58 / 155
第3章 欲望と謀略の秋 編
第51話 勝敗結果
しおりを挟む
コウメイが謁見室を去った後――グスタフは激昂していた。
「ええぇぇいい! なんじゃあ、あのクソガキはっ! このこのこのっ!」
グスタフは謁見室に飾られた、様々な調度品を破壊して回る。壮絶な破壊の音が響き渡る中、この男が初めて見せる暴力性に、リリライトは声も出せず椅子の上で縮こまって恐怖していた。
「不愉快じゃ、不愉快じゃあっ! しかもあのクソガキ、ムカつくあの小僧によく似おってからにっ! ああ、辛抱たまらんっ! 殺すっ、殺してやるっ!」
「ひ……」
グスタフの言っている言葉の意味は到底理解出来ないリリライトは震えあがるしかない。
破壊する物がなければ、今度は地面を、壁を、蹴る殴る。贅肉だらけのグスタフでは頑丈なそれらを破壊することは出来ず、情けない音が響くだけだったが、それすらもリリライトの恐怖心をあおる。
「はぁ、はぁ……ええい! どうしてこうなったっ!」
グスタフが大臣となり、リリライトの教育係としてこの地に来てから、終始何事も上手くいっていた。何もかもがグスタフの思い通りに事が運んでいた。そのはずだったのに――
あの若造、態度は軽薄で飄々としているが、腹の中に1つも2つも抱えている。あの男が会話から得ていたのは言葉の情報ではなく、こちらの表情や態度――感情だ。リリライトの動揺を誘い、グスタフを挑発するような言動も全て計算通りということ。油断ならない人物だ。
こちらの反応から、コウメイは自分達が奴隷制度に何かしら関与していることを確信したに違いない。というか、奴自身がそう公言していた。足りないのは証拠だけ、おそらくそんな風に考えているのではないか。
まだ、そのことが表に出るには時期尚早だというのに。
「ええい、むしゃくしゃするのぅ」
暴れまわったことで、幾分か冷静さは取り戻したのか、しかしそれでも怒りの感情は吐き出しきれていないグスタフ。
ここまで全て思い通りにいっており良い気分だったのを、突然現れた訳の分からない若造に引っ掻き回されて、傲慢で不遜で自分勝手なグスタフが内心穏やかでいられるはずが無かった。
イライラしながら謁見室内を見渡すと、ふと椅子に座って怯えているリリライトが視界に入る。
「――ふん、まあ良いか」
そうして、ようやくグスタフは落ち着きを取り戻す。
なるほど、確かに油断ならない男ではある。しかし、どうやっても奴に今起こっていることの真相が分かるはずもない。頭が切れる切れない以前の問題で、グスタフの陰謀の全容など、誰も知ることが出来ないのだ。
あの若造に出来ることは、せいぜい場を引っ掻き回すことだけ。結局は何も出来ずに、グスタフの思い通りになるのだ。少なくとも、リリライトがグスタフの側にいる限り、計画が大きく狂うことはあり得ない。
「とはいえ、ああいった人間は厄介だ。放置しておくわけにはいかんなぁ」
今度はうろうろと謁見室内を歩き回る。
そんな支離滅裂なグスタフの行動が理解不能で、やはりリリライトは怯えて見つめていることしか出来なかった。だから、グスタフが何かを思いついて手を打った時に、びくっと反応してしまう。
「そうじゃ、殺してしまおう。そうすれば、何の憂いもなくなるじゃろうて」
何故そんなことも思い付かなかったのだろうか。幸いにも、しばらくはここいらに滞在するとのことで、方法などいくらでもある。そうだ、アンナにやらせてしまうのが一番手っ取り早い。
「と、そうそう。アンナで思い出しましたぞぉ、リリライト殿下ぁ」
そこまで思考を巡らせて、自分に都合のいい未来を想像するグスタフ。機嫌が直ったのか、いつものにやけた気持ち悪い笑顔をリリライトに向ける。
「今夜の“遊び”は、よりいっそう濃密に激しくいきますからのぅ。この滾った思いを、お互い存分に吐き出しましょうぞ」
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
「姫様も、あの豚親父も奴隷売買に関わっています。間違いない」
謁見を終えたコウメイがシンパと再会し、リリライト邸から白薔薇騎士団兵舎へ向かう馬車の中でおもむろに自らの結論を告げた。
