再会ー男と親友の写真の話ー

キュー

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第四章

助けて…***

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    服をすべて脱がされ、ソファーに横になっている。未だ、身体が動かず声も出ないが、見ることも聞くことも、触られる不快感も感じる。いっそ、意識を失ってたほうがよかったのかも知れない。
「ーっ」
いやだと声をあげようとするが、うめき声がわずかに出ただけ。
「これ、何かわかる?」
男が手に持った避妊具を見せる。
「男相手にも使うって知ってた?ふふふっ」
マック自身、女性を相手にする時は避妊は気を使っていたし、男を相手に使った事もある。誘ってきた年上のネコちゃんは経験豊富だったので、マックに色々教えてくれたし、身近に男性カップルもいるので一通りの知識はある。でも、この男が避妊具ゴムを使う理由はレイたちのそれとは違うと思う。パートナーの為に、ではなく、自己の為だけ…か。
「純情そうに見えても、あんな汚物達と一緒にいたからね。毎日クズどもに突っ込まれて、悦んで腰を振っているのかい?」
男の手が確認するように足を、尻を、撫でていく。
  男は撫でていた手を止め、身体を起こし離れていった。
  薄く肌に馴染む手袋をキュッキュッと音をたてて着ける姿を見ながら、待ち受ける未来を思い、心が追い詰められていく。

  小さい頃から何度も襲われかけた。でも幸運なことに、隙をついてうまく逃げられたり、誰かに気づいてもらえたり、助けがあって毎回未遂に終わっていた。でも…もう、助けは来ない……のかな…

「ー!」
「ふーん。固いね。まだ…だったの?いままで誰にも?…ふふ、僕が初めてかい?…うれしいよ。いいこだ…ご褒美をあげないとね。うん、じっくり解してあげる。この僕が特別に…」
嬉しくて堪らないといった様子でマックを見て笑う。その顔を見たくなくて、目を反らした。
「うっ…」
ローションを馴染ませた指先が、マックのまだ誰にも進入を許していない一点を撫でるように動く度に、嗚咽がもれる。男の指先はゆるゆると円を描き、周囲を行きつ戻りつする。悪寒でガタガタ身体が震え、未知の感覚にビクンビクンと身体が勝手に跳ねる。
  男はマックの顎を持って自分の方に顔を向けさせ、マックの目の前に濡れた人差し指を立てて見せつける。
「ほら…見て今から入れるよ。」
わざわざ見せつけてから……人差し指を当てる。
「…いっぽ~ん…」
あえて、言葉にすることで、尚更恐怖を煽る。
  緊張で固く抵抗するが、ツプっと指が難なく進入する。
「うぅー」
「いいねぇ。まだ抵抗してるね。それ。ぐにぐに。ふふふ。愉しいねぇ…そのキレイな顔が歪む姿に、ゾクゾクするよ。身体中くまなく僕の印をつけてあげる…君はもう、僕のものだよ。感じてる?…ふふ、はい、もっと?…欲しいの?……あげようね。はい、にほ~ん。ん~きついね。きゅうきゅうしめつけてくる。これがそんなに欲しいんだ。いやらしいね。」
  得体の知れない虫が身体の中を蠢く。
……いやだ、いやだ、やめてくれ……
ぎゅっと閉じた瞳から涙が流れた。
「三本~その表情、くるねぇ…もっとだ」
意思とは反して慣らされ、受け入れていく自分が信じられない。指を抜き差しされ刺激にピくついて喘ぐなんて、誘ってるみたいじゃないか!?
……たすけて……
「はは、いいね、いいね。こんなに興奮するのは久しぶりだ。もういいかな…四本目いけるかな…っと。いい表情かおだ!」
…………

  ぎちぎちに張りつめ息もできない。ほんの少しでも身動きすれば弾けてしまいそうだ。もう、少しの抵抗も考えられない。ただ、ただ、この苦しさが早く過ぎ去って欲しい。
  
  一度男の手がずるりと抜かれ、マックの緊張が解かれた。新鮮な空気を求め、大きく吸い込み、一度吐き出す。全身の力が抜けて、浅く息をする。男は立ち上がり、ゆっくり自分の服を脱ぎ始めた。このあと待っているのは……その姿を見ていられずに、目を閉じた。男の気配が近づき口を塞がれた。
「ぅぅぅぅ」
  心は叫ぶが、助けは訪れない。

  抵抗できないまま、男の欲望を身体に刻まれ、貫かれた。固く興奮する男自身と男の嗜虐を煽る容赦のない言葉に身体も精神も犯され続けた。深く、強く突き上げられ、揺さぶられ、快感の伴わない身体の反射で締め付け、達して、声を上げる。達成感も恍惚感もここにはない。ただ、奪うものの快楽のみ。

「う~ん、今日は別の子呼び出すつもりだったんだよ。ほんと予定外。君のせいだよ?君、可愛いからさ。どうしても欲しくなっちゃった。薬…効きやすい体質だったみたい…思ったより強かったみたいだね。ごめんね~」
  マックは全裸で空っぽだった。
  目は開いて、周りを見ているが、放心状態で何も感じない。
  マックを見下ろし、男は自分の服を着こんだ。
「…聞いてる?…連れて帰りたいけど、今日はだめ。僕にも予定があるからね。もっと可愛がってほしかった?…僕はね…もっと…泣いて嫌がる君の声も、気持ちよく喘ぐ声も聴きたかったな。また、会いたいな。」

男が近づきマックの髪をすいた。
「そうだ、帰ったら屋敷を一つ用意しよう。君専用の美しい鳥籠を造るよ。そう、君の綺麗な髪の色、白がいいな…そして、君を迎えに行こう。全身キレイにして、いっぱい愛してあげるから…今度は薬はなしでね。沢山君の中に僕のたっぷりの蜜を放ってあげるよ。君も僕を欲しがるようになる…楽しみだなあ。」
  男は、上着のポケットから、手に収まる大きさの細長いビロード張りの小箱を、取り出した。蓋を開け、宝石の沢山ついたネックレスを取り出して動かないままのマックの首につけた。
「うん、君に似合うよ。準備ができたら迎えに行くからね。すぐだよ。」
かがんで、チュッと口づけた。
「でも、きっと君は嫌がるよね。」
そのまま部屋を出て行った。
 
   
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