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第十八章
最終話 【そして、生き続ける愛】
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残った手で、逃げようと這いずるミルドラ。
駆け寄る弁慶に抱えられ、横になる惣一郎。
ベンゾウは血だらけの両手を見て、放心する。
「旦那様ぁ、旦那様!」
銀髪を逆立て、瞬い光りを発するベンゾウ。
奴隷の縛りから解放され、勇者として目覚めたのだ!
割れた眼鏡越しに見開いた目は、地面を這いずるミルドラを見る。
タン!っと舞う砂を残して消えると、グラビティーで何倍にも重く、上空から舞い降りる。
ミルドラの頭部は、ベンゾウの足元で地面に赤い花を咲かせ、脚だけがカサカサと砂を引っ掻き、やがて動かなくなる……
べ、べン……ゾウ……
「だ、旦那様! 喋っちゃ駄目だ、ベンゾウ殿! 回復薬は、バッグを、早く!」
我に帰るベンゾウが、慌てて駆け寄り、大粒の涙を流す。
無駄だとわかっていた。
エリクサーでもない限り……
いいんだ…… ふたりとも。
「ご主人様!」
「旦那様!」
俺は、もう死んだみたいだ……最後に別れを言う時間をもらえたよ…… お礼だってさ。
「やだ、ご主人様! 死んじゃやだ!」
「旦那様……」
俺に奇跡が起きて…… この世界で…ふたりに会えて…… 楽しかった……
「ごしゅじんだま……」
3人で、本当に楽しかった…… 毎日が……
「旦那様ぁ……」
でも…俺は……ミルドラと同じ…… この世界にいちゃいけない存在なんだ……
薄々気付いていたのに……
ふたりと別れるのが…… 嫌でな……
ごめんな……
「いや、ダメ、ご主人様!」
弁慶……最後の一撃…… 見事だったぞ……
「旦那…様……」
ベンゾウ……
カッコよかったぞ…… 勇者ベンゾウ……
「だめ…いがないで……」
ホント……お前は、なんでそんなに……
強いんだろうな……
「いやだ… おねがい…… いがないで……」
ごめんな……
わがままに…… 付き合わせて……
俺を…最後……
ひとりにしないでくれて……
ありがと……………
「 ごちゅじんだまぁーーーーー! 」
「 旦那様さまぁーーーーー! 」
弁慶の胸の中、寄り添うベンゾウに抱かれ、惣一郎は静かに役目を終える……
『旦那様、説明なんて求めなくても……
わかってるだろ……』
『ベンゾウが強いのは……
ご主人様の、奴隷だがらだよ……』
「行ったか……」
白い大きな犬が現れ、幸せそうな惣一郎の顔を覗き込む。
「ぐろ…… ごじゅじんだまが……」
見ろ、娘達よ。
空に渦巻く雲が晴れていくだろ……
この男が救ったのだ、お前達を、この世界を。
20年後……
「聞いたか、エルバズの森でダンジョンが溢れたんだってよ!」
「それでこんな街に、冒険者が集まってきてるのか」
昼間から酒を飲み、世間話をする人々。
その酒場の向えに建つギルドでは、冒険者達が集まっていた。
「テネリ! やっと逢えるわ、あの人達と!」
「ああ、このノイタジア王国がまだ、ゼリアオールだった頃、俺たちを救ってくれた英雄が勢揃いするらしいぜ!」
「孤児だった私達を、助けてくれた英雄に会いたくて、冒険者になったんだもんね!」
「し~、始まるぞ!」
階段の上に現れた、白髪の老婆。
「良く集まってくれた冒険者達! 聞いての通りエルバズ大森林で、ダンジョンが溢れた! 今まで諸君が相手にして来た魔物とは大違いだ! 臆するものは立ち去れ!」
