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16、皆で変なこと言うのやめて下さい。僕はただの男爵の次男坊で、騎士団では一番の下っ端なんです。

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皆の話が、何かとんでもない事になっている。
どうやら僕がとんでもない存在で、取扱注意みたいに、思われているみたいだ。
だーかーらー、言っているでしょ!僕はそんな大そうな人じゃないって!
ただの男爵の次男坊で、騎士団の中でも一番の下っ端なんですぅ。
あまりしつこい人は嫌われますよ。

「エル、これは地位や身分などと只の表面上の話では無い。
お前自身の価値を言っておる。」

「シンジュ。僕はただの人間だよ。
本当に普通の子供だったし、騎士団に入れてもらってからも、みんなに迷惑かけてばっかりだけど、
それでもとても優しくしてもらっている。
それにシンジュにも会えて、僕は今がすごく幸せなんだ。
でも、最近はみんなは変な事ばかり言う。
シンジュ、君はまるで僕が特別な存在のように言うけれど、
きっと僕は君が言うような人間じゃないよ。僕は普通の人間だ。
シンジュ達の話を聞いていると、まるで自分が違う存在になっていく気がするんだ。
でもね、僕は普通の人間でいたい。
そんな特別な存在にはなりたくない。普通の人間のほういいんだ。」

僕は一気に捲し立てました。
気が付くと周りのみんなは押し黙っています。
そしてシンジュは伏し目がちになり、耳を伏せ、しっぽは元気なく垂れ下がっていた。
体は徐々に小さくなり、子犬ぐらいの姿になってしまいました。
僕はそっとシンジュを救い上げ、胸に抱きしめます。

「すまぬ……。」

「ぼくこそごめん。シンジュは僕を守るために言ってくれたのでしょ?」

「お前が価値のある人間だから、ないがしろにするなと…教えたかったのだ。
人間とは、言わなければ分からない奴ばかりだから。
いや、お前はそれが嫌だったのだな。
今までどおり、自由に、普通に暮らしたいのだな。」

うん。

「我は、自分の考えを優先し、お前の気持ちを察することができなかった。
本当に済まない事をした。」

大丈夫だよ、ぼくも自分の気持ちをシンジュにぶつけてしまった。
僕の事を思って言ってくれたシンジュに。
ごめんねシンジュ。君を傷つけてしまったね……。
僕の目から涙がこぼれす。
それを見たシンジュが涙をぺろりと舌で舐めて慰めてくれます。

「もう言わぬ。お前の嫌がることはせぬ。
お前に危険が及んだ時は、我が力で叩き潰せばいいだけだ。」

それはやめて。
叩き潰さなくていいから。一緒に居てくれるだけでいいから。



「さて、そろそろタイムリミットだ。」

え、タイムリミット?

「一応、お前が無事と伝えてはきたが、
そろそろしびれを切らして、あ奴らが、探しに来るかもしれん」

きっと隊長たちの事ですね。ええ、そうですね、急いで帰らなくっちゃ。

「シンジュ、帰り道分かる?
僕だって、分からない訳わけじゃないけど、
また迷子になると、よけい隊長たちに迷惑かけてしまうと思ってですね……。」

「宿舎はどこだ?」

「輝獅子亭という所です。ですご存知ですか?」

「ああ、知っていいる。送って行こう」

すると、お婆さんが、

「坊ちゃん、ちょっと話がありますので、帰りがけにもう一度寄って下さらんか。」

「ベルナルドさん、用事があるならシンジュもいる事だし、二人で帰っても大丈夫ですよ。」

それにシンジュと二人の方が気が楽なんだ。
流石に大きなシンジュの背に載せてもらう訳にはいかないから、歩いて帰るしかないけど。

「いや、送る。話は後でもいいんだろ?おばば。」

「勿論ですとも。」

「それではお婆さん、お薬ありがとうございました。
シンジュ、大きくなる?
それとも僕の懐に入って行きますか?」

子犬サイズのシンジュにそう尋ねる。

「そうじゃな、ちと腹も膨れて眠いから、おぬしの懐の中で眠りながら帰るとするか。」

やっぱり先輩に何か奢ってもらったんですね。
いいなぁ。
僕がぶつぶつ言っていたら、帰る道すがらベルナルドさんが、ポーリンを買ってくれました。
シンジュはどうする?と聞くと、

「我はよい。先ほど食った。」

と目をつぶったまま言っていました。

そうだ、忘れるところだった。
僕がもう1本買おうとしたら、

「もっと欲しいのかい?」

そう言ってあと5本買って、僕に渡してくれました。
いいんですか?
これ、隊長へのお土産の分なんだけど……。
まあいいや。後でベルナルドさんに隊長からもお礼を言ってもらおうっと。



      ーーーーーーー

ようやく短編が完結しました。
これでようやくエントリー作品に集中できます。(多分)
よろしくお願いします。
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みんなの感想(5件)

ゆかこ
2019.11.02 ゆかこ

初めまして。ほんわか優しい気持ちになるお話で、とても面白かったです。
もふもふなシンジュも加わって、これからのエルの旅がもっと楽しみになりました。

大賞も投票させていただきました!
応援していますので、更新頑張ってください(*´꒳`*)

羽兎里
2019.11.02 羽兎里

ご感想をお寄せ下さりありがとうございます。
3本同時掲載で、ついついエルの事を後回しにしてしまいましたが、
”あなたは…”も一応無事に最終回を迎え、
”悪役令嬢…”も短編予定なので、じきに終了すると思います。
ようやくエルに集中できそうです。
投票もしていただいたとのこと。大変感謝しております。
これからもよろしくお願いします。

解除
ほしか
2019.10.25 ほしか

おうおうおう!父以外から命令されないなんて、ベルナルドさんは相当地位が高そうですねぇ笑(あっ、初感想失礼します。)
エルの周りにまた過保護が増えそうな予感( ˘ω˘ )

羽兎里
2019.10.25 羽兎里

感想をお寄せ下さりありがとうございます。
ほしか様、感想大歓迎です。
あぁ、読んでくれている人がいるって、実感できます。
はい、ベルナルドさん、それなりに偉い人です。
そして、色々と……。
あぁ、いけないいけない。
ほしか様の楽しみを奪うところでした。
(禁・ネタバレ)
これからもよろしくお願いします。

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鴻上 紫苑
2019.10.24 鴻上 紫苑

また軟禁状態で帰路に着けないんじゃ( ̄▽ ̄;)

羽兎里
2019.10.24 羽兎里

鴻上 紫苑様ご感想をお寄せ下さりありがとうございます。
うーむ、作者の内容の傾向が似てる。……困った。
何とか違う方向に、どちらかを持っていかねば……。
と言いつつ、そろそろAは完結するんです。(番外編は有ります。)
今ちょっと面白い事に気が付きました。
作品Aと味噌っかす(今打ち間違えて、味噌っカツって出た。旨そ)の順位が並んでる。
BLランキングが8位と9位。おまけに小説ランキングも108位と109位。これも奇跡か………?
これからもよろしくお願いします。

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