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魔力は枯渇寸前
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一年を通して雪がある山って、どのくらいの高さにすればいいんだろう。
雪のある山を作ると言っても、とんと想像がつきません。
「高ければいいか!(だからその高さが問題だって)」
ここは余計な力を使わぬ方が賢明だろうけど、言った言葉には責任を持たねばと考えるエレオノーラです。
「たーかく、たーかく、たーかくなーれぇ」
歌うように唱えるおまじないに合わせるように、徐々に盛り上がっていく山。
まるで子供の頃の砂遊びのようで楽しい。
あとで植物を生やすのは二度手間かもと思い、大きくなっていく山に、順次植物の芽を生やしていく。
「雪が積もると言う事は寒いって事だよね。寒さに強い植物って何だろう?…う~分らん!とにかく寒さに強い植物にな~れ!」
何ともいいかげんだが、いちいち調べてたら切りが無いからね。
植物さん頑張ってください。
植物を纏いながら高く成長していく山。
そうか、山が高くなると言う事は、その裾野も広がると言う事か。
山だけに集中していたのに、結局広範囲に開拓できて、得した気分だ。
うん、この調子でどんどん行こう。
「あ~~疲れた……。一休みしてもいいですか?」
誰に尋ねる訳でもないけど、取り敢えず1分休憩。
私の力作、目の前の山の頂は、今にも雲に届きそうだ。
ここまでしなくても良かったのでは?とも思うけれど。
楽しくて、つい調子に乗っちゃったんだモーン。
山頂には小さな平地を作り、そこに一本リンデンを植えた。
そして山肌には数々の低木が生え、それを縫うように綺麗な花を付ける草原が広がる。
どうだ!!
リンデンさんと、ピーポちゃん達とハルちゃんをイメージしてみました。
いつか大地の神様と緑の御方が、この山の山頂にデートに来てくれるといいなぁ。
さてと、続きを始めるか。
……あれ?あれれ?
体に力が入らず、立ち上がる事が出来ない?
まずい、魔力を使い過ぎたかな。
『魔力がほぼ空ではないか、このバカ者が』
主にバカ者って、事実としても酷くないですかリンデンさん。
『ここはもう我らに任せ、お主は少し休んでいろ。まあその様子では自力で動く事も無理だろうがな』
ちょっと、その皮肉は意地悪でしょう。
「そんな暇ないです。次は湖を作るつもりなんですよ。小さなボートでちょっとした舟遊びが出来る程度の湖…池でもいいんですけどね。それから皆が街を作れるように広い場所も作って、その外れからは気持ちの良い木立の並ぶ散歩道を作るんです。その向こうには山菜や果物が沢山実のる森を。そこにはいろいろな動物が住み、鳥が巣を作れるようにして…あ……れ?………」
『やれやれ気を失ったか。全く手のかかる……』
「何やっているのよ私!!」
どうやら気を失っていたらしいエレオノーラです。
夢の中でミシェルに、どつかれたような気がする……。
『目が覚めた?ご主人様』
「あぁ、ハルちゃんおはよー」
じゃないでしょ!全く。
「私どれくらいこうしていたの?」
『そんなに長くないよー。大体一時間ぐらいかな?』
確かにそんな物だろう。
その証拠に私の体はろくに動きゃあしない、このポンコツが。
だけど私とハルちゃんのいるこの場所は、何て心地の良い所なんだろう。
海に突き出したちょっとした崖の上。
崖と言っても飛び込みが出来る程度の高さなんだけどね。
海を上から覗き込むと…。
「あ、魚がいっぱいいる」
『確かにいますね、美味しそ』
「ねえハルちゃん釣り竿……それどころじゃないか、私もう一仕事してくるね」
『ご主人様、まだ無理でしょう?』
「無理かもしれないけど、やれるだけやってみるよ。ハルちゃん私に魔力いっぱいくれたでしょう?だからもう少し休んでいてね。回復したらたくさん手伝ってもらうから」
これは一緒に行こうとするハルちゃんに対するけん制。
「了解。ありがとうご主人様」
そう言い軽く手を上げるハルちゃんは、やっぱりまだ顔色が悪い。
『お目覚めでございますか』
そう言ったのは、いつの間にか海に立った半人半馬の精霊さんでした。
それが私達を見下ろすように話しかけてくる。
間近で見ると、こんなにも大きいんだね。
『我が主、海の神からの言付でございます。これを……あ~ん』
「あ~ん?」
いかん、つい条件反射で口を開けてしまった。
そのタイミングで精霊さんが、私の口の中に何かを押し込んだ。
一瞬目に映ったそれは、真珠を二回りほど大きくしていた物に似ていた。
それは口に入った瞬間シュワッと溶け、甘いような、それでいてほんの少ししょっぱいような不思議な味がし、瞬く間に口の中に消えていった。
『海の神のお言葉は”それはしばらく貸しておく。あくまでも貸しだ。だからいつでも良いから返しに来い”だそうです』
貸し?この不思議な物を返せと言われても、これは一体何なのだろう?
