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第八章 王妃
7 狂気 **暴力シーンあり
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廊下では、フレアが無表情な顔で立っていた。予定されていた王子の側付きの面接も終え、宰相に呼ばれて場を離れた隙に、アカリと侯爵が消えた。沢山ある客室の何処にいるのかも彼には、わかっている。彼がここにいるのには、理由がある。ここにいなくてはならない。これからやって来る嵐を待つ役目がある。
女の狂気の声が遠くでした。
来た。
フレアは目を閉じた。亡くなってしまった、大切な人達を思い出すだけで、簡単に泣くことができる。彼はポロポロと涙を流し、悲しげな表情をみせた。
「いやあ!助けて!」
メイドの一際大きな叫び声が廊下中に響いた。
それが合図だ。
「あっ……やめて下さい…レーデン侯爵……お願いです………」
「そうやって煽るのも、手順の一部なのか?」
「違う……」
ベッドの上で押さえつけられながらも、イヤイヤと首を振る。
「………」
廊下で女の叫ぶ声がした。それを聞くと急にアカリはレーデン侯爵の首に手を回した。
「何だ?悲鳴?」
すぐ近くだ。
一瞬悲鳴に気をとられたが、アカリが自分の首に手を回し抱き付いてきた事に喜び、興奮し、悲鳴のことはすぐに頭から離れた。部屋には鍵をかけてある。大丈夫だ。
「アカリ、服を脱がすよ。いいね。」
アカリは黙ったままで、嫌がる素振りはない。ボタンを外す……それすらも煩わしい。レーデン侯爵はアカリの衣服を脱がしに掛かる。
「待って……」
アカリがつぶやき、その華奢な指が侯爵の手を止める。そして、自ら侯爵の服を脱がし始めた。その行動に驚いたが、侯爵はされるがままになった。
もう一度女の悲鳴が聞こえた。
途中で服を脱がす手を止めたアカリは侯爵を見つめ微笑む。
「侯爵様。キスを。」
着ていた服は乱れて、まだ肌にまとったままの二人は口を寄せ、ベッドの上で膝立ちのまま抱き合いキスをする。
廊下にはメイドの悲鳴が響いた。
「お前がフレアか!」
「王妃様。どうか、お待ち下さい。」
王妃の進路をふさぎ押し止める。彼女の手に持ったハサミが、メイドに向けられているのが視界に入る。
こんな無礼をして、只ではすまないが、今は気にしていられない。
「退きなさい!どの部屋にいるの?」
「申し訳ありません、お許し下さい。」
「言いなさい!」
「お許し下さい。」
「…フレアごめん……助けて……」
王妃にハサミを突き付けられ、メイドが震える声で助けを乞う。メイドとフレアの目が合った。
「教えますから、彼女を離して下さい。」
ゆっくりと腕を上げ指を指す。
メイドを掴む手が緩んだ。その隙に、彼女は王妃から離れる。
「あの部屋ね。」
「王妃様!お待ち下さい!」
フレアは王妃と扉の間に立ち、手を広げて邪魔をする。
「退きなさいったら!」
ハサミを持った手を振り回した王妃がフレアの手と顔を傷つけた。
「ああ!」
「きゃああああ!フレア!」
メイドの悲鳴。顔を押さえ、後退り、後ろの扉に背中を打ち付けた。王妃は、目的の部屋の扉を開くためフレアを横に払おうとする。最後まで扉を守ろうとしたのか、フレアの手がのびた。彼の手は扉の取っ手に引っ掛かり、不運にも、鍵のかかっていない扉がガチャリと開いた。
「!」
部屋に入った王妃が見たものは……
抱き合うレーデン侯爵とアカリ。
「シュウ!」
その声に、信じられないという顔のレーデン侯爵が振り向いた。
続いて、フレアも部屋に入った。その光景に崩れ落ちる。
「お、王妃様!どうしてここに……」
王妃の姿を見つけ、すぐにフレアの顔を見た。
フレアの顔と手には切りつけられた傷。ボタボタと滴り落ちる血を見てギョっと目を開く。
「フレア?その傷…」
大股でベッドに近づく王妃。
「この!」
王妃は腕を振り上げ、手に持ったハサミをアカリめがけて振り下ろす。
「うわあああああ!」
侯爵の目の前で王妃の持つハサミがアカリの白い肌を切り裂き、赤く染まる。
「あ、あ、あ…………」
レーデン侯爵が驚いてアカリから手を離そうとするが、アカリは逆に侯爵にしがみつく。王妃は言葉にならない叫び声を上げ、再び腕を振り上げる。
「やめろ!やめてくれ!」
必死で叫ぶ侯爵を王妃が冷たい目で見下ろす。
「シュウ、あなたも!グレイと同じ!」
今度は王妃が侯爵目掛けて腕を振り下ろす。
「ああああ、やめろ!」
「愛してたのに!」
「やああああ!」
