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揺れるのはいいことです

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「整列が終わったら準備体操から始めましょうか。体育館内を軽く五周走って、そのあと柔軟体操ね」

 ある程度整列が終わった俺たちに、先生がそう告げる。

「じゃあ行くわよー」

 と思ったら先生が先頭を切って走り出した。
 慌てて生徒も追いかけて走り出すが、そのスピードはそこまで早いものでもない。

「バスケかー」

 走り出した途端に列が崩れたからか、隣に並んで走り出した静がそう呟いている。
 俺も一緒に走り出しすが、なんだこれ……。思ったより体が軽いかも?
 この体になって初めて運動するが、思ったより動きそうだな。……けど何か違和感が。なんだろ……。

「圭ちゃんは、運動、得意?」

 心の中で首を傾げていると、隣で走る静が途切れ途切れになりながら聞いてきた。
 運動が得意と聞かれましても、正直にわかりませんな。

「得意だったけど、今はどうだろね?」

 なので正直に答えるしかあるまい。

「ほうほう」

 今まで体育なんぞ男どもとしかやったことないからか、誰も以前の俺の体育については知らないか。

「アンタ、もう、ダンクシュートとか、できなくなったんじゃない?」

 そんな俺たちの声を拾ったのか、佳織の声が後ろから聞こえてきた。
 振り向くと案の定佳織と、その隣には千亜季が走っている。

 ――あっ。

 そこで違和感に気が付いた。
 そうなのだ。男の時にはなかったものが、走った時に揺れているのだ。
 走る千亜季を真正面から見ればそれはもうよくわかる。つまりおっぱいが揺れているのだ! こう、バインバインと上下に!
 小柄な千亜季ではあるが、そのおっぱいは他の女子生徒より抜きんでている。それが見事に縦揺れを起こしているのだ。
 そして自分の胸元へと視線を戻すと……、かすかにではあるが揺れているではないか!

「ええー!? ダンクシュート、なんて、できてたの!?」

 おっぱいの揺れに感動しているところに、隣の静がダンクシュートに興奮して叫んでいる。
 思わずそっちへと視線が行くが――。特に揺れてはいないようだ。残念。

「今は絶対無理だろうね」

「そりゃー、そうだろう、ねぇ」

 俺を見下ろしながら静が残念そうにしている。
 体は軽く感じているが、さすがにそこまでジャンプできるとは思えない。見せてやれないのは残念だがしょうがあるまい。

「でも、圭ちゃん、すごい」

 後ろから千亜季が褒めてくれる声がしたので、振り向いて笑顔でピースしておいた。
 ついでにちらりと佳織も観察してみるが……、おお、かすかに揺れてるな……。佳織のおっぱいも揺れるということか。
 幼馴染で散々佳織のことは見てきたと思ってたが、これは知らなかった。新しい一面を見れたな。
 そのまま他の女子生徒も観察してみるが、やはり大きければ揺れるのは間違いないようだ。

「ラスト一周!」

 集団の先頭では先生が張り切っている。もうそんなに走ったのか。
 あんまり疲れた感じはしないが……。
 といっても体育館内の一周は短いしね。ほら、もう終わった。

 俺は大きく深呼吸をして息を整える。静や千亜季は肩で大きく息をしてるが、お前ら体力なさすぎだろ。
 佳織はそれなりに平気そうにしてるし……。

「よーし、最初の授業だし、細かいことはやめておきましょうか。柔軟体操したらゲームをしましょう」

 先生のその言葉に生徒たちが若干沸き立つ。バスケの授業だからってドリブルやパスの練習よりは、そりゃゲームのほうが楽しいはずだ。
 だがしかし、ここでも俺は自分の体に驚愕することになる。

「圭ちゃんって……、すっごく柔らかいね……」

 いやホント、この長座体前屈ってやつ? 床に座って足を前にまっすぐ伸ばして、つま先に向かって上半身を倒していくやつ。
 おっぱいが膝にくっついちゃったよ?
 よし、ついでに開脚もしてみるか……、おぉぅ、マジか。ほぼ180度開くじゃねーか。
 男の時もそれほど硬かったわけじゃないが、今ほどじゃなかったな……。

「自分でもビックリだ」

 などと自分の柔らかさを確認している間に柔軟体操が終わった。



 体育館内にはバスケットコートが二面取れる広さになっている。一度に試合ができるのは四チームだ。
 五組と六組の合同クラスは合計四十人。整列すると八列になって背の順に並んでいることもあって、一列で一チームということになった。
 しかしこのバスケというスポーツはなんとけしからんことか。
 自分だけかもしれないが、シュートモーションのときにおっぱいが揺れる揺れる。

「誰か圭ちゃん止めて!」

「……ちょっ、無理よ!」

 相手チームの叫び声が聞こえるがひたすらにスルーだ。
 この小柄な体型では力もないと思ったんだが……、そうでもないらしい。運動に関しては、体格が小さくなったことへの戸惑いはあったものの、以前と遜色なく動けていると思う。
 膝を曲げて上体を縮めると、全身のバネを使いジャンプと共に開放する。スリーポイントラインの外から、俺はワンハンドシュートでゴールを狙う。
 このシュートでゴールに届くとは思っていなかったのだが……、放たれたボールは、放物線を描いてリングに触れることなくゴールへと吸い込まれた。

「ナイスシュート!」

 俺は声を掛けてくれたチームメイトとハイタッチを交わす。

「よく届くわね」

「自分でもビックリだけどね」

 六組の生徒だったが、どうやら俺に抵抗はないようだ。この娘のおっぱいもよく揺れて大変よろしい。
 揺れるおっぱいと言えば、同じチームの千亜季だろうか。
 小柄な体格だが、その大きさを誇るおっぱいの揺れは、そりゃもうすごかったとだけ添えておこう。
 ランニングもいいけど、バスケだね!
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