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第4章 激動の冬編
第93話 脱出劇の結末
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時は少し遡る。
リリライトを連れてリリライト邸を脱出したミリアムは、予定通りに白薔薇騎士団の兵舎へ向かっていた。
「なんてこと。本当に白薔薇騎士団が乗っ取られているなんて……」
屋敷から兵舎へ向かう途中、ミリアム達を追いかける追手と何度か出くわした。屋敷の中にはいなかった顔もあり、それはグスタフの魔の手が白薔薇騎士団全体にまで及んでいることを示唆していた。
グスタフの「異能」で強化されているとはいえ、数人程度の相手ならばミリアムの敵ではない。不要なまでに傷つけないよう手加減するほどの余裕もあったが、その驚愕の事実にミリアムはかつてない危機感を抱いていた。
やはり、このままあの悪魔を野放しにはしておけない。
「はぁ、はぁ……」
ミリアムに手を引かれるリリライトが苦しそうに息を弾ませる。ミリアムからしてみれば、かなりリリライトに合わせた歩調であり、正直なところもっと急ぎたいくらいだ。しかし強引に姫を引きずっていくわけにもいかない。
「大丈夫ですか、リリライト殿下。もう少し……兵舎まで辿り着けば、馬が手に入りますので」
「ぜえ、ぜえ……も、もう無理です。こんなの……はぁ、はぁ。限界……」
地面に膝をついて動かなくなるリリライト。
これも全てリリライトを救うためなのに、簡単に限界を決めるリリライトに、ミリアムは正直いらだちを感じずにはいられない。
しかし、これほどまでに過酷に体力を求められることなど、リリライトのここまでの人生には無かっただろう。
悪いのはリリライトではなくグスタフなのだ。ミリアムは私情をグッと抑える。
「辛いのは分かります。ですが、追手は増えるばかりです。どうかここ一番、頑張ってお立ち上がり下さい」
リリライトを気遣いながら、何とか立ち上がらせようとするミリアム。
すると、不意に人の気配を感じる。
「また追手か」
感覚を研ぎ澄ませながら、気配のする方へ視線を送り、リリライトを背後に庇うようにする。
ミリアムの指摘通りに、そこにいたのは追手と思われる女性。しかしこれまでの追手と違い、その人物は白薔薇騎士の白銀の鎧は身に着けていなかった。
「--学生? 奴はミュリヌス学園の学生にまで……」
学生の制服を着ていることから素性が一目で分かる。まだ騎士ですらない学生にまで手を出すとは、あまりに悪辣非道極まりない鬼畜の所業である。ミリアムの正義の心は怒りに震える。
「大人しく引いてくれないか。私は龍牙騎士ミリアムだ。奴の手で力が強化されていることは知っているが、学生では私とは相手にならない。頼む」
無駄な時間を取られたくないし、学生を傷つけたくない。切なる願いを込めて訴えるミリアムだが、目の前の女生徒はくすくすと笑う。
その女生徒は、この大陸では珍しい黒髪を短めにまとめている。騎士を目指す学生らしく、全体的に引き締まっていながらも決して華奢ではない健康的な美少女だ。明るく、活発そうな顔をしている。
「そうですか? 私は1年生ですが、一応首席の立場にあります。結構良い勝負が出来ると思いますよ」
必死な表情の龍牙騎士ミリアムと、余裕たっぷりの愛嬌のある笑顔を浮かべるミュリヌス学園の学生。立場がまるであべこべだった。
戦いが避けられないと判断するミリアムは、緑色の刀身をした騎士剣を抜く。出来るだけ時間をかけずに、可能な限り傷を負わせずに、と考えながら。
「ミュリヌス学園1年首席、リアラ=リンデブルグ」
女生徒ーーリアラは、学生にも関わらず騎士の礼儀に則って名乗るを上げる。学生にそうされたのであっては、誇り高き騎士であるミリアムは無視することは出来ない。
