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第十六章
九話 【追憶】
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テントに入るとベッドの上で、膝を抱え遠くを見ているベンゾウがいた。
惣一郎は何も言わず、カツ丼を差し出す。
ベンゾウも察したのか、黙って食べ始めた。
セシルはなんだか、羨ましいと感じる。
しばらくすると、テントに入って来た弁慶が、申し訳なさそうに、
「あの…… 旦那様……」
うん、大丈夫! 予想してたよ。
「殴ったんだね?」
「いや、だってだな! ベンゾウ殿に勝負を申し込むとか言い出して、今こんな時に……」
「ありがと、守ってくれたんだね!」
「旦那様~」
死んだ魚の様な目で惣一郎がテントを出ると、白目を剥いたミコが、ガブガに担がれる所だった。
「惣一郎よ、カツ丼美味かった! ご馳走様。また出直すよ!」
っとガブガがミコを肩に、帰って行った。
ガウが「ガウ!」っとお辞儀をして追いかける。
オババは、まだカツ丼をゆっくり食べていた。
「あの娘、中々強いニャ。リコはあれより上かニャ?」
「ああ、仲間の中では1番だ」
惣一郎はお茶を淹れ、オババに差し出す。
「なるほどニャ…… お前さん、何者ニャ?」
「俺は、ただのおっさんだよ」
「ケラッケラッケラ! そう言うことにしておくニャ」
笑い方が…… 師匠って…… なんの?
夜も更けると、ムカデと戦った冒険者達が次々と戻ってくる。
セシルと怪我人の手当てに走り回り、いつの間にか空は明るくなっていた。
手当を受けた冒険者が、
「惣一郎殿、本当によろしいのですか?」
「ああ、あとは俺らに任せてみんなは、ゴーデンセルまで下がってくれ」
怪我を負った冒険者達を下がらせ、ここでムカデを迎え撃つ事にする。
テント前のテーブルで、殺虫剤を小分けに袋に詰める惣一郎。
やっぱ、ビルゲンの様な風刃の魔法があると便利だよな~ っと思う……
徹夜のセシルを休ませ、弁慶が朝食を作ってくれているとベンゾウが、
「ご主人様、ごめんなさい。もう大丈夫」
っと、テーブルにつく。
まだ、いつもの元気はない様だが、気持ちに整理は付いたのだろう。
「気にするな! それより、冒険者の話ではムカデは前に遭った紫のムカデらしいぞ! 行けるか?」
「うん!」
弁慶がニコニコと、ベンゾウにも朝食を運んで来る。
陽が登ってからしばらく経つが、惣一郎のサーチにムカデの気配は無かった。
「そう言えば、オババの姿が見えないな~」
「オババさまは、そういう人だから」
「そう言う人?」
「呼んだかニャ」
こういう人って事ね……
「いや、てっきり街に戻ったのかと思ってね」
「戻ってたニャ、コレを取りに」
オババは、袖から麻袋を出して、中から小さな花のブローチをだす。
「リコや…… お前さんにコレを返しておくニャ」
ベンゾウにも見覚えのないブローチ。
「リコが遠征から戻ったら、渡すとリコが作っておった物ニャ」
ベンゾウは見る見る大粒の涙をこぼす。
いい話なのに、リコリコ紛らわしく台無しだと、惣一郎は思っていた。
手作りの歪な花のブローチ。
姉弟にだけ分かる、何かがあるのだろう……
ベンゾウは大事そうに胸に抱き、泣き崩れていた。
ちっ! いい所邪魔しやがって。
惣一郎のサーチにムカデの反応があった。
数は2匹、森を真っ直ぐこちらに向かって来る。
「ベンゾウ、オババとここでもう少し待機してろ。俺は弁慶と森を見回りに行ってくる」
コクン。
理喪棍にまたがり、弁慶を乗せると高く飛び上がる惣一郎。
オババは「飛んだニャ!」っと目を丸くしていた。