「まさか、五賢人のツナマヨ様がおいでとはな」
「あれが、元フジンカガイライのツナマヨ様!」
シワと首元の傷、腰に下げられた刀が、老婆であるはずのツナマヨに、険しい冒険の数々と威厳を表し見せていた。
「まぁ、そう脅かすでない。今回も来てるのであろう? ジビカガイライは」
後ろから現れた、金髪にツノを生やす美女。
「おお! お美しい、女王様だ、ノイタジア王国女王、ビルゲン様だぞ!」
「変わらず若々しい、あれで世界を救ったひとりなんだからな~」
「待ておい! 今ジビカガイライって言わなかったか?」
「来てるのか? あの伝説が……」
ざわ……ざわ……
「ビルゲン女王、ネタバラシを先にしないで頂きたい! 士気に関わる!」
「もう、硬い事言わないでよ! ねぇバオ」
ビルゲンの後ろに立つ、凛とした出立ちのエルフが、ツナマヨに、言っても無駄です!っと、手振りで伝える。
溜め息を吐くツナマヨ。
「冒険者達よ! この度は、大規模な討伐が予想される。したがって、冒険者トップチームにも来てもらった。紹介しよう!」
「ミワ、いよいよだぞ!」
「ええ!」
「まずは、聖母スワロの後継者、光剣のピノ」
「「「 おお! 」」」
銀のフードを目深に被り、銀色の杖を持つ女性。
「おい、フードで顔が良く見えないぞ!」
「バカ、彼女の顔を見た男は、みんな殺されるぞ!」
フン!っと、そっぽを向くピノ。
「次に、癒しの淑女、セシル!」
長身で長い白髪、スタイルのいい女性が、こちらも銀の杖を持って、巨大な白い犬神を連れ現れる。
「ほぉ~ すっごい美人だな!」
「いい寄ったりするなよな! 犬神に食い殺されるぞ!」
「テネリ! あの時のワンちゃんだよ!」
「ああ、背中に乗せて遊んでくれた事、覚えてるかな~」
「そして、トップチーム、ジビカガイライの副長にして大黒柱、黒鉄のベンケイ!」
「「「 おおおお~ 」」」
巨大な戦斧を肩に担ぎ、歳の割に筋肉質な鬼人の女性。
「あれが伝説の…… 赤鬼」
「ああ、歳は40を超えるが、まだまだ現役らしいぞ!」
「ああ~、テネリ、変わらないよ! あの時のまま」
「ああ、あの筋肉で最初は驚いたがな!」
「そして最後、生きる伝説。トップ中のトップ。銀の閃光、勇者ベンゾウ」
「「「「 おおおおおおお!! 」」」」
長い銀髪に露出の多い軽装備。
目を布で覆い、耳をはやす獣人の女性。
「えらい人気だな!」
「当たり前だろ! 世界を救った英雄だぞ!」
「テネリ!」
「ああ、あの人だ……」
「ちっ、目が見えなくて、ホントに戦えるのかよ?」
「バカ!」
ベンゾウが長い足を出し、前に出る。
「聞こえているぞ!」
静まり返るギルド……
見えないはずだが、顔はしっかりと声を発した冒険者に向けられていた。
「い、いえ、すいません。目が見えなくて大変そうだな~っと……」
「見たいものは見た! 私には耳もある」
「で、でも、やっぱり、もうお歳ですし……」
すると弁慶も前に出て、声を揃える。
「「 女は、四十からだ! 」」
終わり。
ご愛読ありがとうございました。
初めて書く物語を、最後まで書き切る事が出来たのも、皆様の応援とご指導あっての事と深く感謝申し上げます。
続編[異世界で買った奴隷がやっぱ強すぎるので説明求む!]も、引き続きお楽しみ下さい。
ケラケラケラ。
2023/初春 夜間救急事務受付
駆け寄る弁慶に抱えられ、横になる惣一郎。
ベンゾウは血だらけの両手を見て、放心する。
「旦那様ぁ、旦那様!」
銀髪を逆立て、瞬い光りを発するベンゾウ。
奴隷の縛りから解放され、勇者として目覚めたのだ!
