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第十六章

十八話 【杖】

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さて、食後にスーサイド・キップスの魔法をっと、思っていたが……

見事に全員、腹をだし天を仰いでいた。

動けるのは、ベンゾウを除く、ジビカガイライの3人。

「こんな…… 美味いもの食べたのは…初めてです……」

「クソ……腹が……限界だ…もっと…」

「がう…… ゲフ!」

限度を知らんのか……

っと言う事で、みんなの回復を待ってからの再開となる。

波の音を聴きながら、ビーチベッドに横になりレモンサワーを飲む惣一郎。

青い空、白い砂浜、遠くには森に囲まれた火山の島しか無い海。

惣一郎は、リゾートを満喫していた。

セシルが片付けを終えると、夕食の仕込みを始める。

最近メキメキ腕を上げていくセシル。

聖女時代は、周りの人が何でもやってくれていたので、今楽しくて仕方ないそうだ。

ホント助かる!

だが、周りから見れば、少女に雑用を押し付け、酒を飲むおっさんにしか映らなかった。



惣一郎は、腹をだし唸っているゼリオスに、杖を見せてもらっていた。

アルミを溶かし、型に流し込んで作ったのだろうか、歪ではあるが、なるほど…… 型を作れば大量生産できそうだな。

「ゼリオス、どこで手に入れたんだ? その荷車は」

「ええ、エリリンテ教国の街で、ドワーフ達が数台売っていた荷車の中で、一番良い物買いまして」

エリリンテ? 

てっきり、ジュグルータさん辺りかと思っていたが…… エリリンテ?

覚えてないな……

惣一郎はクロの荷車を改造した際に出た、残骸を譲った事を忘れていた。

アルミか……

そう言えば、アイテムボックスの中にも、ビールやジュースの缶などのゴミが、大量なのよね~

容量がわからんが、このアイテムボックス。

まだまだ全然余裕だから、気にもしてなかったが、その辺にゴミを捨てられないしな~

波の音を聴きながら、そんな事を考えていた。

再開したのは、しばらく後だった。




砂浜に立てらた丸太に、順番に得意な魔法を撃ってもらう。

クトルとキンブルのダークエルフの2人は兄弟らしく、魔法も普通に炎槍や風刃などを使い、ライトやサーチでの支援がメインだと言う。

特にキンブルは前衛に立つ事もあるそうで、プロット(肉体強化)も使えるという。

グリコは見た目、普通の人間かと思っていたが、ゼリオスと同じ魔族であり、攻撃魔法を得意とする火力重視タイプの様だ。

グリコの得意な魔法はウォーターボールなどの水系だったが、杖を手に入れてから水球が、レーザーの様にジェット水流で対象を切る物に変化したそうだ。

水刃は水球より出現させる水の量も少なく、風刃より切れ味もいいそうだが、飛距離が大幅に短くなったそうだ。

そしてリーダーのゼリオスは、風刃が変化し、風を自在に操れる様になっていた。

空気の壁を作ったり、砂を巻き上げ視界を奪ったり、突風で魔獣を空に押し上げる事も出来るそうだ。

もちろん風刃で斬ることも出来るが、竜巻を起こし無数の風刃を中で発生させ、対象を細切れのミンチにまで出来ると言う。

目の前の丸太も、根本からボロボロになっていた。

砂浜の砂を巻き込み、サンドブラストの様に削り取ったのだろう。

「いかがですか? 我々の力は」

「なるほど、よくわかったよ。これからみんなに合った杖を作るから、希望の形状などあれば言ってくれ! それまではしばらく、ベンゾウ達と模擬戦をするといい」

ゼリオス達は、惣一郎を追いかけてた来た念願が、やっと叶うと喜ぶ。

惣一郎は、ガブガとテントで杖の製作に入り、ベンゾウと弁慶は、残った者達と浜辺で模擬戦を繰り返す事になる。




「さて、結局4人バラバラの物になりそうだな」

「どの道炉もないし、削り出すしかあるまい」

惣一郎は、簡単なデザイン画を描き、ガブガに荒削りを頼む。

仕上げは惣一郎が、念を込めて作るしか無さそうだ。

正直、念を込めた所で、性能に大差はない。

だが、惣一郎にとって込める思いが、仕上がりに違いが出て来ると感じていた。

「そう言えば、クルセウスはみんな前衛だよな、支援魔法なんかは、誰か使えるのか?」

「ああ、ガウが鼻が利くからな、ワシらのチームは誰も魔法を使わないのだ」

「上位チームは、みんなプロットなんかの強化の魔法を使うものかと思ってたよ」

「まぁプロットもレアだからな、滅多に見ん」

「それで上位にいるんだ、逆に凄いな」

「ミコだ! あやつが異常なんじゃ、ミコが簡単に負ける所なんぞ、お前さんの所の娘にやられたあれが、初めてだ」

「そうなのか……」

「ああ、あの娘は異常の中でも特に異常だ、何をしたら、ああなるんだ?」

「さぁ、ベンゾウの異常っぷりは、俺にも謎だ」

「そうか…… お前さんも相当異常だがな」

失礼な……




その後、砂浜での訓練と食事を繰り返し、杖が出来たのは、三日後であった。







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