刺突剣を構えるリアラを見据え、ミリアムもまた名乗りを上げる。
「龍牙騎士ミリアム=ティンカーズ」
2人はジリジリと、油断なく間合いを詰める。
2人の間に、ふっと枯れ葉が吹かれてくる。そしてそれは図ったように、2人の距離の丁度真ん中の部分に舞い降りてきて--
床に触れた瞬間を合図にし、2人の剣線が激突する。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
「っあああ!」
両手を後ろ手に縛られて、ミリアムがリリライト邸地下室にいるグスタフの前に引き立てられたのは、それから1時間も立たなかった。
「ぐひひひ、ご苦労じゃったのうリアラ」
「は、離せっ! 離せ離せ離せっ! この悪魔がっ! 鬼畜がっ! 畜生がっ!」
地面に膝をつき、グスタフに向けて屈するような恰好を強いられているミリアム。姿勢は屈していても、その誇り高き精神はグスタフに対して牙を向いていた。
「く、くそ……馬鹿な。この私が、学生なんかにっ……!」
「ぐひっ、ぐひひひっ! ひどい言い草じゃのう。まあその油断がこのような状況を招いたともいえるか」
「あ、有り得ないっ! こんなこと、有り得ない!」
グスタフへの牙は折れていないものの、このような結果になったことに、ミリアムは悔しさと驚愕を隠せなかった。
学生相手にただ負けたのではない。龍牙騎士ナンバー2と言われた自分が、手も足も出なかったのだ。勝負どころか、大人が仕方なく子供の遊び相手をしているような、それくらい歴然とした実力差を見せつけられた。
今、自分の背後で、手を縛り動きを拘束しているこの女生徒ーーリアラ=リンデブルグに。
「く、くそう! 一体何を……どんな手を使ったというのだ! 貴様などに……くそ、くそおおおおお!」
「クソ、クソなどと、せっかくの美人が汚い言葉を連呼しおって……まあ、これからはそれ以上のド下品でドスケベな言葉を喜んで口にするようになるんじゃが」
「黙れ、この下衆が! 貴様の手に堕ちてなるものか! いっそのことこのまま殺せ! 団長達の足手まといになるくらいなら、死を選ぶ!」
「あー、もううるさいし短絡的で、強気女騎士テンプレの台詞ばっかり吐きおって。そんなんじゃから、お姫様1人救えんのじゃ」
「っ! そうだ、殿下……リリライト殿下はどこだ? 貴様、リリライト殿下に指一本でも触れてみろ、八つ裂きにするぞ」
魔封石の手枷で縛られている以上、今のミリアムに拘束を解く手段は無い。にも関わらず、今にも噛みつきそうな勢いでグスタフをにらみ、怒鳴りつけるミリアム。
しかし、グスタフは涼しい顔でミリアムをからかうように言う。
「おー、怖い怖い。このままじゃ殺されてしまうわい。その前に、とっとと来るんじゃ、リリ」
あの高貴なる純白の姫を愛称で呼ぶなど、親族以外には決して許されないことだ。そのグスタフの不敬な行為に、またも怒りでどうにかなりそうなミリアム。
しかしグスタフに声に従い部屋に入ってきたリリライトの姿に、ミリアムは怒りを忘れて、目を見開いて驚愕する。
「旦那さまぁぁぁ! リリ、旦那様がチョー気に入ってくれたスク水探してたら、時間かかってしまいましたぁ。さあ、生ハメ交尾しましょう。私と旦那様がラブラブなところを、この雌豚に見せつけちゃいましょう」
そこにいたのは純白の姫と謳われたその人本人とは、にわかには信じられない姿のリリライトであった。
大陸ではあまり見ない形の水着……なのだろうか。ミリアムが見たことのないようなタイプの、紺色のインナーのようなものを着ている。胸の部分には白い布地が張り付けられていて、「りりらいと」と書かれていて、どこか幼げな雰囲気を醸し出していた。
「ぐひひひ。この間、教えたじゃろう。旦那様はもう古い。ダーリンじゃ」