そのコウメイの言葉に、シンパは驚きを隠せない。
「グ、グスタフ卿はともかく……リリライト殿下まで? 信じられません」
「はい、2人ともです。ただ……推測の域は出ないですけど、リリライト姫様はあのクソ豚野郎――グスタフに上手くコントロールされているって感じでしたね。何か弱みでも握られているのかも」
「弱み? リリライト殿下がグスタフ卿に? 何か確証でも?」
信じられないことを自信満々に言うコウメイに次々と疑問を浴びせかけるシンパ。コウメイは今しがた乗り越えてきた謁見の結果を考察するのに集中したかったが、シンパの立場から聞かずにはいられないのも納得できる。
コウメイは嫌な顔など一つせず、真面目な表情で答える。
「確証なんてない……っていうか、無いのは確証だけです。2人が関与していること、リリライト姫様がグスタフに逆らえない状況にあること。この2つだけは間違いないと思って良いです」
「――そんな」
グスタフがリリライトにバレずに裏でこそこそやっているというのならともかく――コウメイが包み隠さず話してくれたことは、とてもシンパには受け入れることは出来なかった。
しかし昨日まで飄々としていた若者が、今こうして真摯に自信ありげにそういうことを、疑うことも出来なかった。
「あと、危険かも。グスタフを挑発し過ぎました」
「――は?」
「いや、口先で煙に巻かれないように相手を逆撫でして土俵に乗せたんですけど……思っていた以上にムカつく野郎だったんで、口が止まらなかったんですよ」
その点については素直に反省するコウメイ。少なくとも、リリライトに1度諫められた後の暴言は不要だったはずだ。
「多分、長くここにいたら俺は殺される。クソ、ヘルベルト連合のことなんて全然調べられてないのに、参ったな」
シンパなど、今聞かされたコウメイの話についていくのに一杯一杯なのに、コウメイはもう先の未来のことを思案している。ついこの間この地に来たばかりの若者の能力に感心すると共に、ずっとこの地にいるはずの自分が全く気付くことが出来なかったことを歯痒く感じる。
「俺はとりあえず早々に引き上げることにしますよ。で、ルエール騎士団長とカリオス殿下に事の次第を伝えて……まあ、その後は展開次第ってとこですね。出来るなら、シンパ卿も身を隠した方がいい」
「わ、私もですか?」
「少なからず、俺と接触しているし、本当に申し訳ないんですけど俺が仲良くなったなんて言っちゃったんで、あの豚親父は貴女にも目を付ける可能性もある」
そう言ってシンパを見るコウメイの瞳に冗談の色は全く混じっていない。心底シンパの身を案じていることが感じられる。
だからこそシンパも真剣に答える。
「――私は、第2王女の近衛である白薔薇騎士団の騎士団長です。何があろうと、リリライト王女殿下の御側を離れるわけにはいきません」
「ま、貴女の立場だと簡単に姿を消すことは出来ないでしょう。それにグスタフも貴女に手をかけようと思っても、すぐには出来ないと思いますから、急ぐ必要もないかな」
自分で言っておきながら、シンパの返答を予想していたように返してくるコウメイ。この若者は一体どれくらいの先を予測しているのか。
「申し訳ないついでに、俺が引き上げるにあたってシンパ卿にお願いしたいことがあるんですけど、協力していただけますか?」
遠慮なくそう言ってのけるコウメイに、シンパは内心舌を巻く。
しかし、不思議と嫌な感情を彼に寄せることはない。彼は軽薄で飄々としているお調子者であることは確かだが、思慮深く誠実な人間だ。
現に、自分だけではなくシンパの身も案じてくれている。
それだけではなく、奴隷取引に関わっているというグスタフは糾弾しようとする意志が見え隠れするが、リリライトは何とか救おうとしてくれているのではないか。
リリライトに対して絶対的な忠誠を誓っているシンパは、コウメイを信頼してみようという気になった。
「私で出来ることであれば」
そんなシンパの返答に、コウメイはニカっと笑う。
「助かります。実は、御前試合の時から気になっていたんですが」
そうしてコウメイはシンパに顔を近づけて「お願い事」を伝える。すると次第にシンパの表情が驚きで満たされていく。
