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プロローグ
前夜の語らい
「いやー、今回のクエストも大成功だったね。アステリア」
「そうだね。シルフィもお疲れ様」
王都ウールフッドの宿屋の一室にて、2人組の冒険者がベッドに腰掛けながら会話に花を咲かせていた。
赤い髪を肩まで伸ばし、元気溌剌とした活発そうな印象を受けるのがシルフィ。風貌だけではなく、言動にもやや幼げな雰囲気を残すものの、美少女と言っても差し支えの無い風貌である。体型はやや細身ではあるが、それは前衛職らしく筋肉で引き締まっているからであり、女性らしく出ているところはしっかりと出ている。
もう片方、美しい金髪に翡翠の瞳をしたのはアステリア。シルフィに比べると、態度も体つきも大人っぽく見える。おっとりとのんびりしたように見えて、意外としっかり者である彼女は、後衛からシルフィを支えるヒーラーである。
「あのダンジョン、思ったよりも深かったねー。私、もうクタクタだよ~。魔物も何匹倒したかなぁ」
「魔物の数は多かったね。でも、ようやく今回のクエストも一区切りついたし、ようやくメイフルの村に帰れるね。アル、元気かな」
同じ村で育った幼馴染の2人は、そのままパーティーを組んで冒険者として生計を立てていた。メイフルというのは彼女らが生まれ育った村の名前だ。
アステリアの口から、村に残っている彼女らのもう1人の幼馴染であるアルの名前を聞くと、シルフィは意地悪そうな顔をしながら
「も~、アスティってば早くアルに会いたくて仕方ないんでしょう?」
「え? ち、違うってば。いや、そりゃアルに会うのは久しぶりだから楽しみだけど……そ、そんなんじゃ……あう……」
シルフィがからかうように言ってくると、アステリアは顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。
アステリアとアルことアルバードが恋人同士であることは、シルフィも知っている。
だから、もう数か月も村に戻っておらず、アステリアがアルのことで寂しく思っているのもシルフィは知っており、「にひひ」と笑いながら黙り込んでいるアステリアのことをからかうのだった。
「でも、王都からの馬車が出るのは明後日だもんねー。明日は王都でゆっくりしようよ」
「そうだね。ここのところクエストづくめだったし、少し羽を伸ばそうか……って、いっても何かすることあるかな?」
「にひひひ。そういうと思って……じゃ~ん」
そういってシルフィが取り出したのは2枚のチケットだった。白い歯を見せて笑うシルフィに、アステリアは疑問符を浮かべながら首をかしげる。
「今日、商業区を歩いてたら怪しいおじさんからもらったんだ」
「あ、怪しいおじさん……って、何それ?」
「これ、エステサロンのお店で、今流行りのオイルマッサージをしてくれるんだって。しかも王都でも超人気店で、3か月後の予約も埋まってるんだって」
「そ、そんなお店のチケットをもらえたの? 怪しいおじさんから? う~ん……だ、大丈夫かなぁ」
当然と言えば当然の疑問に顔を曇らせるアステリアだったが、シルフィは能天気な笑みを浮かべながら、能天気に答える。
「大丈夫だってば。これしてもらえると、マッサージで疲れが取れるだけじゃなくて、すっごく綺麗になれるんだって。私も前からちょっと興味あったけど1人だとちょっと行きにくかったし。一緒に行こうよ。ね? ね? アスティ」
「う~ん……」
身を乗り出して言ってくるシルフィに、それでもためらう声を出すアステリア。
何といっても怪しすぎる。というか、安心出来る材料が1つもないのだが。
しかし「綺麗になる」という女性にとっての永遠のテーマは、やはり女性であるアステリアにとっても非常に魅力的である。
(アルにも綺麗になったね、って言われたいな)
いかにも恋する乙女らしい純真な願望が、警戒心に揺れるアステリアの背中を押した。
「そうだね。やる事もないし、試しに行ってみよう……かな」
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