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第四章

十六話 【菩薩の心!】

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やや気温も高く、動いていると汗ばむ陽気だが、林の中の坂は日陰で涼しい風が吹いていた。

上り坂でもベンゾウのスピードは変わらず、疲れた様子もない。

この絵図を除けば、確かに楽である。

このリアカーを馬車みたいに改造すれば、旅はもっと楽になるな。

そうすると、やっぱり馬か?

「スワロ、馬車を引く動物って馬以外にあるのか?」

「ええ、牛や[メメ]に[カフロ]と、他にも沢山いますね」

メメはロバぽいもので、カフロは大型の犬らしい。

他にも狼や、中にはグリフォンなどの魔獣を飼い慣らしている者もいるらしい。

リアカーを引くなら馬じゃ高さが合わなし、何がいいか考えてるとスワロが、この荷車を引かせる生き物をお探しならと、ある提案をしてきた。

スワロの提案は、魔獣のテイムだった。

あるのね魔獣使いとか……

魔獣を傷つけずに屈服させ、食べ物などで一緒にいると得があると思わせると、稀に主従関係が結ばれるそうだ。

ただ成功率は魔獣によって異なり、難しいとの事であるが、惣一郎の防護服と食べ物なら行けるかも知れないとの提案であった。

やってみる価値はあるか……

この辺りだと[プレリーコウ]が、探せば見つかるかも知れないらしい。

プレリーコウとは、犬神と呼ばれる大型犬の魔獣で、頭が良く、罠を仕掛けて獲物を取るそうだ。

猫派の惣一郎は犬神の呼び名に、中学時代に忘れた感情を呼び覚まし興奮していた。

「はい、ここでキャンプします」

レイトールを出てから半日で、やや強引にテントを出す事になる。

林の中にテント出し中に入ると、惣一郎はネットショップスキルで、全身プロテクターを購入する。

大事をとっての事だ。

いつもの防護服とアームプロテクターでも、ほぼ打撃は効かないが、衝撃が無いわけでも無い。

ヘルメットまである今回の全身プロテクターなら、ほぼ無敵だろう。

それと高級なドッグフードを購入する。

見た目が変なおっさんに誰もツッコミを入れず、少し寂しい気持ちもあったが、早速犬神を探しに行く事にする。

スワロはお留守番するそうで、ベンゾウとふたりで捜索に向かう。

ベンゾウが鼻で探すと言う、行き当たりばったりな作戦であった。

見つけても絶対に手を出すなと何度も言い聞かされたベンゾウが、クンクンと林の中を右往左往する。

惣一郎は深い林の中で迷子にならない様に、木に印をつけながら進む。

「そんな事しなくても平気だよ!」っと、ベンゾウは言うが、君とはぐれたらアウトでしょ。




何時間も探し回り、惣一郎はヘトヘトだった。

プロテクターが動きづらい!

周りも暗くなって来たし、今日は諦めようと思った、その時!

「ご主人様!」

「いたか!」

「お腹減った……」

うん、帰ろうね。

テントに戻ったのは夜だった。




次の日、作戦を変えた。

テントを収納し、みんなに迷彩柄のポンチョを配る。

気配を消して、3人で奥まで行く覚悟だった。

昨日とは反対側の林に入りしばらく進むと、白いグルピーが何かと戦っていた。

ラッキー!っと白い巨体がお金に見えた惣一郎は、ベンゾウに「やれ!」っと叫ぶ。

あっさり首を落とし倒れたグルピーの先に、白い大きな犬が、血だらけで牙を剥き出しに唸っていた。

アレ、これが犬神だよな? 

こんなあっさり見つけていいのか?

ベンゾウが指示を待つ。

惣一郎はポンチョを脱いで両手を広げ、敵意は無いよ!っと半開きの眼差しの笑顔で近づく。

この、気持ち悪い男に犬神は牙を剥き出して威嚇するが、既に深い傷を負っており、そのまま意識を失くして倒れる。

薄目で笑う惣一郎も両手を広げたまま、あれ?っと固まっていた。

テントを出し、犬神にクリーンをかける惣一郎。

薬草を塗りまくり、水とドッグフードを置いて、意識の戻らない犬神を見守る事にする。

ベンゾウとスワロは、テントで自分の時間を過ごし、惣一郎は外に椅子を出して犬神を見守る。

ベンゾウとスワロは、テントで夕食を食べる。

惣一郎は外の椅子でサンドイッチを食べながら、犬神を見守る。

ベンゾウとスワロは、テントで眠りにつく。

惣一郎は外の椅子でウトウトと、犬神を見守る?



深夜に、ウーと言う音に目を覚ます惣一郎。

目の前に意識を取り戻した犬神が、惣一郎に敵意を剥き出しに立とうとしていたが、足は震えていた。

まだ傷が痛むのだろう。

犬神が心配な惣一郎は、不用意に椅子から立ち上がり近付く。

それに驚いた犬神は、惣一郎に噛み付く!

咄嗟に出した左腕を犬神が噛んでいるが、惣一郎は表情を変えず、傷口に薬草を追加で塗る。

犬神は理解出来ずに噛んでいた腕を離し、頭を噛む!

噛む! 噛む? 噛む……

平然とする惣一郎に犬神は敵わないと諦め、襲うのをやめた。





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