それともう一つ不思議な事が。
今まで鉛のように重かった体が、嘘のように軽い。
失なわれたはずの力が漲っている。
なるほど、貸しと称して私に魔力を分けてくれたのか。
海の神もなかなか粋な事をする。
「ありがとうございます。ここは有りがたくお借りします。そして私を必要と感じた時、必ず参上いたしますので遠慮なくお呼び下さい。そう海の神様にお伝えください」
『畏まりました』
さてと、力も戻ったし、仕事を再開するか。
だけど私は元気になったけれど、横には相変わらず具合に悪そうなハルちゃんがいる。
「………ハルちゃん、チュウする?」
さっき魔力を分けてもらったんだもの、こんなハルちゃんを残して行けないよ。
『その必要は有りません。そちらのハルピュイアの物も預かっております』
そう言うなり、私にチュウしようと尖らせたハルちゃんの口に、砂粒ほどの真珠をくっ付ける。
ハルちゃんがそれをぺろりと舐め取ると、たちまち顔色が良くなっていった。
そうして元気そうになったハルちゃんだったけど、何故か不機嫌そうな顔をする。
『ご主人様の魔力の方がおいしい………』
まーまーそんな事を言わず、元気になったんだから頑張って手伝ってね
雪のある山を作ると言っても、とんと想像がつきません。
「高ければいいか!(だからその高さが問題だって)」
ここは余計な力を使わぬ方が賢明だろうけど、言った言葉には責任を持たねばと考えるエレオノーラです。
「たーかく、たーかく、たーかくなーれぇ」
歌うように唱えるおまじないに合わせるように、徐々に盛り上がっていく山。
まるで子供の頃の砂遊びのようで楽しい。
あとで植物を生やすのは二度手間かもと思い、大きくなっていく山に、順次植物の芽を生やしていく。
「雪が積もると言う事は寒いって事だよね。寒さに強い植物って何だろう?…う~分らん!とにかく寒さに強い植物にな~れ!」
何ともいいかげんだが、いちいち調べてたら切りが無いからね。
植物さん頑張ってください。
植物を纏いながら高く成長していく山。
そうか、山が高くなると言う事は、その裾野も広がると言う事か。
山だけに集中していたのに、結局広範囲に開拓できて、得した気分だ。
うん、この調子でどんどん行こう。
「あ~~疲れた……。一休みしてもいいですか?」
誰に尋ねる訳でもないけど、取り敢えず1分休憩。
私の力作、目の前の山の頂は、今にも雲に届きそうだ。
ここまでしなくても良かったのでは?とも思うけれど。
楽しくて、つい調子に乗っちゃったんだモーン。
山頂には小さな平地を作り、そこに一本リンデンを植えた。
そして山肌には数々の低木が生え、それを縫うように綺麗な花を付ける草原が広がる。
どうだ!!
リンデンさんと、ピーポちゃん達とハルちゃんをイメージしてみました。
いつか大地の神様と緑の御方が、この山の山頂にデートに来てくれるといいなぁ。
さてと、続きを始めるか。
……あれ?あれれ?
体に力が入らず、立ち上がる事が出来ない?
