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異世界転移・転生の話をするとフラグになるらしい
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「なぁ、異世界に行けるとしたらどういう方法がいい?」
「はぁ? なんだよいきなり」
ライトノベルを片手にした拓海が、読んでいた本を閉じてこっちに視線を向けてきた。今は下校中の電車の中だ。ちょうど読み終わっただろうライトノベルを俺に差し出してくる。タイトルは『異世界に転移した俺は、トラックの運ちゃんと共に無双する』と書かれていた。
「おいおい、転移アイテムまで一緒に転移してんじゃねぇか」
「だけど異世界転移の定番と言えば定番だよね」
まぁトラックに轢かれて転移や転生するのはそうだな。
「あと有名どころは過労死とか病死とか……、あとはクラス転移がそうかな?」
「そうそう。まぁトラックごと転移ってちょっと珍しかったから買ってみたんだけどね」
「それがさっきの疑問につながったと?」
「うん。他に何かないかなぁって」
そう呟くと、両腕を組んで考え込む拓海。
「あー、巻き込まれ転移とかもあるか……」
「転移した方法はある程度テンプレ化してるよね」
「まぁなぁ。メインは異世界で無双する話だろうし」
最寄り駅に着いたので、二人そろって電車を降りる。快速電車の止まらない、そこそこさびれた駅ではある。ただし国道沿線にある駅なので交通量は多い。
「スローライフ系もあるけどね」
「はは。異世界に行ったらお前はどっち派?」
「そりゃあ僕はスローライフかな」
「なんだよそりゃ。男なら俺TUEEEしたいって思わねぇの?」
まったく覇気の感じられない拓海を鼻で笑いつつ、信号が青になった交差点へと足を踏み入れる。
「別にいいじゃない。正宗は正宗で、日本刀振り回して無双すればいいし」
「……なんで日本刀なんだよ」
ジト目で拓海に視線をやるが、まったく悪びれた様子も見せない。まぁ日本刀が好きなのは否定しないが。
「えっ? 前に男のロマンって言ってなかったっけ?」
「そうだっけ?」
なんとなく中二を指摘されたような気がして、ごまかしておく。
――と、そのとき。
「あ、危ない!!」
どこからともなく危険を告げる叫び声が上がる。
何事かと周囲を見回すと、赤信号を無視してこっちに突っ込んでくるトラックと目が合った。
「えっ?」
拓海はまだ気が付いていないのか、間抜けな声を出すだけだ。だがしかし、事態はそれだけでは終わらなかった。
道路の真ん中に巨大な魔法陣が現れたのだ。半径数十メートルだろうか。俺たち二人以外の人は範囲に入ってなさそうだが、突っ込んでくるトラックの反対側で信号待ちをする車は範囲内に入っている。
「なんじゃこりゃ!」
ふと拓海から渡されたライトノベルが頭に浮かぶがそれどころではない。とりあえずここから逃げなくてはならないのだ。轢かれるのが先か、よくわからない魔法陣で召喚されるのが先か。いやこれが異世界召喚のためのものという確信があるわけじゃないが、もうこのシチュエーションなのだ。断定してもいいんじゃなかろうか。
とっさに拓海の腕を掴んで地面を力強く蹴りつけて脱出を図る。しかしトラックの勢いは全く弱まる様子がない。
「やべぇ!」
「お、お母さーーん!!」
拓海からは情けない叫び声が聞こえるがそれどころじゃない。
このままじゃ轢かれてしまう。
そう思ったとき。
――魔法陣とともに突っ込んできたトラックが姿を消した。
「……へっ?」
あたりが静寂に包まれ、誰も言葉を発しようとしない。さっきまでトラックが迫ってきた方向に目を向けるも、まったくその影も見えなくなっている。
「な……、なにが……」
周囲を見回してみても、後ろにはさっき降りた電車の駅が見える。現在地は横断歩道の途中だ。青だった歩行者信号はとっくに赤になっており、車道の信号は青になっている。だが信号待ちをしていた車も動き出す様子がない。
それはそうだろう。さっきまで爆走していたトラックが消えたのだ。通行人である一般運転手も正気に戻れていなかったのだ。
「てっきりこのあと、『よくぞきた勇者よ』とか、見知らぬ場所で声をかけられるのかと思ったが……」
「う……、うん」
拓海も同意見だったらしい。……だけどこうなるとアレだな。
「――異世界終わったな」