「ああん、ダーリン♪ 大好きぃ。むっちゅううううう」
リリライトは駆けだして、飛びつくようにグスタフに抱き着くと、首に腕を回しながら、唇を反りかえるようにしながら、舌を伸ばしてグスタフと濃厚な舌の絡み合いをする。
「レロレロっ……れろんっ……れろぉぉぉ……ああん、やっぱりダーリンのベロチュー最高ですぅ。マジ幸せ過ぎて、軽くイキまくっちゃう……んおっ……おほっ……れろんっ、れろんっ! ぶちゅうううっ!」
「うあ……あ……あ……」
そんな変わり果てたリリライトの姿に驚愕し、絶望するミリアム。
「なかなか演技派女優じゃったろう? ワシに無理やり従わされている、か弱い助けを求めるお姫様。このギャップがたまらんのう、うほっ! うほほほっ! うほおおおお!」
いや--よくよく思い返してみれば、不自然ではなかったか。
いやに口数が少なく多くを言わないリリライト。時々思い出したように、申し訳ない程度に助けを求めるだけだった。悪魔のような大臣から逃げようというのに、逃亡にもやけに消極的だった。
最初から既にリリライトもグスタフの手の内だった--それを前提にしてみれば、不自然だらけだ。演技派なんてとんでもない。ネタを知っていれば、誰だって違和感を持たずにはいられないほどの大根役者だ。
しかし、誇り高き騎士としての王族への忠誠ーーそれが、皮肉にもミリアムの目を曇らせ、「疑う」という思考を放棄させて、真実を覆い隠すこととなっていた。
「貴様、既にリリライト王女殿下もっ……その汚い手を離せっ! その不気味な顔で姫殿下と接吻など、有り得ないっ! くそおおおっ! 殺す殺す殺すっ! 必ず殺す! 絶対に殺す! 今すぐに殺してやるぅ!」
「ぐひゃーっはっはっはっは! ぶっほおおおおおおお! いひひひひ、ひーっひっひっひ! あひゃひゃひゃひゃっ!」
ミリアムが罵詈雑言を吐けば吐くほど、グスタフは唾液をまき散らしながら、狂ったように高笑いを上げる。
それはミリアムは知る由もないが、性行為の時とは違う愉悦の笑い。性的興奮とは違う、しかしそれ以上の快感と興奮を、グスタフは味わっていた。
豚のような醜悪な中年であるグスタフに、それと比べるべくもない美しい女性のミリアムが、成す術もなく膝をついて屈している。
グスタフよりも何倍も聡明で、思慮深く、理知的なミリアム。学生であるリアラに、ましてやグスタフに負けることなど露にも思っていなかったミリアムが、どうすることも出来ず悔しそうに呻いている。
ミリアムは自分ではそうとは知らず、グスタフの手の平で踊らされていただけだった。全てはグスタフの思い通り。何もかもが、グスタフが思うがままの結末を迎えていた。
「むほおおおおっ! おほおおおおおおおっ!」
愉悦の極みに達したグスタフは、ローブの中で射精する。大量の白濁がローブの中で暴発し、外から見てもぐっしょりと濡れているのが分かる程だ。
「っああ! 勿体ないです。ちゅううううっ」
リリライトがそれを見て、慌ててローブの上ににじみ出る白濁液を吸い出そうと、グスタフの股間部分に吸い付いて吸引する。
その異様な光景を、ミリアムは絶望感に打ちひしがれながら、もう言葉を発することも出来ずに見るしかなった。
「ふふ、怖がらなくて大丈夫ですよ。貴女もすぐにあれくらいの雌豚になりますから」
「っひ?」
あさましくグスタフの精を貪るリリライトの姿を見ながら、リアラはミリアムの背後からつぶやく。
そのあまりの不気味さに、ミリアムはここまで生きてきて発したことのないような悲鳴をこぼしてしまう。
「ねえ、グスタフ様」
リアラはうっとりとした表情でそうつぶやく。
見た目はミリアムに負けず劣らぬの美少女であるリアラ--ミリアムが後ろを振り向くと、その美しい顔をリアラはうっとりと淫蕩に蕩けせていた。そして、彼女の股間部分がスカートを盛り上げているのを見て、もうミリアムは気が狂いそうになっていた。
