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第2話
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元々私の体内時計はかなり優秀だった。
いつも目覚まし時計よりも早く目が覚めたし、ある程度の時間を言い当てる事もできた。
”今は○○時〇〇分です”は無理だけど”今○○時頃よね”程度は分かる。
だからアルベルトさんを7時に起こそうと思えば難なく起こす事ができるだろう。
ただ心配なのは、自分が今猫だという事。
猫=寝子
果たして私の体内時計が錆びていないことを祈るのみだ。
そして今は朝。
私の心配事は杞憂に終わった。
なぜって猫の活動時間は明け方から始まるのだから。
いや~体力が回復していた私にとって、目が覚めてからアルベルトさんを起こすまでの時間の長かったこと。
イライラしながら時計とにらめっこをして、ようやく7時になった事を確認してから行動を開始した。
私はよく眠っているアルベルトさんの頭の横にちょこんと座り、そっと手を伸ばす。
そして爪を隠したまま、ソフトなタッチで彼の顔に触れる。
チョンチョンチョンチョン、さあ早く起きて下さい。
「うぅ~~ん……」
ええ、事前にゼノンさんの話を聞いていたので、この程度で起きるとは思っていませんとも。
それから私はもう一度、顔に手を伸ばした。
今度は爪を少し出し、少々痛みを感じる程度に顔をつつく。
『朝ですよ~アルベルトさ~ん、起きて下さ~い』
しかし今度はウンともスンとも言わず、目を閉じたままよく寝入っているようだ。
確かに夕べも遅い時間に眠ったようだから、もう少し寝かせてあげたいと思う、思うが、あと少しすればゼノンさんが起こしに来るだろう。
それまでに何とか目標を達成して、私のいる意義を示したい。
『う~ん、起きないな。傷は付けたくないけどある程度は致し方ないか。できれば無傷で起こしたかったけれどなー。でもこの顔に傷を作りたくはないなぁ』
という訳で、私はなるべく顔を避け、本腰を入れて攻撃を開始する事にした。
少し離れた所からお腹の上にダッシュ!
体の上をダダダと走り込み、それでもダメなのでアルベルトさんの手を抱え込み、両足でキックを連打し、指先をガシガシと咥え込んだ。
それが楽しい、やっぱり楽しい、なぜこんなに楽しいんだろう。
私は嬉々としてアルベルトさんにじゃれつく 。
一応牙が刺さらないように加減をしたつもりだが、私まだ子猫だから分からな~い。
「クッククク……」
あっ、起きた。と言うか笑っている?
「お前、本当に元気だなぁ」
『はい、おいしいミルクをもらってたくさん寝たせいでしょうか。力が漲っていますよ!』
「そうか、腹が減ったか。すぐにクラウに言ってミルクをもらおうな」
やはり言葉は通じず、思っていた返事は帰ってこない。
違うんだけどなぁ、確かに朝早かったからお腹は空いているけど、論点がずれてます。
まあ仕方ない事だけど。
「それにしてもお前はもう少し手加減を覚えろよ。見てみろこの手を、ひりひりするぞ」
そうして差し出された手を見ると無数の引っ掻き傷があった。
あらやだ、一体どうしたんですか?って惚けても犯人は明らかに私だけど。
「こんなに悪い事をする子には、お仕置きをしなくちゃいけないな」
お仕置き!その言葉を聞いた私はその手から何とか逃げようとするが、敵うはずもない。
『ごめんなさい!本気でやったんじゃないの!なぜかすごく楽しくて止められなかったのー!』
「そーかそーか、だが今更言い訳をしても遅いぞ」
なんで通じるのよ!まあこの状況なら分かる気もしないけれど。
するといきなりアルベルトさんが私のモフモフぷにぷにのお腹に顔を埋めた。
そしてグリグリと顔を動かす。
どうやら私の柔らかいお腹を堪能しているようだ。
『ギャーーハハハ!幼気な乙女…じゃなく幼女になんて無体なことを働くのよぉ!完璧なセクハラよ変態!!く、くすぐったい!お願いやめてぇーーー!』
