結婚ー彼女と再会するまでの男の長い話ー

キュー

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第五章

2 懐中時計

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  俺の希望が通り、アーネス王子の護衛の任務に就くことになった。王宮で過ごす毎日。癒される~。護衛というか、遊び相手というか………
「そーにぃ」
名前を呼んでくれるようになった。おやつタイムには隣に座れと「こーこ!」と椅子をぺしぺし。か~わ~い~い~。
  今日は庭園の散歩道を通って、四阿あずまやにマック・レディがおやつを運んできた。
「ソニーさんもどうぞ。」
「まーくこれなに?」
あら、まーくって呼ばれてるののね。
「リンゴです。」 
「りんご、あかくないよ。」
「食べたら、りんごの味がしますよ。」
「うん。おいしい。」
ゆるやかな時間が流れて、いいなあ~
「それなに?」
アーネスがマックの胸ポケットから出ている鎖を指差した。
「ああ、これですか」
するりと引き出したのは懐中時計。こまかな細工、鳥と花の模様。傷だらけだが、間違いない。
「あっ」
思わず声が出た。ファータの時計だ。
「時計です。」
マックが時計を王子に見せた。
「……」 
俺の視線に気づいたマックが微笑んで、俺の顔を見た。
「ソニーさん、どうぞ、ご覧ください。」
俺の手に懐中時計を押し付けてきた。
「これも…」
えっ?ハンカチ?
「お使い下さい。」
俺?なにか? 
  白いハンカチを渡された。手にしたそれ懐中時計を見おろすと水がボタリボタリと落ちた。
「?」
顔に手をやると、濡れていた。あ、俺泣いていた。だめだな、ファータのことを考えると感情の制御機能が壊れて泣き虫になっちまうみたいだ。
「そーにぃ、いたい?」
2歳に心配されちまったよ。ハンカチで涙をふいて、笑った。
「ちょっと胸が痛かったけど、もう大丈夫。」
マックはずっと、黙って、俺と懐中時計を見ていた。なぜか少し嬉しそうだ。
「懐中時計ですね。ずいぶん古そうだ」
「両親の形見なんですよ。」
  愛しげに懐中時計を見つめる。
  俺の手の中に帰ってきたそれ。おや、鎖が変わっている……細かい細工の鎖は初めて見るデザインで、鎖の一つ一つが見ようによっては文字のようにも見えなくはない。しかし、見たところ規則性はなさそうで、言葉にはならない。時計の細工に変わったところはなく、蓋を開けて内の彼女の名前があった場所を指でなぞった。そこには引っ掻きキズがあるだけだが、俺には思い出せる。声が出そうだった……必死でこらえた。
  マックに時計を返し、ハンカチは洗って返すと伝えた。おやつの時間は終わり、マックは戻って行った。
「アーネスさま、そろそろお部屋へもどりましょう。」
  そこへあわてて侍女が知らせをもってきた。
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