結婚ー彼女と再会するまでの男の長い話ー

キュー

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第八章 王妃

9 アカリの大切な人

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「アカリ、話せるか?」
「宰相様。」
  王宮の中の特別な部屋。誰も立ち入ることのできない特別な場所にアカリとフレアはいた。
  命に別状はないが、身体中に受けた傷のため、自由に動く事が出来ず、各々の部屋で治療をうけていた。
「アカリ、大変無理をさせたな。すまなかった。」
「いえ、危険を承知で、私の意志で計画に参加したのです。私は満足ですよ。それより、フレアの傷はどうですか。」
「フレアの傷は深くはないが、かわいそうに、顔に傷が残る。」
「そうですか。彼も覚悟の上の事ですが、そうですか、顔に……」
「晴れやかな顔で、早く君に会いたいと言っていた。君が良ければすぐにでも会えるよ。」
「ええ。会いたいです。動けるようになったら、彼の故郷へ帰してやってください。姉と弟がいるとか。」
「ああ、大丈夫。心配しなくていい。君はどうするのか?」
「………そうですね。私には、何も……なくなってしまいましたから。」 
「ゆっくり、考えるといい。まずは身体を治して。」
「はい。ありがとうございます。」
「礼を言うのは、私の方だ。」
イグナートが言うと、アカリは笑った。
  奴隷商から買われたフレアと違って、アカリは望んでグレイの側にいたのだ。グレイの死の理由が病の為なのか、暗殺なのか、今もわかっていない。ただ、その死の数日前に王妃が何度かグレイの元を訪れている。アカリはその間グレイの側を離れていた。その事を後悔している。王妃とグレイの間で何があったのか、誰も知らない。直接死の原因になったかもしれない王妃との時間。アカリは同席するべきだったと後悔している。たとえ、王妃の怒りを買っても、グレイの側を離れてはいけなかった。
「王妃様はどうされましたか?」
「精神的に不安定で、療養の名目で、王都を離れた。厳重な監視下にある。もう、ここには戻らない。」
「そうですか。アーグ殿下も、意識が戻らないままなんですね?」
「ああ。医師達は手を尽くしてくれているが、現状では……」
「……そうですね。行くところも帰るところもないこの身ですし、アーグ殿下のお世話係りにでも加えてもらいましょうか。」
「いいのか?ここを離れて、自由に生きる選択もあるぞ?」
「いいえ、私はグレイにこの命を捧げました。」
「今は、身体を治すことに、専念しろ。すべては、それからだ。」
「はい。」
「また、来る。もう少し、眠れ。」
アカリは目を閉じた。眠ろうとするが、グレイの笑う姿が浮かび、後から後から、思い出が浮かんでくる。涙がこぼれた。

………キース…さ…ま……

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