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99.前哨戦
天空の魔女 リプルとペブル
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「あいつ、やるな」
ロッドもその行動力に思わず目を見張るほどだった。
黒ブドウたちは、リプルたちの手前五メートルほどのところで立ち止まると、そこから細長いヒモのようなものをヒュッと伸ばしてきた。
そのヒモがムチのようにしなって、飛んでくる。
とっさに首をひねって避けたペブルのすぐ横をすりぬけたヒモは、近くにあった小さな岩を打った。
すると岩が砕けて飛び散った。
思わずヒッと声を出したペブルがにこっと笑いながら振り返る。
「あの~、あの攻撃を受け止めるんです……よね?」
「そうだ、行け」
ロッドが冷たく言い放つ。
「ぶすーっ」
声に出して不機嫌さをアピールするペブルに、
「大丈夫だ、俺が後ろを守ってやる」
ロッドが声をかける。
いつになくイケメンな彼のことばにペブルは一瞬あっけに取られたが、暗闇の中でも見えるほどに真っ白な歯をニカッと見せて、
「その言葉、信じるわ」
そう言うと敵の前に飛び出していった。
「私が相手だよ!」
敵は、目の前に突然現われたペブルのハンマーに驚いたのか、やたらめったらヒモを繰りだして攻撃してきた。
ペブルがその攻撃をハンマーで受けとめている間に、ジールとロッドがそれぞれ、敵の死角に回り込んだ。
体勢が整ったところで、ジールがリプルに合図した。
「今だ、リプル、打て」
リプルは、その言葉にはじかれたように、矢を放った。
その矢は真ん中の黒ブドウに突き刺さった。
真ん中の黒ブドウは、もがき苦しみ、ヒモをふるわせて、暴れ出した。
じつは、その矢には、あらかじめマーサが、リギン草のエキスを抽出して作ったスプレーをかけていた。
その匂いに我をうしなった黒ブドウは、隣の仲間の黒ブドウにも攻撃を加えている。
その隙をついて、左右の黒ブドウにジールとロッドがそれぞれ斬りかかった。
プシューッと音がして、黒ブドウの粒が一つずつつぶれていく。
「以前戦ったときは、俺たちの武器じゃ、かすり傷さえ与えられなかったが、さすが伝説の武器だな。相当な魔力が封じ込めてあるようだ」
と、言いつつジールが、右の黒ブドウをしとめる。
「ああ、そのようだな。この切れ味、小気味いいくらいだ」
ロッドも左の黒ブドウをたたき切った。
中央の黒ブドウは、リプルの矢が何本も突き刺さって、もはや虫の息だった。
そこをペブルが、おりゃーとかけ声をかけつつハンマーでたたきつぶした。
プシューっと音がして、黒ブドウは消えていった。
「これで終わり?」
ペブルが、意気揚々とハンマーをかつぎあげながら言う。
そんなペブルにリプルがシーッと、人差し指を立ててみせ、耳をすましている。
「残念ながら、そうとも行かないみたいだわ。この上の階には、十五から二十体くらい敵がいるみたい」
リプルは、狼の耳の能力を駆使して、必死に敵の気配を感じ取っていたのだった。
「なるほど、もしかしたらさっきの先発隊は、俺たちの戦力や戦い方をモニターするための先発隊だったのかもしれないな」
ジールが眉をしかめながらつぶやいた。
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