何とかその顔を離そうと顔に伸ばした手に力を込め突き放そうとしても、アルベルトさんは笑いながら、さらに顔を押し付ける。
その時控えめなノックとともにそっとドアが開かれた。
そしてそこに現れたゼノンさんが驚いた様子でこちらを見つめている。
『ゼ、ゼノンさん助けて~~!』
「なんだゼノン、いつものお前らしからぬ登場の仕方だな」
「いえ、あなたのためにネコさんを起こしたら気の毒だと思ったのですが……随分と楽しそうですね」
「あぁ楽しいぞ、お前もやるか?」
『ゼノンさんは紳士ですからこんな事しません!』
なんて何やかやと騒ぎがあった後、私はまたゼノンさんの手で食堂に運ばれている。
「猫さん今日もアルベルト様を起こして下さったのですね。助かりました」
『いえいえ、何て事ありませんよ』
「今、彼の仕事を楽にするために、人を雇おうと思っているのです」
『あら、それはいい考えですね』
「しかしアルベルト様の仕事の補佐となると、なかなか適任がおりませんので頭を痛めているのですよ」
『ゼノンさんも大変ですね』
なんて世間話をしながら食堂に向かう。
「……………不思議ですね、まるであなたが私の言葉を理解しているような気がします」
『してますよーー。後はゼノンさんに私の言葉を理解してもらえるといいんですけどねぇ』
まあこの状況は、ゼノンさんが独り言を言っているだけに取られるのだろうな。
さて、皆がテーブルにつき、私の前にもなみなみとミルクが注がれた皿が置かれた。
食事の前のお祈りが終わるのを待って、私もミルクを飲み始めた。
テーブルにはアルベルトさんとゼノンさん、それと数人の人が一緒に食事をしている。
どういう間柄か分からないけれど、身なりを見るだけでは身分その他はあまり考えず、どちらかといえばアットホーム的なものを感じた。
「あのゼノン様、私不思議に思うのですがこの子猫はかなり知能が高いのではないでしょうか?先ほども私たちのお祈りを待ってからミルクに口をつけるんですよ」
ええ、やはりほかの人が口を付けていないのに、自分だけさっさと食べ始めるのはマナー違反と思いましたので。
「やはりクラウディアさんもそう思われますか?私もそう感じるのです。なぜかこの猫さんが私の話を理解していると思われて仕方がありません」
「そうなのか?確かにこの猫は俺をリラックスさせてくれる可愛いやつだと思うが、そこまで頭がいいのか?」
「アルベルト様もよく見ていればわかりますよ。この猫さんはときどき私の話に相槌を打つように鳴いたりするのですよ」
「それはただこの猫の鳴き声がかぶっただけで、偶然だろう」
なんか他愛もない事を議論をしているけれど、アルベルトさんの仕事が忙しいのであれば、さっさと食事を終わらせたほうがいいんじゃないの?
「あの………先ほどから皆様、猫や猫さんとおっしゃっていますが、この子にはまだ名前がないのですか?」
一緒にテーブルに着いていた若い女性がそんなことを言い出した。
そう言えばそうだわ。えっと私の名前は………なんて言っても無駄ですね
「と言いますかアルベルト様、この猫さんはここで飼われると言う事でよろしいんですよね?」
「そのつもりだ」
「ならばお兄様、その猫ちゃんにお名前を付けてあげなければ」
ほほぅ、彼女はアルベルトさんの妹さんでしたか。
「そうだな、いつまでも猫と呼ぶのも気が引ける。そうだなぁ、ミーというのはどうだ?」
「もうお兄様、そんな安易な付け方では猫ちゃんがかわいそうです」
『まあ、それなりに素敵な名前をいただけるのなら、それに越した事はありませんが』
「ほら猫ちゃんもそうおっしゃってますわ。そうですね………ところでその子は男の子ですの?女の子ですの?」
「そう言えば肝心な事を確かめていませんでしたね」
「よし、猫、ちょっとこっちに来い」
えっそれってまさか私の性別を確認するの?
今?みんなの前で?