「――まさか、そんなことが?」
「信じられませんか?」
そういうコウメイは不安どころか、自信満々だった。シンパがコウメイの言うことを拒絶するはずがないと確信している表情。
「いや、確かにコウメイ殿がおっしゃることには筋が通っていて、否定することが出来ない、足りないのは相変わらず証拠だけだが、こうなればとことん信じてみましょう。間違っていたら、一緒に笑って謝ってもらえれば、それでいいです」
「にゃはは。シンパ卿もそういう冗談言うんですね」
そう言って笑うコウメイに、シンパも笑みを零す。
「――全く貴方という人は、随分と若いのに恐ろしいくらい冴えた方だ。さしずめ、先ほどの謁見の結果は完全勝利といった感じではないですか?」
そう言えば自信満々に肯定してくるだろうと思っていたシンパの思惑を、これまでしてきたのと同じように、コウメイは裏切る。
コウメイはそう問われれば、今までに見せたことがない、暗い表情で顔をうつむかせた。
「グスタフが何故、どうやってリリライト姫様を操っているのか。いや、姫様だけではなく御前試合のことも……何一つ分からない。こっちは後手に回るしかなくて圧倒的不利な状況ですよ。贔屓目に見ても、勝敗結果は『痛み分け』ってところです」
最後の方は苦笑しながら、そう零すコウメイ。
「それでも、最終的に負ける気は全くないですけど」
彼はシンパに言うではなく、自分に言い聞かせるように言うと、そのまま馬車の窓から外を見る。馬車の進む速度に合わせて流れていく風景をボーっと見ながら、何ともなしにつぶやく。
「こりゃ、思っている以上に大事になるかもなぁ」
「ええぇぇいい! なんじゃあ、あのクソガキはっ! このこのこのっ!」
グスタフは謁見室に飾られた、様々な調度品を破壊して回る。壮絶な破壊の音が響き渡る中、この男が初めて見せる暴力性に、リリライトは声も出せず椅子の上で縮こまって恐怖していた。
「不愉快じゃ、不愉快じゃあっ! しかもあのクソガキ、ムカつくあの小僧によく似おってからにっ! ああ、辛抱たまらんっ! 殺すっ、殺してやるっ!」
「ひ……」
グスタフの言っている言葉の意味は到底理解出来ないリリライトは震えあがるしかない。
破壊する物がなければ、今度は地面を、壁を、蹴る殴る。贅肉だらけのグスタフでは頑丈なそれらを破壊することは出来ず、情けない音が響くだけだったが、それすらもリリライトの恐怖心をあおる。
「はぁ、はぁ……ええい! どうしてこうなったっ!」
グスタフが大臣となり、リリライトの教育係としてこの地に来てから、終始何事も上手くいっていた。何もかもがグスタフの思い通りに事が運んでいた。そのはずだったのに――
あの若造、態度は軽薄で飄々としているが、腹の中に1つも2つも抱えている。あの男が会話から得ていたのは言葉の情報ではなく、こちらの表情や態度――感情だ。リリライトの動揺を誘い、グスタフを挑発するような言動も全て計算通りということ。油断ならない人物だ。
こちらの反応から、コウメイは自分達が奴隷制度に何かしら関与していることを確信したに違いない。というか、奴自身がそう公言していた。足りないのは証拠だけ、おそらくそんな風に考えているのではないか。
まだ、そのことが表に出るには時期尚早だというのに。
「ええい、むしゃくしゃするのぅ」
暴れまわったことで、幾分か冷静さは取り戻したのか、しかしそれでも怒りの感情は吐き出しきれていないグスタフ。
ここまで全て思い通りにいっており良い気分だったのを、突然現れた訳の分からない若造に引っ掻き回されて、傲慢で不遜で自分勝手なグスタフが内心穏やかでいられるはずが無かった。
イライラしながら謁見室内を見渡すと、ふと椅子に座って怯えているリリライトが視界に入る。
「――ふん、まあ良いか」
そうして、ようやくグスタフは落ち着きを取り戻す。
なるほど、確かに油断ならない男ではある。しかし、どうやっても奴に今起こっていることの真相が分かるはずもない。頭が切れる切れない以前の問題で、グスタフの陰謀の全容など、誰も知ることが出来ないのだ。