「さて、ここまでひっかきまわしたお前には、最高の躾を考えておるからのぅ。ぐひひひひ、ぶひひひひ、ぶっひいいいいいいいい!」
リリライトを連れてリリライト邸を脱出したミリアムは、予定通りに白薔薇騎士団の兵舎へ向かっていた。
「なんてこと。本当に白薔薇騎士団が乗っ取られているなんて……」
屋敷から兵舎へ向かう途中、ミリアム達を追いかける追手と何度か出くわした。屋敷の中にはいなかった顔もあり、それはグスタフの魔の手が白薔薇騎士団全体にまで及んでいることを示唆していた。
グスタフの「異能」で強化されているとはいえ、数人程度の相手ならばミリアムの敵ではない。不要なまでに傷つけないよう手加減するほどの余裕もあったが、その驚愕の事実にミリアムはかつてない危機感を抱いていた。
やはり、このままあの悪魔を野放しにはしておけない。
「はぁ、はぁ……」
ミリアムに手を引かれるリリライトが苦しそうに息を弾ませる。ミリアムからしてみれば、かなりリリライトに合わせた歩調であり、正直なところもっと急ぎたいくらいだ。しかし強引に姫を引きずっていくわけにもいかない。
「大丈夫ですか、リリライト殿下。もう少し……兵舎まで辿り着けば、馬が手に入りますので」
「ぜえ、ぜえ……も、もう無理です。こんなの……はぁ、はぁ。限界……」
地面に膝をついて動かなくなるリリライト。
これも全てリリライトを救うためなのに、簡単に限界を決めるリリライトに、ミリアムは正直いらだちを感じずにはいられない。
しかし、これほどまでに過酷に体力を求められることなど、リリライトのここまでの人生には無かっただろう。
悪いのはリリライトではなくグスタフなのだ。ミリアムは私情をグッと抑える。
「辛いのは分かります。ですが、追手は増えるばかりです。どうかここ一番、頑張ってお立ち上がり下さい」
リリライトを気遣いながら、何とか立ち上がらせようとするミリアム。
すると、不意に人の気配を感じる。
「また追手か」
感覚を研ぎ澄ませながら、気配のする方へ視線を送り、リリライトを背後に庇うようにする。
ミリアムの指摘通りに、そこにいたのは追手と思われる女性。しかしこれまでの追手と違い、その人物は白薔薇騎士の白銀の鎧は身に着けていなかった。
「--学生? 奴はミュリヌス学園の学生にまで……」
学生の制服を着ていることから素性が一目で分かる。まだ騎士ですらない学生にまで手を出すとは、あまりに悪辣非道極まりない鬼畜の所業である。ミリアムの正義の心は怒りに震える。
「大人しく引いてくれないか。私は龍牙騎士ミリアムだ。奴の手で力が強化されていることは知っているが、学生では私とは相手にならない。頼む」
無駄な時間を取られたくないし、学生を傷つけたくない。切なる願いを込めて訴えるミリアムだが、目の前の女生徒はくすくすと笑う。
その女生徒は、この大陸では珍しい黒髪を短めにまとめている。騎士を目指す学生らしく、全体的に引き締まっていながらも決して華奢ではない健康的な美少女だ。明るく、活発そうな顔をしている。
「そうですか? 私は1年生ですが、一応首席の立場にあります。結構良い勝負が出来ると思いますよ」
必死な表情の龍牙騎士ミリアムと、余裕たっぷりの愛嬌のある笑顔を浮かべるミュリヌス学園の学生。立場がまるであべこべだった。
戦いが避けられないと判断するミリアムは、緑色の刀身をした騎士剣を抜く。出来るだけ時間をかけずに、可能な限り傷を負わせずに、と考えながら。
「ミュリヌス学園1年首席、リアラ=リンデブルグ」
女生徒ーーリアラは、学生にも関わらず騎士の礼儀に則って名乗るを上げる。学生にそうされたのであっては、誇り高き騎士であるミリアムは無視することは出来ない。
刺突剣を構えるリアラを見据え、ミリアムもまた名乗りを上げる。
「龍牙騎士ミリアム=ティンカーズ」
