仕事やめても……いいですか……?

キュー

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黒の章

黒の子 3

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「甘い匂い……」
「この匂いは……モモスの実!」
「どこだ!?」
三人はモモスの木を見つけ駆け寄った。
「やった!こんなところにあるなんて!」
「クロード!登って!俺がキャッチするから!」
「探しても見つからない幸運の実だ!」
  モモスの実は甘くて最高に旨い果実なのだが、栽培が難しい上、痛みやすく市場に出回らない。特徴のない木は探そうとしても見つけ辛く、モモスの実は下から見上げても見えない上部に、数個程しかつけない。しかも、毎年実をつけるわけではないという気まぐれな木なので、熟した実の香りを頼りに偶然見つけることができたら幸運と言われている。
  そんな珍しいモモスの実を見つけたクロードは興奮して、するすると木に登り下で待つハンスに実を落とそうとした。だが、下が見えないほど葉が繁り、そのまま落とせない。葉の重なりが少なく、ハンスの姿が見える位置まで彼を動かし、そこを目指して放ると、ハンスがキャッチする。見事な連係で幾つものモモスの実を収穫していく。
  果実の収穫にハンスとクロードは集中して、お互いしか目に入っていなかった。五個目の実をキャッチした時、ハンスはベルタの姿が見えなくなっていたことに、気がついた。
「……クロード……ベルタは?」
「ベルタがいない………」
「上から見えない?」
クロードが木の上から目を凝らしぐるりと見るがそれらしい姿は見えない。
「近くに…いないな……」
モモスの木から降りて更に呼び掛けながら周囲を探すが、見つからない。キノコの入った籠が転がっていたのを見つけただけだった。
「どこへ行ったのかな……」
「先に帰った?」
「そんなわけないよ。ベルタはこの森は詳しくないから。」
一人で勝手に帰るとは考えられない。
「どうしよう。」
「困ったな……ん……ハンス、秘密……守れるか?」
「うん。守る。でも、ベルタを見つけられる?」
「…やってみる……」
クロードは目を閉じた。
  意識を集中して、周囲の気を探る。こっそり何度も練習して、ホアンやハンスは簡単に探せるようになっていた。ただ、ベルタにマークをつけたことないので、時間がかかった。見つけたと思ったら、小動物だった。網にかかる気を一つ一つ探るが中々見つからない。すると、近くに何かを見つけた。
「……近くに狼がいる……移動してる…」
「そんな!ベルタは?」
「待って……ベルタを見つけた……どうしよう。狼の近くにいる。」
「ベルタが食べられちゃう……」
「森の外に誰かいる。」
泣きそうになっていたハンスが、今気付いたように真剣な顔になった。
「……クロード…何で?何でそんな事分かるの?」
  
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