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第五章

十七話【出たとこ勝負】

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白く森を包む霧。

視界は数メートル先までしか届かない。

ドラゴンが心配そうに、その届かない視界の先を見る。

サーチ。

確かに何かいる。

素早く動く何かが数匹、音も無く動いている。

その内の一匹が、ピタッっと止まり、長い触覚を揺らす。

「来るぞ、みんなを起こせ!」

飛び起きる惣一郎。

サーチで捉えた姿は、スポーツカー程のゴキブリであった。

惣一郎の声に目を擦り、あくびをしながら起きるベンゾウ。

「ご主人様、なんかあったの?」

スワロも目を覚ます。

「霧の中に蟲がいる。動きが早いぞ」

盾を出し霧の中に意識を向ける惣一郎。

杖を手に立ち上がるスワロが、光剣を出すと霧に光が反射し、視界が余計に悪くなる。

「スワロ、光剣は使うな! ゴゴ、ジジ! スワロの護衛に! タイガ、ハク、ドラゴンは3人一組で警戒しろ!」

惣一郎が指示を飛ばすと、その声に反応したのか一匹が凄い勢いでぶつかって来る!

黒い車に轢かれた様に、惣一郎が宙を舞う!

「ご主人様!」

駆け寄るベンゾウ。

スワロも駆け寄ろうとするが、盾を構えたゴゴ達に前を塞がれる。

「俺は大丈夫だ! 周りに警戒しろ!」

膝を突き声を上げる惣一郎にまたも、黒い影が突っ込んで来る!

惣一郎の前で構えるベンゾウが、黒く燃える小刀を両手に出すと、突っ込んで来る大きな影が二つに分かれ、後ろの木にぶつかる!

両断され、縦に半分になったゴキブリの足は、まだ地面を蹴ろうと動いていた。

するとその半身の蟲に、群がるゴキブリ。

ギ、クチュクチュ。

4匹のゴキブリは、あっという間に仲間だった半身を平らげ、クチュチッチっと不気味な音を出しながら長い触覚を揺らし、もう半分へと素早く群がる!

黒く感情の無い目で、仲間を食べるその姿に、その場の誰もが声を失う。

すると反対側の霧の中から、急に現れた一匹が、ジジの盾に勢いよくぶつかる!

盾に身を隠し勢いを止めるジジ!

ゴキブリは徐々に盾をよじ登り、覆い被さる!

ゴゴも潰されそうなジジの上から、盾をゴキブリに押し付ける!

その後ろでは目を閉じるスワロが、杖を振り下ろすと同時に目を見開き、黒い稲妻がゴゴ達を避ける様に、杖からゴキブリへと流れる!

ドッゴーーーーン! ゴロゴロゴロ。

その音に驚きバラバラに消えるゴキブリ。

ジジの持つ盾に覆い被さるゴキブリは、煙をあげ動かなくなっていた。

カサカサカサ!

霧の中にまだいる!

いや、今の音で集まって来ている!

棍と鎌を構えるタイガとドラゴン。

その後ろで杖を持ち、集中するハク。

すると、みんなの中心に向け風が流れ始める。

集まった風は圧縮される様に周りの空気を集め、目に見えるほどの球体を作り出す!

ハクのオリジナルスキルであった。

空気を圧縮するだけのスキルだが、惣一郎の杖を使うとその威力は桁違いだった。

高密度に圧縮された空気が弾けると、爆風を生み、周りの霧を吹き飛ばす!

視界の開けた森の中に、姿を現す無数のゴキブリが、吹き飛ばされない様にと地面にへばりつく!

盾を斜めにスワロを庇うゴゴ達。

地面に刺された棍と鎌で耐えるタイガ達。

飛ばされたベンゾウを抱え、踏ん張る惣一郎が殺虫スプレーを投げ出す!

「ハク、もう一度だ」

惣一郎の指示にタイガ達が缶を拾い、何も無い空間に噴き始める。

噴射する内容物をハクのスキルがその、中心に圧縮していく。

ゴゴとジジも缶スプレーを拾い圧縮していく球体に吹きかける!

ベンゾウが落ちている缶を切り裂き、噴き出す中身が球体へと集まっていく!

スワロが叫ぶ!

「来るぞ!」

一気に襲いかかって来る無数のゴキブリ!

「行きます!」

っと、ハクの声を合図に全員が地面に伏せ、突風に備える!

大量に殺虫剤を取り込んだ球体が弾けると、爆風が森へと広がる!






布を口にあてたタイガが、ゆっくりと顔を上げる。

マスクをした惣一郎とベンゾウも起き上がり、周りを見渡す。

「みんな無事か!」

ケホケホと苦しそうなゴゴにキュアをかけると、一瞬で回復する。

「主人よ……」

マスクを手で押さえたスワロが、森の中で倒れた夥しい数の蟲に驚く。

「上手く行きましたね…… ケホ」

ハクも多少吸い込んだ様だ。

「なんて数だ……」





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