2人はジリジリと、油断なく間合いを詰める。
2人の間に、ふっと枯れ葉が吹かれてくる。そしてそれは図ったように、2人の距離の丁度真ん中の部分に舞い降りてきて--
床に触れた瞬間を合図にし、2人の剣線が激突する。
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「っあああ!」
両手を後ろ手に縛られて、ミリアムがリリライト邸地下室にいるグスタフの前に引き立てられたのは、それから1時間も立たなかった。
「ぐひひひ、ご苦労じゃったのうリアラ」
「は、離せっ! 離せ離せ離せっ! この悪魔がっ! 鬼畜がっ! 畜生がっ!」
地面に膝をつき、グスタフに向けて屈するような恰好を強いられているミリアム。姿勢は屈していても、その誇り高き精神はグスタフに対して牙を向いていた。
「く、くそ……馬鹿な。この私が、学生なんかにっ……!」
「ぐひっ、ぐひひひっ! ひどい言い草じゃのう。まあその油断がこのような状況を招いたともいえるか」
「あ、有り得ないっ! こんなこと、有り得ない!」
グスタフへの牙は折れていないものの、このような結果になったことに、ミリアムは悔しさと驚愕を隠せなかった。
学生相手にただ負けたのではない。龍牙騎士ナンバー2と言われた自分が、手も足も出なかったのだ。勝負どころか、大人が仕方なく子供の遊び相手をしているような、それくらい歴然とした実力差を見せつけられた。
今、自分の背後で、手を縛り動きを拘束しているこの女生徒ーーリアラ=リンデブルグに。
「く、くそう! 一体何を……どんな手を使ったというのだ! 貴様などに……くそ、くそおおおおお!」
「クソ、クソなどと、せっかくの美人が汚い言葉を連呼しおって……まあ、これからはそれ以上のド下品でドスケベな言葉を喜んで口にするようになるんじゃが」
「黙れ、この下衆が! 貴様の手に堕ちてなるものか! いっそのことこのまま殺せ! 団長達の足手まといになるくらいなら、死を選ぶ!」
「あー、もううるさいし短絡的で、強気女騎士テンプレの台詞ばっかり吐きおって。そんなんじゃから、お姫様1人救えんのじゃ」
「っ! そうだ、殿下……リリライト殿下はどこだ? 貴様、リリライト殿下に指一本でも触れてみろ、八つ裂きにするぞ」
魔封石の手枷で縛られている以上、今のミリアムに拘束を解く手段は無い。にも関わらず、今にも噛みつきそうな勢いでグスタフをにらみ、怒鳴りつけるミリアム。
しかし、グスタフは涼しい顔でミリアムをからかうように言う。
「おー、怖い怖い。このままじゃ殺されてしまうわい。その前に、とっとと来るんじゃ、リリ」
あの高貴なる純白の姫を愛称で呼ぶなど、親族以外には決して許されないことだ。そのグスタフの不敬な行為に、またも怒りでどうにかなりそうなミリアム。
しかしグスタフに声に従い部屋に入ってきたリリライトの姿に、ミリアムは怒りを忘れて、目を見開いて驚愕する。
「旦那さまぁぁぁ! リリ、旦那様がチョー気に入ってくれたスク水探してたら、時間かかってしまいましたぁ。さあ、生ハメ交尾しましょう。私と旦那様がラブラブなところを、この雌豚に見せつけちゃいましょう」
そこにいたのは純白の姫と謳われたその人本人とは、にわかには信じられない姿のリリライトであった。
大陸ではあまり見ない形の水着……なのだろうか。ミリアムが見たことのないようなタイプの、紺色のインナーのようなものを着ている。胸の部分には白い布地が張り付けられていて、「りりらいと」と書かれていて、どこか幼げな雰囲気を醸し出していた。
「ぐひひひ。この間、教えたじゃろう。旦那様はもう古い。ダーリンじゃ」
「ああん、ダーリン♪ 大好きぃ。むっちゅううううう」
リリライトは駆けだして、飛びつくようにグスタフに抱き着くと、首に腕を回しながら、唇を反りかえるようにしながら、舌を伸ばしてグスタフと濃厚な舌の絡み合いをする。