「オマエも!オマエも!」
再び腕を振り上げる。
あとは…もう…
正気をなくし、呟く王妃は駆けつけた騎士や衛兵によって拘束されるまで、アカリやレーデン侯爵、そして、止めに入ろうとしたフレアを……ハサミで、突き刺し続けた。
女の狂気の声が遠くでした。
来た。
フレアは目を閉じた。亡くなってしまった、大切な人達を思い出すだけで、簡単に泣くことができる。彼はポロポロと涙を流し、悲しげな表情をみせた。
「いやあ!助けて!」
メイドの一際大きな叫び声が廊下中に響いた。
それが合図だ。
「あっ……やめて下さい…レーデン侯爵……お願いです………」
「そうやって煽るのも、手順の一部なのか?」
「違う……」
ベッドの上で押さえつけられながらも、イヤイヤと首を振る。
「………」
廊下で女の叫ぶ声がした。それを聞くと急にアカリはレーデン侯爵の首に手を回した。
「何だ?悲鳴?」
すぐ近くだ。
一瞬悲鳴に気をとられたが、アカリが自分の首に手を回し抱き付いてきた事に喜び、興奮し、悲鳴のことはすぐに頭から離れた。部屋には鍵をかけてある。大丈夫だ。
「アカリ、服を脱がすよ。いいね。」
アカリは黙ったままで、嫌がる素振りはない。ボタンを外す……それすらも煩わしい。レーデン侯爵はアカリの衣服を脱がしに掛かる。
「待って……」
アカリがつぶやき、その華奢な指が侯爵の手を止める。そして、自ら侯爵の服を脱がし始めた。その行動に驚いたが、侯爵はされるがままになった。
もう一度女の悲鳴が聞こえた。
途中で服を脱がす手を止めたアカリは侯爵を見つめ微笑む。
「侯爵様。キスを。」
着ていた服は乱れて、まだ肌にまとったままの二人は口を寄せ、ベッドの上で膝立ちのまま抱き合いキスをする。
廊下にはメイドの悲鳴が響いた。
「お前がフレアか!」
「王妃様。どうか、お待ち下さい。」
王妃の進路をふさぎ押し止める。彼女の手に持ったハサミが、メイドに向けられているのが視界に入る。
こんな無礼をして、只ではすまないが、今は気にしていられない。
「退きなさい!どの部屋にいるの?」
「申し訳ありません、お許し下さい。」
「言いなさい!」
「お許し下さい。」
「…フレアごめん……助けて……」
王妃にハサミを突き付けられ、メイドが震える声で助けを乞う。メイドとフレアの目が合った。
「教えますから、彼女を離して下さい。」
ゆっくりと腕を上げ指を指す。
メイドを掴む手が緩んだ。その隙に、彼女は王妃から離れる。
「あの部屋ね。」
「王妃様!お待ち下さい!」
フレアは王妃と扉の間に立ち、手を広げて邪魔をする。
「退きなさいったら!」
ハサミを持った手を振り回した王妃がフレアの手と顔を傷つけた。
「ああ!」
「きゃああああ!フレア!」
メイドの悲鳴。顔を押さえ、後退り、後ろの扉に背中を打ち付けた。王妃は、目的の部屋の扉を開くためフレアを横に払おうとする。最後まで扉を守ろうとしたのか、フレアの手がのびた。彼の手は扉の取っ手に引っ掛かり、不運にも、鍵のかかっていない扉がガチャリと開いた。
「!」
部屋に入った王妃が見たものは……
抱き合うレーデン侯爵とアカリ。
「シュウ!」
その声に、信じられないという顔のレーデン侯爵が振り向いた。
続いて、フレアも部屋に入った。その光景に崩れ落ちる。
「お、王妃様!どうしてここに……」
王妃の姿を見つけ、すぐにフレアの顔を見た。
フレアの顔と手には切りつけられた傷。ボタボタと滴り落ちる血を見てギョっと目を開く。
「フレア?その傷…」
大股でベッドに近づく王妃。
「この!」
王妃は腕を振り上げ、手に持ったハサミをアカリめがけて振り下ろす。
「うわあああああ!」
侯爵の目の前で王妃の持つハサミがアカリの白い肌を切り裂き、赤く染まる。
「あ、あ、あ…………」
レーデン侯爵が驚いてアカリから手を離そうとするが、アカリは逆に侯爵にしがみつく。王妃は言葉にならない叫び声を上げ、再び腕を振り上げる。
「やめろ!やめてくれ!」
必死で叫ぶ侯爵を王妃が冷たい目で見下ろす。
「シュウ、あなたも!グレイと同じ!」
今度は王妃が侯爵目掛けて腕を振り下ろす。
「ああああ、やめろ!」
「愛してたのに!」
「やああああ!」
「オマエも!オマエも!」
再び腕を振り上げる。
あとは…もう…
正気をなくし、呟く王妃は駆けつけた騎士や衛兵によって拘束されるまで、アカリやレーデン侯爵、そして、止めに入ろうとしたフレアを……ハサミで、突き刺し続けた。
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