まずい、魔力を使い過ぎたかな。
『魔力がほぼ空ではないか、このバカ者が』
主にバカ者って、事実としても酷くないですかリンデンさん。
『ここはもう我らに任せ、お主は少し休んでいろ。まあその様子では自力で動く事も無理だろうがな』
ちょっと、その皮肉は意地悪でしょう。
「そんな暇ないです。次は湖を作るつもりなんですよ。小さなボートでちょっとした舟遊びが出来る程度の湖…池でもいいんですけどね。それから皆が街を作れるように広い場所も作って、その外れからは気持ちの良い木立の並ぶ散歩道を作るんです。その向こうには山菜や果物が沢山実のる森を。そこにはいろいろな動物が住み、鳥が巣を作れるようにして…あ……れ?………」
『やれやれ気を失ったか。全く手のかかる……』
「何やっているのよ私!!」
どうやら気を失っていたらしいエレオノーラです。
夢の中でミシェルに、どつかれたような気がする……。
『目が覚めた?ご主人様』
「あぁ、ハルちゃんおはよー」
じゃないでしょ!全く。
「私どれくらいこうしていたの?」
『そんなに長くないよー。大体一時間ぐらいかな?』
確かにそんな物だろう。
その証拠に私の体はろくに動きゃあしない、このポンコツが。
だけど私とハルちゃんのいるこの場所は、何て心地の良い所なんだろう。
海に突き出したちょっとした崖の上。
崖と言っても飛び込みが出来る程度の高さなんだけどね。
海を上から覗き込むと…。
「あ、魚がいっぱいいる」
『確かにいますね、美味しそ』
「ねえハルちゃん釣り竿……それどころじゃないか、私もう一仕事してくるね」
『ご主人様、まだ無理でしょう?』
「無理かもしれないけど、やれるだけやってみるよ。ハルちゃん私に魔力いっぱいくれたでしょう?だからもう少し休んでいてね。回復したらたくさん手伝ってもらうから」
これは一緒に行こうとするハルちゃんに対するけん制。
「了解。ありがとうご主人様」
そう言い軽く手を上げるハルちゃんは、やっぱりまだ顔色が悪い。
『お目覚めでございますか』
そう言ったのは、いつの間にか海に立った半人半馬の精霊さんでした。
それが私達を見下ろすように話しかけてくる。
間近で見ると、こんなにも大きいんだね。
『我が主、海の神からの言付でございます。これを……あ~ん』
「あ~ん?」
いかん、つい条件反射で口を開けてしまった。
そのタイミングで精霊さんが、私の口の中に何かを押し込んだ。
一瞬目に映ったそれは、真珠を二回りほど大きくしていた物に似ていた。
それは口に入った瞬間シュワッと溶け、甘いような、それでいてほんの少ししょっぱいような不思議な味がし、瞬く間に口の中に消えていった。
『海の神のお言葉は”それはしばらく貸しておく。あくまでも貸しだ。だからいつでも良いから返しに来い”だそうです』
貸し?この不思議な物を返せと言われても、これは一体何なのだろう?
それともう一つ不思議な事が。
今まで鉛のように重かった体が、嘘のように軽い。
失なわれたはずの力が漲っている。
なるほど、貸しと称して私に魔力を分けてくれたのか。
海の神もなかなか粋な事をする。
「ありがとうございます。ここは有りがたくお借りします。そして私を必要と感じた時、必ず参上いたしますので遠慮なくお呼び下さい。そう海の神様にお伝えください」
『畏まりました』
さてと、力も戻ったし、仕事を再開するか。
だけど私は元気になったけれど、横には相変わらず具合に悪そうなハルちゃんがいる。
「………ハルちゃん、チュウする?」
さっき魔力を分けてもらったんだもの、こんなハルちゃんを残して行けないよ。
『その必要は有りません。そちらのハルピュイアの物も預かっております』
そう言うなり、私にチュウしようと尖らせたハルちゃんの口に、砂粒ほどの真珠をくっ付ける。
ハルちゃんがそれをぺろりと舐め取ると、たちまち顔色が良くなっていった。
そうして元気そうになったハルちゃんだったけど、何故か不機嫌そうな顔をする。
『ご主人様の魔力の方がおいしい………』
まーまーそんな事を言わず、元気になったんだから頑張って手伝ってね
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