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第十章兄弟
7今日の仕事
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「やあ、また会ったね。どうしたの?怪我しているね。」
こいつに関わったから、殴られたんだ。もう、関わるまい。そう、考えて、素通りした。気まぐれな貴族様だから、すぐに忘れるさ。
「待ってよ。」
いきなり右手を引っ張られた。
慌てた様子で髪を乱して覗き込むのはオレオ。
「追いかけてきたのか?」
驚いた。貴族が?自分で?走って?そんなことあるわけない。変な奴。
「待って。」
肩で息する彼の顔を見上げた俺は、捕まれた手を振り払う。
「ひどい顔だよ。」
「昨日……殴られたんだよ。泥棒したと、思われて。だから、もう、お前の相手はしない。」
「そうか、それは私の考えが至らなかったね。」
「今日も、時間ないから。」
「それなら、大丈夫。連絡しておくから。」
オレオの後ろに来ていた大きな男がお辞儀をしてどこかへ行った。オレオは何も言わなかったよね?
「?」
「今日は、私と過ごすのが、君の仕事だよ。」
「知らねぇよ。俺は荷運びに行くんだ。」
「じゃあ、行ってごらんよ。今日は帰りなさいって言われるからさ。そうしたらね、ここに戻っておいで。私は待ってるから。」
俺は急いで仕事先に向かった。今日はギリギリ、間に合ったはず。だが……
追い返された。今日は仕事がないって?働かないと…アイツのせいか?何か俺の邪魔するのが楽しいのか?くそっ!文句言ってやる!
いつもオレオがいる、オープンカフェへ急いだ。
「お帰り。どうだった?」
涼しい顔で話し掛けてくる。俺は黙って、店員が引いた椅子に座る。
「教会にも、今日はちゃんと連絡したからね。大丈夫だよ。」
ニコニコしながらオレオは目の前にあった焼き菓子を俺の目の前に置いた。
「仕事内容は?伽の相手?」
教会の三つ年上の子が…貴族の伽の相手をさせられたけど、気に入ってくれたからチップを弾んでくれた…と言っていた。よくわからないけど、貴族相手の仕事らしい。伽ってなんだろう?
「おやおや、見た目より君は大人なんだね。……君が希望するなら、お付き合いするがね…私は君と話がしたいだけだよ。だから、それが今日の仕事。」
「わかったよ。」
話し相手なら、カンタンだ。でも、教会に連絡がいってるなら、また取り上げられてしまうよな……
「明日もね。」
「………わかったよ。」
「そうだ、君さえ良ければ、君を引き取ろうか。使用人か……執事の養子か……手に職つけたいなら庭師の助手でもなるかい?」
何?今、何て言った?養子?教会から出ることができる?……いずれ誰かに売られるなら、目の前の男でも、かまわない。だけど、ルーを残して俺だけが行くわけには……
「……」
俺はすぐに返事ができず、考え込んでいた。
「すぐには決められない何かがあるんだね。」
探るように目を覗き込まれ、ぎゅっと目を瞑る。
「………一人だけ行くわけには?」
考えていることを見透かされた?なぜ?もしかしてルーの事を知ってる?
「教会で君の弟のことを聞いたよ。」
やっぱり、知ってるんだ。全部承知の上で、こんな事を言っているんだ。
「ルーと一緒なら。」
もう、目の前の貴族様に、オレオ様に、すがるしかない。
「どうしようかな。弟君には興味無いんだよね。」
その一言に胸がきゅっと苦しくなった。やっぱり、無理だ。もうこれ以上言えない。二人一緒に……何てむしがよすぎる。
「俺は教会に残る……ルーは、俺がいないと死んじゃうから。教会なんかに置いとけない。邪魔者は誰も助けてくれやしない。俺が……俺が……」
「そうだね、君は弟を見殺しにはできないね。君が私の言うことを聞いてくれるなら、君の大切な弟を引き取ってもいいよ。」
そんなことを望んでもいいのかな?
「本当に!?」
「うん。本当。」
「俺!何でもするから!何でも言うこときくから。ああ!ルーと離れずにすむ!」
喜びの声を上げた俺に、冷水を浴びるような冷たい一言が掛けられた。
「君達は一緒には住めないよ。」
「え?」
え?一緒に、引き取るって言ったよね?
「弟君の病気は重い。屋敷で治療はできないからね、遠い、療養所に入ってもらう。元気になるまで、会えないよ。」
「そんな……」
「死んでもいいなら、屋敷の離れに閉じ込めておくけど。」
「ルー……が元気に……なるなら……医者に診てもらえるなら……」
教会にこのままいたら、ルーは死んでしまうだろう。しばらく会えなくなるかもしれないけれど、ルーが元気になるのなら、俺は待てるし、何でもできる。オレオの言う通りにする。
「決まりだね。」
教会に沢山の寄付があり、俺とルーは引き取られた。俺はテオ・ドールの名前をもらい、彼の屋敷の専属庭師の養子となり、助手として働く。学校にも通わせてもらえることになった。弟のルーもルーカ・ティオの名前をもらい、執事の形だけの養子となり、遠くの療養所に入った。手紙が時々届く。字が書けないので、代筆だけど、毎日の出来事を知らせてくれる。俺はまだ、文字が読めないけど、執事さんに読んでもらってるんだ。学校に行って、頑張って早く自分で読めるようになろう。手紙も自分で書けるようになりたい。
オレオに会えて本当に良かった。感謝している。早く、ルーには元気になってほしい。そうしたらまた一緒に住める日が来る!
こいつに関わったから、殴られたんだ。もう、関わるまい。そう、考えて、素通りした。気まぐれな貴族様だから、すぐに忘れるさ。
「待ってよ。」
いきなり右手を引っ張られた。
慌てた様子で髪を乱して覗き込むのはオレオ。
「追いかけてきたのか?」
驚いた。貴族が?自分で?走って?そんなことあるわけない。変な奴。
「待って。」
肩で息する彼の顔を見上げた俺は、捕まれた手を振り払う。
「ひどい顔だよ。」
「昨日……殴られたんだよ。泥棒したと、思われて。だから、もう、お前の相手はしない。」
「そうか、それは私の考えが至らなかったね。」
「今日も、時間ないから。」
「それなら、大丈夫。連絡しておくから。」
オレオの後ろに来ていた大きな男がお辞儀をしてどこかへ行った。オレオは何も言わなかったよね?
「?」
「今日は、私と過ごすのが、君の仕事だよ。」
「知らねぇよ。俺は荷運びに行くんだ。」
「じゃあ、行ってごらんよ。今日は帰りなさいって言われるからさ。そうしたらね、ここに戻っておいで。私は待ってるから。」
俺は急いで仕事先に向かった。今日はギリギリ、間に合ったはず。だが……
追い返された。今日は仕事がないって?働かないと…アイツのせいか?何か俺の邪魔するのが楽しいのか?くそっ!文句言ってやる!
いつもオレオがいる、オープンカフェへ急いだ。
「お帰り。どうだった?」
涼しい顔で話し掛けてくる。俺は黙って、店員が引いた椅子に座る。
「教会にも、今日はちゃんと連絡したからね。大丈夫だよ。」
ニコニコしながらオレオは目の前にあった焼き菓子を俺の目の前に置いた。
「仕事内容は?伽の相手?」
教会の三つ年上の子が…貴族の伽の相手をさせられたけど、気に入ってくれたからチップを弾んでくれた…と言っていた。よくわからないけど、貴族相手の仕事らしい。伽ってなんだろう?
「おやおや、見た目より君は大人なんだね。……君が希望するなら、お付き合いするがね…私は君と話がしたいだけだよ。だから、それが今日の仕事。」
「わかったよ。」
話し相手なら、カンタンだ。でも、教会に連絡がいってるなら、また取り上げられてしまうよな……
「明日もね。」
「………わかったよ。」
「そうだ、君さえ良ければ、君を引き取ろうか。使用人か……執事の養子か……手に職つけたいなら庭師の助手でもなるかい?」
何?今、何て言った?養子?教会から出ることができる?……いずれ誰かに売られるなら、目の前の男でも、かまわない。だけど、ルーを残して俺だけが行くわけには……
「……」
俺はすぐに返事ができず、考え込んでいた。
「すぐには決められない何かがあるんだね。」
探るように目を覗き込まれ、ぎゅっと目を瞑る。
「………一人だけ行くわけには?」
考えていることを見透かされた?なぜ?もしかしてルーの事を知ってる?
「教会で君の弟のことを聞いたよ。」
やっぱり、知ってるんだ。全部承知の上で、こんな事を言っているんだ。
「ルーと一緒なら。」
もう、目の前の貴族様に、オレオ様に、すがるしかない。
「どうしようかな。弟君には興味無いんだよね。」
その一言に胸がきゅっと苦しくなった。やっぱり、無理だ。もうこれ以上言えない。二人一緒に……何てむしがよすぎる。
「俺は教会に残る……ルーは、俺がいないと死んじゃうから。教会なんかに置いとけない。邪魔者は誰も助けてくれやしない。俺が……俺が……」
「そうだね、君は弟を見殺しにはできないね。君が私の言うことを聞いてくれるなら、君の大切な弟を引き取ってもいいよ。」
そんなことを望んでもいいのかな?
「本当に!?」
「うん。本当。」
「俺!何でもするから!何でも言うこときくから。ああ!ルーと離れずにすむ!」
喜びの声を上げた俺に、冷水を浴びるような冷たい一言が掛けられた。
「君達は一緒には住めないよ。」
「え?」
え?一緒に、引き取るって言ったよね?
「弟君の病気は重い。屋敷で治療はできないからね、遠い、療養所に入ってもらう。元気になるまで、会えないよ。」
「そんな……」
「死んでもいいなら、屋敷の離れに閉じ込めておくけど。」
「ルー……が元気に……なるなら……医者に診てもらえるなら……」
教会にこのままいたら、ルーは死んでしまうだろう。しばらく会えなくなるかもしれないけれど、ルーが元気になるのなら、俺は待てるし、何でもできる。オレオの言う通りにする。
「決まりだね。」
教会に沢山の寄付があり、俺とルーは引き取られた。俺はテオ・ドールの名前をもらい、彼の屋敷の専属庭師の養子となり、助手として働く。学校にも通わせてもらえることになった。弟のルーもルーカ・ティオの名前をもらい、執事の形だけの養子となり、遠くの療養所に入った。手紙が時々届く。字が書けないので、代筆だけど、毎日の出来事を知らせてくれる。俺はまだ、文字が読めないけど、執事さんに読んでもらってるんだ。学校に行って、頑張って早く自分で読めるようになろう。手紙も自分で書けるようになりたい。
オレオに会えて本当に良かった。感謝している。早く、ルーには元気になってほしい。そうしたらまた一緒に住める日が来る!
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