あの若造に出来ることは、せいぜい場を引っ掻き回すことだけ。結局は何も出来ずに、グスタフの思い通りになるのだ。少なくとも、リリライトがグスタフの側にいる限り、計画が大きく狂うことはあり得ない。
「とはいえ、ああいった人間は厄介だ。放置しておくわけにはいかんなぁ」
今度はうろうろと謁見室内を歩き回る。
そんな支離滅裂なグスタフの行動が理解不能で、やはりリリライトは怯えて見つめていることしか出来なかった。だから、グスタフが何かを思いついて手を打った時に、びくっと反応してしまう。
「そうじゃ、殺してしまおう。そうすれば、何の憂いもなくなるじゃろうて」
何故そんなことも思い付かなかったのだろうか。幸いにも、しばらくはここいらに滞在するとのことで、方法などいくらでもある。そうだ、アンナにやらせてしまうのが一番手っ取り早い。
「と、そうそう。アンナで思い出しましたぞぉ、リリライト殿下ぁ」
そこまで思考を巡らせて、自分に都合のいい未来を想像するグスタフ。機嫌が直ったのか、いつものにやけた気持ち悪い笑顔をリリライトに向ける。
「今夜の“遊び”は、よりいっそう濃密に激しくいきますからのぅ。この滾った思いを、お互い存分に吐き出しましょうぞ」
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
「姫様も、あの豚親父も奴隷売買に関わっています。間違いない」
謁見を終えたコウメイがシンパと再会し、リリライト邸から白薔薇騎士団兵舎へ向かう馬車の中でおもむろに自らの結論を告げた。
そのコウメイの言葉に、シンパは驚きを隠せない。
「グ、グスタフ卿はともかく……リリライト殿下まで? 信じられません」
「はい、2人ともです。ただ……推測の域は出ないですけど、リリライト姫様はあのクソ豚野郎――グスタフに上手くコントロールされているって感じでしたね。何か弱みでも握られているのかも」
「弱み? リリライト殿下がグスタフ卿に? 何か確証でも?」
信じられないことを自信満々に言うコウメイに次々と疑問を浴びせかけるシンパ。コウメイは今しがた乗り越えてきた謁見の結果を考察するのに集中したかったが、シンパの立場から聞かずにはいられないのも納得できる。
コウメイは嫌な顔など一つせず、真面目な表情で答える。
「確証なんてない……っていうか、無いのは確証だけです。2人が関与していること、リリライト姫様がグスタフに逆らえない状況にあること。この2つだけは間違いないと思って良いです」
「――そんな」
グスタフがリリライトにバレずに裏でこそこそやっているというのならともかく――コウメイが包み隠さず話してくれたことは、とてもシンパには受け入れることは出来なかった。
しかし昨日まで飄々としていた若者が、今こうして真摯に自信ありげにそういうことを、疑うことも出来なかった。
「あと、危険かも。グスタフを挑発し過ぎました」
「――は?」
「いや、口先で煙に巻かれないように相手を逆撫でして土俵に乗せたんですけど……思っていた以上にムカつく野郎だったんで、口が止まらなかったんですよ」
その点については素直に反省するコウメイ。少なくとも、リリライトに1度諫められた後の暴言は不要だったはずだ。
「多分、長くここにいたら俺は殺される。クソ、ヘルベルト連合のことなんて全然調べられてないのに、参ったな」
シンパなど、今聞かされたコウメイの話についていくのに一杯一杯なのに、コウメイはもう先の未来のことを思案している。ついこの間この地に来たばかりの若者の能力に感心すると共に、ずっとこの地にいるはずの自分が全く気付くことが出来なかったことを歯痒く感じる。
「俺はとりあえず早々に引き上げることにしますよ。で、ルエール騎士団長とカリオス殿下に事の次第を伝えて……まあ、その後は展開次第ってとこですね。出来るなら、シンパ卿も身を隠した方がいい」
「わ、私もですか?」
「少なからず、俺と接触しているし、本当に申し訳ないんですけど俺が仲良くなったなんて言っちゃったんで、あの豚親父は貴女にも目を付ける可能性もある」
そう言ってシンパを見るコウメイの瞳に冗談の色は全く混じっていない。心底シンパの身を案じていることが感じられる。