私の知っている猫の性別の確認の仕方はただ一つしかない………。
私は恐怖と羞恥心を覚え、すぐさまそこから逃げるように駆け出した。
そして楽しそうに私を追いかけるアルベルトさん。
その様子を呆れながらため息をつくゼノンさん。
私は何とかアルベルトさんの手をすり抜け、クラウディアさんの所にたどり着いた。
どうせ確かめられるのならば、同性である彼女に確かめてもらったほうがいい。
クラウディアさんは私の両脇にに手を添えて、そっと持ち上げた。
「女の子です」
その一言で、この騒動は終わりを迎えた。
いつも目覚まし時計よりも早く目が覚めたし、ある程度の時間を言い当てる事もできた。
”今は○○時〇〇分です”は無理だけど”今○○時頃よね”程度は分かる。
だからアルベルトさんを7時に起こそうと思えば難なく起こす事ができるだろう。
ただ心配なのは、自分が今猫だという事。
猫=寝子
果たして私の体内時計が錆びていないことを祈るのみだ。
そして今は朝。
私の心配事は杞憂に終わった。
なぜって猫の活動時間は明け方から始まるのだから。
いや~体力が回復していた私にとって、目が覚めてからアルベルトさんを起こすまでの時間の長かったこと。
イライラしながら時計とにらめっこをして、ようやく7時になった事を確認してから行動を開始した。
私はよく眠っているアルベルトさんの頭の横にちょこんと座り、そっと手を伸ばす。
そして爪を隠したまま、ソフトなタッチで彼の顔に触れる。
チョンチョンチョンチョン、さあ早く起きて下さい。
「うぅ~~ん……」
ええ、事前にゼノンさんの話を聞いていたので、この程度で起きるとは思っていませんとも。
それから私はもう一度、顔に手を伸ばした。
今度は爪を少し出し、少々痛みを感じる程度に顔をつつく。
『朝ですよ~アルベルトさ~ん、起きて下さ~い』
しかし今度はウンともスンとも言わず、目を閉じたままよく寝入っているようだ。
確かに夕べも遅い時間に眠ったようだから、もう少し寝かせてあげたいと思う、思うが、あと少しすればゼノンさんが起こしに来るだろう。
それまでに何とか目標を達成して、私のいる意義を示したい。
『う~ん、起きないな。傷は付けたくないけどある程度は致し方ないか。できれば無傷で起こしたかったけれどなー。でもこの顔に傷を作りたくはないなぁ』
という訳で、私はなるべく顔を避け、本腰を入れて攻撃を開始する事にした。
少し離れた所からお腹の上にダッシュ!
体の上をダダダと走り込み、それでもダメなのでアルベルトさんの手を抱え込み、両足でキックを連打し、指先をガシガシと咥え込んだ。
それが楽しい、やっぱり楽しい、なぜこんなに楽しいんだろう。
私は嬉々としてアルベルトさんにじゃれつく 。
一応牙が刺さらないように加減をしたつもりだが、私まだ子猫だから分からな~い。
「クッククク……」
あっ、起きた。と言うか笑っている?
「お前、本当に元気だなぁ」
『はい、おいしいミルクをもらってたくさん寝たせいでしょうか。力が漲っていますよ!』
「そうか、腹が減ったか。すぐにクラウに言ってミルクをもらおうな」
やはり言葉は通じず、思っていた返事は帰ってこない。
違うんだけどなぁ、確かに朝早かったからお腹は空いているけど、論点がずれてます。
まあ仕方ない事だけど。
「それにしてもお前はもう少し手加減を覚えろよ。見てみろこの手を、ひりひりするぞ」
そうして差し出された手を見ると無数の引っ掻き傷があった。
あらやだ、一体どうしたんですか?って惚けても犯人は明らかに私だけど。
「こんなに悪い事をする子には、お仕置きをしなくちゃいけないな」
お仕置き!その言葉を聞いた私はその手から何とか逃げようとするが、敵うはずもない。
『ごめんなさい!本気でやったんじゃないの!なぜかすごく楽しくて止められなかったのー!』
「そーかそーか、だが今更言い訳をしても遅いぞ」
なんで通じるのよ!まあこの状況なら分かる気もしないけれど。
するといきなりアルベルトさんが私のモフモフぷにぷにのお腹に顔を埋めた。
そしてグリグリと顔を動かす。
どうやら私の柔らかいお腹を堪能しているようだ。
『ギャーーハハハ!幼気な乙女…じゃなく幼女になんて無体なことを働くのよぉ!完璧なセクハラよ変態!!く、くすぐったい!お願いやめてぇーーー!』
何とかその顔を離そうと顔に伸ばした手に力を込め突き放そうとしても、アルベルトさんは笑いながら、さらに顔を押し付ける。