「レロレロっ……れろんっ……れろぉぉぉ……ああん、やっぱりダーリンのベロチュー最高ですぅ。マジ幸せ過ぎて、軽くイキまくっちゃう……んおっ……おほっ……れろんっ、れろんっ! ぶちゅうううっ!」
「うあ……あ……あ……」
そんな変わり果てたリリライトの姿に驚愕し、絶望するミリアム。
「なかなか演技派女優じゃったろう? ワシに無理やり従わされている、か弱い助けを求めるお姫様。このギャップがたまらんのう、うほっ! うほほほっ! うほおおおお!」
いや--よくよく思い返してみれば、不自然ではなかったか。
いやに口数が少なく多くを言わないリリライト。時々思い出したように、申し訳ない程度に助けを求めるだけだった。悪魔のような大臣から逃げようというのに、逃亡にもやけに消極的だった。
最初から既にリリライトもグスタフの手の内だった--それを前提にしてみれば、不自然だらけだ。演技派なんてとんでもない。ネタを知っていれば、誰だって違和感を持たずにはいられないほどの大根役者だ。
しかし、誇り高き騎士としての王族への忠誠ーーそれが、皮肉にもミリアムの目を曇らせ、「疑う」という思考を放棄させて、真実を覆い隠すこととなっていた。
「貴様、既にリリライト王女殿下もっ……その汚い手を離せっ! その不気味な顔で姫殿下と接吻など、有り得ないっ! くそおおおっ! 殺す殺す殺すっ! 必ず殺す! 絶対に殺す! 今すぐに殺してやるぅ!」
「ぐひゃーっはっはっはっは! ぶっほおおおおおおお! いひひひひ、ひーっひっひっひ! あひゃひゃひゃひゃっ!」
ミリアムが罵詈雑言を吐けば吐くほど、グスタフは唾液をまき散らしながら、狂ったように高笑いを上げる。
それはミリアムは知る由もないが、性行為の時とは違う愉悦の笑い。性的興奮とは違う、しかしそれ以上の快感と興奮を、グスタフは味わっていた。
豚のような醜悪な中年であるグスタフに、それと比べるべくもない美しい女性のミリアムが、成す術もなく膝をついて屈している。
グスタフよりも何倍も聡明で、思慮深く、理知的なミリアム。学生であるリアラに、ましてやグスタフに負けることなど露にも思っていなかったミリアムが、どうすることも出来ず悔しそうに呻いている。
ミリアムは自分ではそうとは知らず、グスタフの手の平で踊らされていただけだった。全てはグスタフの思い通り。何もかもが、グスタフが思うがままの結末を迎えていた。
「むほおおおおっ! おほおおおおおおおっ!」
愉悦の極みに達したグスタフは、ローブの中で射精する。大量の白濁がローブの中で暴発し、外から見てもぐっしょりと濡れているのが分かる程だ。
「っああ! 勿体ないです。ちゅううううっ」
リリライトがそれを見て、慌ててローブの上ににじみ出る白濁液を吸い出そうと、グスタフの股間部分に吸い付いて吸引する。
その異様な光景を、ミリアムは絶望感に打ちひしがれながら、もう言葉を発することも出来ずに見るしかなった。
「ふふ、怖がらなくて大丈夫ですよ。貴女もすぐにあれくらいの雌豚になりますから」
「っひ?」
あさましくグスタフの精を貪るリリライトの姿を見ながら、リアラはミリアムの背後からつぶやく。
そのあまりの不気味さに、ミリアムはここまで生きてきて発したことのないような悲鳴をこぼしてしまう。
「ねえ、グスタフ様」
リアラはうっとりとした表情でそうつぶやく。
見た目はミリアムに負けず劣らぬの美少女であるリアラ--ミリアムが後ろを振り向くと、その美しい顔をリアラはうっとりと淫蕩に蕩けせていた。そして、彼女の股間部分がスカートを盛り上げているのを見て、もうミリアムは気が狂いそうになっていた。
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