割れた眼鏡越しに見開いた目は、地面を這いずるミルドラを見る。
タン!っと舞う砂を残して消えると、グラビティーで何倍にも重く、上空から舞い降りる。
ミルドラの頭部は、ベンゾウの足元で地面に赤い花を咲かせ、脚だけがカサカサと砂を引っ掻き、やがて動かなくなる……
べ、べン……ゾウ……
「だ、旦那様! 喋っちゃ駄目だ、ベンゾウ殿! 回復薬は、バッグを、早く!」
我に帰るベンゾウが、慌てて駆け寄り、大粒の涙を流す。
無駄だとわかっていた。
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いいんだ…… ふたりとも。
「ご主人様!」
「旦那様!」
俺は、もう死んだみたいだ……最後に別れを言う時間をもらえたよ…… お礼だってさ。
「やだ、ご主人様! 死んじゃやだ!」
「旦那様……」
俺に奇跡が起きて…… この世界で…ふたりに会えて…… 楽しかった……
「ごしゅじんだま……」
3人で、本当に楽しかった…… 毎日が……
「旦那様ぁ……」
でも…俺は……ミルドラと同じ…… この世界にいちゃいけない存在なんだ……
薄々気付いていたのに……
ふたりと別れるのが…… 嫌でな……
ごめんな……
「いや、ダメ、ご主人様!」
弁慶……最後の一撃…… 見事だったぞ……
「旦那…様……」
ベンゾウ……
カッコよかったぞ…… 勇者ベンゾウ……
「だめ…いがないで……」
ホント……お前は、なんでそんなに……
強いんだろうな……
「いやだ… おねがい…… いがないで……」
ごめんな……
わがままに…… 付き合わせて……
俺を…最後……
ひとりにしないでくれて……
ありがと……………
「 ごちゅじんだまぁーーーーー! 」
「 旦那様さまぁーーーーー! 」
弁慶の胸の中、寄り添うベンゾウに抱かれ、惣一郎は静かに役目を終える……
『旦那様、説明なんて求めなくても……
わかってるだろ……』
『ベンゾウが強いのは……
ご主人様の、奴隷だがらだよ……』
「行ったか……」
白い大きな犬が現れ、幸せそうな惣一郎の顔を覗き込む。
「ぐろ…… ごじゅじんだまが……」
見ろ、娘達よ。
空に渦巻く雲が晴れていくだろ……
この男が救ったのだ、お前達を、この世界を。
20年後……
「聞いたか、エルバズの森でダンジョンが溢れたんだってよ!」
「それでこんな街に、冒険者が集まってきてるのか」
昼間から酒を飲み、世間話をする人々。
その酒場の向えに建つギルドでは、冒険者達が集まっていた。
「テネリ! やっと逢えるわ、あの人達と!」
「ああ、このノイタジア王国がまだ、ゼリアオールだった頃、俺たちを救ってくれた英雄が勢揃いするらしいぜ!」
「孤児だった私達を、助けてくれた英雄に会いたくて、冒険者になったんだもんね!」
「し~、始まるぞ!」
階段の上に現れた、白髪の老婆。
「良く集まってくれた冒険者達! 聞いての通りエルバズ大森林で、ダンジョンが溢れた! 今まで諸君が相手にして来た魔物とは大違いだ! 臆するものは立ち去れ!」
「まさか、五賢人のツナマヨ様がおいでとはな」
「あれが、元フジンカガイライのツナマヨ様!」
シワと首元の傷、腰に下げられた刀が、老婆であるはずのツナマヨに、険しい冒険の数々と威厳を表し見せていた。
「まぁ、そう脅かすでない。今回も来てるのであろう? ジビカガイライは」
後ろから現れた、金髪にツノを生やす美女。
「おお! お美しい、女王様だ、ノイタジア王国女王、ビルゲン様だぞ!」
「変わらず若々しい、あれで世界を救ったひとりなんだからな~」