舟は慣れて来たが、理喪棍にまたがり飛ぶのは、まだ怖い弁慶であった。
く、苦しい…… 弁慶…杖を……杖を掴め……
惣一郎は何も言わず、カツ丼を差し出す。
ベンゾウも察したのか、黙って食べ始めた。
セシルはなんだか、羨ましいと感じる。
しばらくすると、テントに入って来た弁慶が、申し訳なさそうに、
「あの…… 旦那様……」
うん、大丈夫! 予想してたよ。
「殴ったんだね?」
「いや、だってだな! ベンゾウ殿に勝負を申し込むとか言い出して、今こんな時に……」
「ありがと、守ってくれたんだね!」
「旦那様~」
死んだ魚の様な目で惣一郎がテントを出ると、白目を剥いたミコが、ガブガに担がれる所だった。
「惣一郎よ、カツ丼美味かった! ご馳走様。また出直すよ!」
っとガブガがミコを肩に、帰って行った。
ガウが「ガウ!」っとお辞儀をして追いかける。
オババは、まだカツ丼をゆっくり食べていた。
「あの娘、中々強いニャ。リコはあれより上かニャ?」
「ああ、仲間の中では1番だ」
惣一郎はお茶を淹れ、オババに差し出す。
「なるほどニャ…… お前さん、何者ニャ?」
「俺は、ただのおっさんだよ」
「ケラッケラッケラ! そう言うことにしておくニャ」
笑い方が…… 師匠って…… なんの?
夜も更けると、ムカデと戦った冒険者達が次々と戻ってくる。
セシルと怪我人の手当てに走り回り、いつの間にか空は明るくなっていた。
手当を受けた冒険者が、
「惣一郎殿、本当によろしいのですか?」
「ああ、あとは俺らに任せてみんなは、ゴーデンセルまで下がってくれ」
怪我を負った冒険者達を下がらせ、ここでムカデを迎え撃つ事にする。
テント前のテーブルで、殺虫剤を小分けに袋に詰める惣一郎。
やっぱ、ビルゲンの様な風刃の魔法があると便利だよな~ っと思う……
徹夜のセシルを休ませ、弁慶が朝食を作ってくれているとベンゾウが、
「ご主人様、ごめんなさい。もう大丈夫」
っと、テーブルにつく。
まだ、いつもの元気はない様だが、気持ちに整理は付いたのだろう。
「気にするな! それより、冒険者の話ではムカデは前に遭った紫のムカデらしいぞ! 行けるか?」
「うん!」
弁慶がニコニコと、ベンゾウにも朝食を運んで来る。
陽が登ってからしばらく経つが、惣一郎のサーチにムカデの気配は無かった。
「そう言えば、オババの姿が見えないな~」
「オババさまは、そういう人だから」
「そう言う人?」
「呼んだかニャ」
こういう人って事ね……
「いや、てっきり街に戻ったのかと思ってね」
「戻ってたニャ、コレを取りに」
オババは、袖から麻袋を出して、中から小さな花のブローチをだす。
「リコや…… お前さんにコレを返しておくニャ」
ベンゾウにも見覚えのないブローチ。
「リコが遠征から戻ったら、渡すとリコが作っておった物ニャ」
ベンゾウは見る見る大粒の涙をこぼす。
いい話なのに、リコリコ紛らわしく台無しだと、惣一郎は思っていた。
手作りの歪な花のブローチ。
姉弟にだけ分かる、何かがあるのだろう……
ベンゾウは大事そうに胸に抱き、泣き崩れていた。
ちっ! いい所邪魔しやがって。
惣一郎のサーチにムカデの反応があった。
数は2匹、森を真っ直ぐこちらに向かって来る。
「ベンゾウ、オババとここでもう少し待機してろ。俺は弁慶と森を見回りに行ってくる」
コクン。
理喪棍にまたがり、弁慶を乗せると高く飛び上がる惣一郎。
オババは「飛んだニャ!」っと目を丸くしていた。
舟は慣れて来たが、理喪棍にまたがり飛ぶのは、まだ怖い弁慶であった。
く、苦しい…… 弁慶…杖を……杖を掴め……
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