仕事やめても……いいですか……?

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黒の国の王子

+王宮騎士物語 第62話 手紙

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  クレッセリアの家で彼女が帰るのを待って、一年が過ぎた。
「サーバス、朝食だ。今日は畑を頼むな。」
ここに来た時は、すぐに会えると思っていた。だが、帰る気配も何の便りもない。彼女の身内でこの家の主ハアンゼンは始めの頃こそ、サーバスを客人として丁寧に扱っていたが、王族にしては緩い態度のサーバスに慣れ、サーバスも退屈しのぎに、仕事を手伝い始め、そのうちに呼び捨てが定着した。完全に同居人扱いである。
「わかった。ハーンは?」
「村に用事があって、行ってくる。」
「じゃあ、手紙を…」
「ああ。」
サーバスはここに来る前に、何でも屋にクレッセリアの捜索依頼を出してきた。その定期報告の手紙が届いていたら、受け取ってきてもらうのだ。田舎の端には頻繁に訪れる商人はいない。季節ごとに来る行商隊くらいで、個人宛の手紙や荷物は不定期に来る旅商人に言付けられたり、村人が街へ出掛ける時に預り所に寄り、運んでくれたりする。

サーバスが田舎のクレッセリアの家に居座っている間に、クレッセリアは子どもを出産し、ハマーとブリジットにマリーを預け、どこかへ去った。
「手紙来てたぞ。」
それは、望みの便りではなく、友人からの出産の知らせだった。彼らにもクレッセリアを見かけたら教えてくれるように伝えてあった。
「ありがとう……おお、ハマーからだ。」
「いい知らせか?」
手紙を読みながら、嬉しそうなサーバスを見て声を掛ける。
「ああ。友人に子どもが生まれた。」
それを聞いてハアンゼンが真面目な顔になった。
「サーバス、そろそろ帰った方がいい。君は、クレッセリアに避けられてる。」
クレッセリアはサーバスがここにいることを知っているのだろうか。サーバスが居るから、便りも寄越さないと。
「それは、クレッセリアは私に会いたくないと…」
「うん。きっと、ここに君が居るから帰らないんだ。こんなに長く連絡が来ないことはなかったからね。」
サーバスはその言葉を聞いて、頭を抱えた。
「ならば、私がここを出れば帰って来ると?」
「たぶんね。」
はっきり言われてしまった。
「そうか、ここで会えるまで待つつもりだったが、一度帰ることにするよ。彼女に伝言を頼む。」
サーバスは王都に帰る決心をした。
ハアンゼンはそれがいいと頷いた。

  それと同じ頃、フォムボトムにクレッセリアの出身地の情報が届いた。

「美女に、会いに行くぞ。」





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