口説き上手と断り上手

岡ノささな

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失恋

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「月が綺麗ね」
ぽそ、と呟かれたその言葉に驚いて隣を見ると
満月をうっとりと眺める横顔。

月が綺麗ですね一一 知ってか知らずか。

「月が輝くのは太陽のおかげだね」
そう言って彼女の髪をさらりと掬った。
彼女は僕の手をゆったりと交わし、すっと立ち上がって言う。
「ロマンティックな話ね」
僕は、踵を返す彼女の手を握って
「もう行ってしまうのかい?」

繋いだ手をやんわりと解くと、
「私は一緒に輝ける方がいいわ。
                 そうね…星なんて素敵ね」


再び去ろうとする彼女の手を
もう一度とることはできなかった。
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