「待ておい! 今ジビカガイライって言わなかったか?」
「来てるのか? あの伝説が……」
ざわ……ざわ……
「ビルゲン女王、ネタバラシを先にしないで頂きたい! 士気に関わる!」
「もう、硬い事言わないでよ! ねぇバオ」
ビルゲンの後ろに立つ、凛とした出立ちのエルフが、ツナマヨに、言っても無駄です!っと、手振りで伝える。
溜め息を吐くツナマヨ。
「冒険者達よ! この度は、大規模な討伐が予想される。したがって、冒険者トップチームにも来てもらった。紹介しよう!」
「ミワ、いよいよだぞ!」
「ええ!」
「まずは、聖母スワロの後継者、光剣のピノ」
「「「 おお! 」」」
銀のフードを目深に被り、銀色の杖を持つ女性。
「おい、フードで顔が良く見えないぞ!」
「バカ、彼女の顔を見た男は、みんな殺されるぞ!」
フン!っと、そっぽを向くピノ。
「次に、癒しの淑女、セシル!」
長身で長い白髪、スタイルのいい女性が、こちらも銀の杖を持って、巨大な白い犬神を連れ現れる。
「ほぉ~ すっごい美人だな!」
「いい寄ったりするなよな! 犬神に食い殺されるぞ!」
「テネリ! あの時のワンちゃんだよ!」
「ああ、背中に乗せて遊んでくれた事、覚えてるかな~」
「そして、トップチーム、ジビカガイライの副長にして大黒柱、黒鉄のベンケイ!」
「「「 おおおお~ 」」」
巨大な戦斧を肩に担ぎ、歳の割に筋肉質な鬼人の女性。
「あれが伝説の…… 赤鬼」
「ああ、歳は40を超えるが、まだまだ現役らしいぞ!」
「ああ~、テネリ、変わらないよ! あの時のまま」
「ああ、あの筋肉で最初は驚いたがな!」
「そして最後、生きる伝説。トップ中のトップ。銀の閃光、勇者ベンゾウ」
「「「「 おおおおおおお!! 」」」」
長い銀髪に露出の多い軽装備。
目を布で覆い、耳をはやす獣人の女性。
「えらい人気だな!」
「当たり前だろ! 世界を救った英雄だぞ!」
「テネリ!」
「ああ、あの人だ……」
「ちっ、目が見えなくて、ホントに戦えるのかよ?」
「バカ!」
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見えないはずだが、顔はしっかりと声を発した冒険者に向けられていた。
「い、いえ、すいません。目が見えなくて大変そうだな~っと……」
「見たいものは見た! 私には耳もある」
「で、でも、やっぱり、もうお歳ですし……」
すると弁慶も前に出て、声を揃える。
「「 女は、四十からだ! 」」
終わり。
ご愛読ありがとうございました。
初めて書く物語を、最後まで書き切る事が出来たのも、皆様の応援とご指導あっての事と深く感謝申し上げます。
続編[異世界で買った奴隷がやっぱ強すぎるので説明求む!]も、引き続きお楽しみ下さい。
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完結おめでとうございます。
読むだけの人間からしたら、それだけでも偉業です。
欲を言えばヤマ場の盛り上がり感が少ないのを課題と感じる一方で、展開の振り幅の広さと全体の構成力は、夜間救急事務受付さんの長所と思ってます。
次回作も読み始めており、そのストーリーだけでなく、作家さんとしての上達と併せて、楽しませて頂きます。
これからも応援しています。
ありがとうございます!
自己満足の拙い作品ですが、引き続き読んでもらえるよう頑張ります!
13章13話と14話内容が一緒なのはなぜですか〜
失礼しました!
修正でごっちゃにw