
ジールは、疾走してくるファングの姿を見つめつつ、祈るような思いだった。
とつぜんカルキ―が、空高く飛び上がった。
(あきらめたか!?)
ジールがホッと胸をなでおろしたとき、カルキ―は急降下してきた。
落下速度を利用したカルキ―がリプルたちを狙おうとしたのだ。
一度消えた羽音が、とつぜん耳のすぐそばで聞こえた。
丸太ほどもありそうな巨大な爪が、顔の横に何度もくりだされる。
リプルが(もう、ダメかも……)そう覚悟を決めた時だった。
急に木立の中から続々と茶色い物が飛び出してきて、ファングとカルキーの間に割って入った。
その数、百頭ほど。
「鹿たちだ」
ジールが驚きの面持ちで見ている。
カルキーは、茶色の群れにさえぎられ、目標を見失って爪を引っ込め上空へと浮き上がった。
その間に、リプルを載せたファングは、洞窟へと駆け込んできた。
「ガルゴーノ・リケルダード」
ペブルたちは、すぐさま魔法で洞窟内の岩を移動して、入り口をふさぐ。
カルキーが洞窟の外で悔しそうにギャーっと鳴くのが聞こえた。
「リプル。大丈夫?」
ペブルが、リプルに駆け寄る。
「うん。ファングのおかげでたすかったわ」
ファングの背をなでながらリプルが言った。
「リプル、ごめん!」
その声にリプルが振り返ると、つらそうな表情のジールが立ちすくんでいた。
リプルが首をかしげる。
ジールは、目を伏せると悔しそうに手をグッとにぎりしめた。
「君を守れなくてごめん。みんなを守るのが僕の役目なのに」
リプルは、そんなジールの表情に胸をうたれた。
「ううん。守ってくれたよ。ジールは、みんなのこと、こうしてちゃんと守ってくれた。だから今こうして、みんな無事にいられるんだよ。それに……」
と、言ってリプルは言いよどんだ。
ジールが、壁にこぶしを叩きつけ
「こんなじゃダメなんだ!」
と、叫んだからだった。
リプルは驚いてそんなジールをじっと見つめた。
本当はジールに言いたかった。
そんなに力まなくても、全てのことに責任を背負わなくてもいいんだと伝えたかった。
でも、思い詰めたようなジールの顔を見るとそれ以上は、ジールの心に踏み込めないリプルだった。
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