きっと見知らぬ異世界では、召喚者がトラックに突っ込まれてえらいことになっているに違いない。
「はぁ? なんだよいきなり」
ライトノベルを片手にした拓海が、読んでいた本を閉じてこっちに視線を向けてきた。今は下校中の電車の中だ。ちょうど読み終わっただろうライトノベルを俺に差し出してくる。タイトルは『異世界に転移した俺は、トラックの運ちゃんと共に無双する』と書かれていた。
「おいおい、転移アイテムまで一緒に転移してんじゃねぇか」
「だけど異世界転移の定番と言えば定番だよね」
まぁトラックに轢かれて転移や転生するのはそうだな。
「あと有名どころは過労死とか病死とか……、あとはクラス転移がそうかな?」
「そうそう。まぁトラックごと転移ってちょっと珍しかったから買ってみたんだけどね」
「それがさっきの疑問につながったと?」
「うん。他に何かないかなぁって」
そう呟くと、両腕を組んで考え込む拓海。
「あー、巻き込まれ転移とかもあるか……」
「転移した方法はある程度テンプレ化してるよね」
「まぁなぁ。メインは異世界で無双する話だろうし」
最寄り駅に着いたので、二人そろって電車を降りる。快速電車の止まらない、そこそこさびれた駅ではある。ただし国道沿線にある駅なので交通量は多い。
「スローライフ系もあるけどね」
「はは。異世界に行ったらお前はどっち派?」
「そりゃあ僕はスローライフかな」
「なんだよそりゃ。男なら俺TUEEEしたいって思わねぇの?」
まったく覇気の感じられない拓海を鼻で笑いつつ、信号が青になった交差点へと足を踏み入れる。
「別にいいじゃない。正宗は正宗で、日本刀振り回して無双すればいいし」
「……なんで日本刀なんだよ」
ジト目で拓海に視線をやるが、まったく悪びれた様子も見せない。まぁ日本刀が好きなのは否定しないが。
「えっ? 前に男のロマンって言ってなかったっけ?」
「そうだっけ?」
なんとなく中二を指摘されたような気がして、ごまかしておく。
――と、そのとき。
「あ、危ない!!」
どこからともなく危険を告げる叫び声が上がる。
何事かと周囲を見回すと、赤信号を無視してこっちに突っ込んでくるトラックと目が合った。
「えっ?」
拓海はまだ気が付いていないのか、間抜けな声を出すだけだ。だがしかし、事態はそれだけでは終わらなかった。
道路の真ん中に巨大な魔法陣が現れたのだ。半径数十メートルだろうか。俺たち二人以外の人は範囲に入ってなさそうだが、突っ込んでくるトラックの反対側で信号待ちをする車は範囲内に入っている。
「なんじゃこりゃ!」
ふと拓海から渡されたライトノベルが頭に浮かぶがそれどころではない。とりあえずここから逃げなくてはならないのだ。轢かれるのが先か、よくわからない魔法陣で召喚されるのが先か。いやこれが異世界召喚のためのものという確信があるわけじゃないが、もうこのシチュエーションなのだ。断定してもいいんじゃなかろうか。
とっさに拓海の腕を掴んで地面を力強く蹴りつけて脱出を図る。しかしトラックの勢いは全く弱まる様子がない。
「やべぇ!」
「お、お母さーーん!!」
拓海からは情けない叫び声が聞こえるがそれどころじゃない。
このままじゃ轢かれてしまう。
そう思ったとき。
――魔法陣とともに突っ込んできたトラックが姿を消した。
「……へっ?」
あたりが静寂に包まれ、誰も言葉を発しようとしない。さっきまでトラックが迫ってきた方向に目を向けるも、まったくその影も見えなくなっている。
「な……、なにが……」
周囲を見回してみても、後ろにはさっき降りた電車の駅が見える。現在地は横断歩道の途中だ。青だった歩行者信号はとっくに赤になっており、車道の信号は青になっている。だが信号待ちをしていた車も動き出す様子がない。
それはそうだろう。さっきまで爆走していたトラックが消えたのだ。通行人である一般運転手も正気に戻れていなかったのだ。
「てっきりこのあと、『よくぞきた勇者よ』とか、見知らぬ場所で声をかけられるのかと思ったが……」
「う……、うん」
拓海も同意見だったらしい。……だけどこうなるとアレだな。
「――異世界終わったな」
きっと見知らぬ異世界では、召喚者がトラックに突っ込まれてえらいことになっているに違いない。
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