だからこそシンパも真剣に答える。
「――私は、第2王女の近衛である白薔薇騎士団の騎士団長です。何があろうと、リリライト王女殿下の御側を離れるわけにはいきません」
「ま、貴女の立場だと簡単に姿を消すことは出来ないでしょう。それにグスタフも貴女に手をかけようと思っても、すぐには出来ないと思いますから、急ぐ必要もないかな」
自分で言っておきながら、シンパの返答を予想していたように返してくるコウメイ。この若者は一体どれくらいの先を予測しているのか。
「申し訳ないついでに、俺が引き上げるにあたってシンパ卿にお願いしたいことがあるんですけど、協力していただけますか?」
遠慮なくそう言ってのけるコウメイに、シンパは内心舌を巻く。
しかし、不思議と嫌な感情を彼に寄せることはない。彼は軽薄で飄々としているお調子者であることは確かだが、思慮深く誠実な人間だ。
現に、自分だけではなくシンパの身も案じてくれている。
それだけではなく、奴隷取引に関わっているというグスタフは糾弾しようとする意志が見え隠れするが、リリライトは何とか救おうとしてくれているのではないか。
リリライトに対して絶対的な忠誠を誓っているシンパは、コウメイを信頼してみようという気になった。
「私で出来ることであれば」
そんなシンパの返答に、コウメイはニカっと笑う。
「助かります。実は、御前試合の時から気になっていたんですが」
そうしてコウメイはシンパに顔を近づけて「お願い事」を伝える。すると次第にシンパの表情が驚きで満たされていく。
「――まさか、そんなことが?」
「信じられませんか?」
そういうコウメイは不安どころか、自信満々だった。シンパがコウメイの言うことを拒絶するはずがないと確信している表情。
「いや、確かにコウメイ殿がおっしゃることには筋が通っていて、否定することが出来ない、足りないのは相変わらず証拠だけだが、こうなればとことん信じてみましょう。間違っていたら、一緒に笑って謝ってもらえれば、それでいいです」
「にゃはは。シンパ卿もそういう冗談言うんですね」
そう言って笑うコウメイに、シンパも笑みを零す。
「――全く貴方という人は、随分と若いのに恐ろしいくらい冴えた方だ。さしずめ、先ほどの謁見の結果は完全勝利といった感じではないですか?」
そう言えば自信満々に肯定してくるだろうと思っていたシンパの思惑を、これまでしてきたのと同じように、コウメイは裏切る。
コウメイはそう問われれば、今までに見せたことがない、暗い表情で顔をうつむかせた。
「グスタフが何故、どうやってリリライト姫様を操っているのか。いや、姫様だけではなく御前試合のことも……何一つ分からない。こっちは後手に回るしかなくて圧倒的不利な状況ですよ。贔屓目に見ても、勝敗結果は『痛み分け』ってところです」
最後の方は苦笑しながら、そう零すコウメイ。
「それでも、最終的に負ける気は全くないですけど」
彼はシンパに言うではなく、自分に言い聞かせるように言うと、そのまま馬車の窓から外を見る。馬車の進む速度に合わせて流れていく風景をボーっと見ながら、何ともなしにつぶやく。
「こりゃ、思っている以上に大事になるかもなぁ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ヤンデレ社長は別れた妻を一途に愛しすぎている
藍川せりか
恋愛
コスメブランドでマーケティング兼アドバイザートレーナーとして働く茉莉花は三十歳のバツイチOL。離婚して一年、もう恋も結婚もしない! と仕事に没頭する彼女の前に、突然、別れた夫の裕典が新社長として現れた。戸惑う茉莉花をよそに、なぜか色気全開の容赦ないアプローチが始まって!? 分かり合えずに離婚した元旦那とまた恋に落ちるなんて不毛すぎる――そう思うのに、昔とは違う濃密な愛撫に心も体も甘く乱され、眠っていた女としての欲求が彼に向かって溢れ出し……。「もう遠慮しない。俺だけ見て、俺以外考えられないくらい愛させて」すれ違い元夫婦の、やり直し極上ラブ!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる