結婚ー彼女と再会するまでの男の長い話ー

キュー

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おまけの話

アカリ……連れ出した人……**暴力(連想)表現あり

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………キースさま?………

  初めて会ったキース殿下は若獅子のように力に溢れ、手を引かれて側に座ると、花の香りがふわりと漂った。
「君がアカリだね。」
「はい。殿下。」
「君はこれから、たくさんの事を学ぶのだ。そして、きみが希望すれば何でもかなう。」
「何でも?」
「何でもだ。」
「でも、なりたいものも、欲しいものも、ないから。」
「そうか。なら、一緒にに探してみよう。」
「見つかるかな。」
「大丈夫。」
キース殿下の手は温かく、頭を優しく撫でられ、目を閉じた。導かれるまま身体を預ける。殿下の声は心地好い。俺は気持ち良くなり、殿下の膝に頭を乗せたまま眠ってしまった。

          ◆          ◆          ◆

  俺は、煙草の匂い漂う薄暗い部屋の中にいた。

「アカリ。」
金のかかった衣装に、口髭、貴族か成金か。名前、聞いた気がするが、覚えていない。アカリにはどうでもいいことだ。どんな相手でも、することは同じ。組伏せられ、好きなように身体を遊ばれ、犯されるだけだ。
「お前を身受けしたいのだが、どうかね?ワシの所にこないかね?」
「その手の話は何度もあったよ。親方が手離さない。無理だよ。」
「そうかね。お前はここから出たくないのか?親方が満足するだけの金を出すぞ?」
「親方に言ってみたら?俺はどこでも誰でもヤること一緒だから、どうでもいいよ。」
俺は全裸の身体をベッドの上で広げて、男を見上げた。
  ごくりと男の喉が鳴る。
「……欲しいぞ。ワシの…ワシだけのモノにしたい……その細い足に…手に…首に……鎖をつないで……閉じ込めて……」
男は鎖のついた皮のベルトを俺の首に巻き始めた。小さな鈴の付いた金持ちのペットが付けるような少し装飾の付いたやつだ。動く度にリンと鈴の音が鳴る。その小さな音が鬱陶しい。
……ああ、嫌だ……後で親方に、絶対嫌だと言っておこう。こんな監禁趣味の奴ごめんだよ………
  鎖で繋がれ、引っ張られた。手足を付き、床に引きずり降ろされた。男はゆったりとしたワンピース状の服の裾を持ち上げなにもつけていない下半身を露出させた。
「さあ、こちらに来て、舐めろ。」
のろのろと手足を動かし男の前まで近寄った。舌を見せて、首を傾げる。その仕草に男の興奮が高まるのを感じる。
……早く終われ……俺も……終わればいいのに………
だが、自分で命を絶つのは怖くてできない。
……誰か殺してくれないかな………

  俺の記憶はこの娼館から始まる。まだ乳飲み子の頃に、連れてこられたらしいが、ここに来た時の事を俺は覚えていない。十年ほど前らしいから、今は十一歳か十二歳だろう。父や母の記憶はない。どこに住んでいたのかも知らない。でも、ここで産まれた訳ではない。
  娼館で俺のように小さな子どもを奴隷商人から購入することは普通はない。そりゃそうだろう。育児の手間を考えれば、客が取れる年齢の奴隷を買った方がいい。だが、俺は特別だったらしい。俺は希少種なんだそうだ。育児の手間と金をかけてでも、相場より高い値がつけられても、それに見合う……いや、勝る利益が見込まれる希少種。
  買われた俺は、生まれたばかりの娼婦の子どもと一緒に寮で育てられた。その頃の記憶は温かく優しい。俺の宝物だ。乳兄弟とともに、日々裏方の仕事を手伝い、休憩中の娼婦達には構われ、可愛がられ、菓子をもらうこともあった。乳兄弟や他の子ども達と空き時間には一緒に遊んだ。だが、そんな生活も数年で終わり、俺だけ乳兄弟と離され、娼館に連れてこられた。

  まだ精通もしていない幼い俺を幼児趣味の客は身体中触り、舐める。何をされているのか全くわからず、ただ気持ち悪さと恐怖にボロボロ涙がこぼれた。大声を出したり、抵抗したりすると尻を叩かれ、食事を抜かれるので我慢するしかなかった。客が帰り、自分のベッドに潜り込んで、乳兄弟の顔を思いだし、泣きながら眠りについた。
  幾つの時か忘れたが、精通すると少年趣味の男に身体を弄ばれ、性行為を強制された。嫌がったり、助けてと懇願すると余計に興奮した相手に失神するまで犯された。 いや、失神してからもしばらく犯され続けたらしい。あまりの乱暴な行為に親方が止めに入ったらしい。親方も金払いのいい客には甘いので、入るのが少し遅れた。早く止めてくれればいいのに……あの時は壊れる寸前だったようだ。俺は失神したままだったから、気が付くと手当てをされてベッドの中で、しばらく動けなかった。女の客もいた……複数の男を相手にしたこともある。商品として使えなくなるような遊び方をする問題のある奴はあらかじめ親方が断っていたようで、酷い怪我を追うことはなかった。だからといって、親方に感謝なんてしない。俺の両親を殺して奴隷商人に売った人さらいと、ここに俺を連れてきた奴隷商人に俺を抱かせたんだから。
  金を出す奴なら、どんな悪人でもお客様かよ………人を殺して子どもをさらう奴、子どもを売る奴、子どもを抱かせる奴、誰が一番酷い奴だろうな……
  奴隷商人は、こんなに良い穴に育つなら、手放さなければ良かったって言った。どうせ、育てる気なんか無かったくせに。ははは。
  人さらいは、両親をどうやって殺したか………母がどんな風に無様に命乞いしたとか、父が助かりたくて子どもを差し出したとか、ナイフを突き刺す瞬間どんなに興奮したか語りながら、犯すんだぜ?もう、どうでもいいや。両親は死んだ。俺が泣いても、怒っても、奴が喜ぶだけだから。声も上げず、黙って抱かれてやった。俺も殺してくれればよかったのに。
  ああ、一見物腰の柔らかな上品な紳士に殺されかけたことがあった。驚いたよ、監視されてるのをその時知った。危なくなったら、助けが入ってね。のぞき穴で見てるんだ。小金取って、客にちょい見せしているんだってね。この子いいでしょう?次は買ってね?って感じさ。そして商品だから壊されないよう誰かが監視している。ついでに抜いてるってさ。そんな奴ばかり。

  ある日俺が目覚めたら、館の中が騒がしかった。部屋を出てどうしたのか聞こうと親方の部屋に向かうと、大きな背中が見えた。
「誰?」
  振り返った人は今まで見た人にはない、明るい世界の人。白い、格好いい服に、腰には剣を下げている。同じように剣を持つ前に見たお客の兵士とは全然違う。
「君は………?」
「アカリ。」
「一緒に来るか?」
「うん。行く。行っていいの?」
「ああ、君をここに売った奴隷商が捕まった。ここでも不当に働かされていたんだろう?法律が新しくなって、ここにも指導が入った。娼館で未成年を働かせる事は禁止となったんだ。もう、大丈夫。君は自由の身になったんだよ。」
「よくわかんないや、新しいご主人様。連れて行って、……ください。」
「ご主人様じゃないんだけどね、後でゆっくり説明しようね。おいで。」
  俺は手を引かれて、外へ出た。
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