その時控えめなノックとともにそっとドアが開かれた。
そしてそこに現れたゼノンさんが驚いた様子でこちらを見つめている。
『ゼ、ゼノンさん助けて~~!』
「なんだゼノン、いつものお前らしからぬ登場の仕方だな」
「いえ、あなたのためにネコさんを起こしたら気の毒だと思ったのですが……随分と楽しそうですね」
「あぁ楽しいぞ、お前もやるか?」
『ゼノンさんは紳士ですからこんな事しません!』
なんて何やかやと騒ぎがあった後、私はまたゼノンさんの手で食堂に運ばれている。
「猫さん今日もアルベルト様を起こして下さったのですね。助かりました」
『いえいえ、何て事ありませんよ』
「今、彼の仕事を楽にするために、人を雇おうと思っているのです」
『あら、それはいい考えですね』
「しかしアルベルト様の仕事の補佐となると、なかなか適任がおりませんので頭を痛めているのですよ」
『ゼノンさんも大変ですね』
なんて世間話をしながら食堂に向かう。
「……………不思議ですね、まるであなたが私の言葉を理解しているような気がします」
『してますよーー。後はゼノンさんに私の言葉を理解してもらえるといいんですけどねぇ』
まあこの状況は、ゼノンさんが独り言を言っているだけに取られるのだろうな。
さて、皆がテーブルにつき、私の前にもなみなみとミルクが注がれた皿が置かれた。
食事の前のお祈りが終わるのを待って、私もミルクを飲み始めた。
テーブルにはアルベルトさんとゼノンさん、それと数人の人が一緒に食事をしている。
どういう間柄か分からないけれど、身なりを見るだけでは身分その他はあまり考えず、どちらかといえばアットホーム的なものを感じた。
「あのゼノン様、私不思議に思うのですがこの子猫はかなり知能が高いのではないでしょうか?先ほども私たちのお祈りを待ってからミルクに口をつけるんですよ」
ええ、やはりほかの人が口を付けていないのに、自分だけさっさと食べ始めるのはマナー違反と思いましたので。
「やはりクラウディアさんもそう思われますか?私もそう感じるのです。なぜかこの猫さんが私の話を理解していると思われて仕方がありません」
「そうなのか?確かにこの猫は俺をリラックスさせてくれる可愛いやつだと思うが、そこまで頭がいいのか?」
「アルベルト様もよく見ていればわかりますよ。この猫さんはときどき私の話に相槌を打つように鳴いたりするのですよ」
「それはただこの猫の鳴き声がかぶっただけで、偶然だろう」
なんか他愛もない事を議論をしているけれど、アルベルトさんの仕事が忙しいのであれば、さっさと食事を終わらせたほうがいいんじゃないの?
「あの………先ほどから皆様、猫や猫さんとおっしゃっていますが、この子にはまだ名前がないのですか?」
一緒にテーブルに着いていた若い女性がそんなことを言い出した。
そう言えばそうだわ。えっと私の名前は………なんて言っても無駄ですね
「と言いますかアルベルト様、この猫さんはここで飼われると言う事でよろしいんですよね?」
「そのつもりだ」
「ならばお兄様、その猫ちゃんにお名前を付けてあげなければ」
ほほぅ、彼女はアルベルトさんの妹さんでしたか。
「そうだな、いつまでも猫と呼ぶのも気が引ける。そうだなぁ、ミーというのはどうだ?」
「もうお兄様、そんな安易な付け方では猫ちゃんがかわいそうです」
『まあ、それなりに素敵な名前をいただけるのなら、それに越した事はありませんが』
「ほら猫ちゃんもそうおっしゃってますわ。そうですね………ところでその子は男の子ですの?女の子ですの?」
「そう言えば肝心な事を確かめていませんでしたね」
「よし、猫、ちょっとこっちに来い」
えっそれってまさか私の性別を確認するの?
今?みんなの前で?
私の知っている猫の性別の確認の仕方はただ一つしかない………。
私は恐怖と羞恥心を覚え、すぐさまそこから逃げるように駆け出した。
そして楽しそうに私を追いかけるアルベルトさん。
その様子を呆れながらため息をつくゼノンさん。
私は何とかアルベルトさんの手をすり抜け、クラウディアさんの所にたどり着いた。
どうせ確かめられるのならば、同性である彼女に確かめてもらったほうがいい。
クラウディアさんは私の両脇にに手を添えて、そっと持ち上げた。
「女の子です」
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