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アルバムの中の俺

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「ほほぅ……、これはいいものですなぁ」

「うん……。圭ちゃん手慣れてるね」

「だけどもうちょっとこう、かわいいエプロンだったらよかったのに」

「エプロンも使いこなしてる感じがするよ」

 なんとなく種類の違う二人からの称賛を浴びながら、俺はお昼ご飯を作る作業に勤しんでいる。
 着飾るのも悪くないと思いつつある俺ではあるが、誰が見るでもないエプロンは昔使っていたやつそのままだ。
 エプロン新しくしたら使い勝手変わるしなぁ。

 とりあえずお昼は簡単に済ませる予定なので、特に手伝いは不要と断っている。お皿を並べるくらいは頼んだが。
 本日のメニューは皿うどんだ。材料を切って炒めて水と付属の出汁を追加してひと煮立ちすればほら完成。簡単なもんだ。

「圭一って、皿うどんが好物だったわよね?」

 お皿を並べ終わった佳織が、固まったままの麺を砕きながら尋ねてきた。
 静は手で麺の塊を割っていて、千亜季は袋の上から手で揉んでほぐしている。

「うん? そうだけど」

「好物は変わってないのね?」

 何を聞きたいのかわからんが、食べ物の好き嫌いはあんまり変わってないと思う。……たぶん。
 甘いものは前より食べるようになったと思うが。

「おう、……ほとんど変わってないな」

「へぇ、圭ちゃんって皿うどん好きなんだ」

「そうなのよね……、なのに四人前しかないから変だなーって」

 うん? 何が変なのかわからんが、まぁ食う量は減ったからな。
 あぁ、そういうことか。男の時なら皿うどんは三人前は食ってた気がする。さすがにもうそんなに食えないから通常通りの一人前だ。
 だから今作ってるのも四人前だな。

「こんなもんかな?」

 かき混ぜていた鍋の火を止めて、ダイニングテーブルに準備されている鍋敷きの上へと移動させる。

「……重っ」

 以前まで作っていた三人前より一人分多いだけだが、今の自分にはずっしりとくる。

「はい、できたよー。適当に麺にかけてくれ」

「おおー、おいしそう!」

 さっそく静が鍋を覗き込んではしゃいでいる。そのままお玉へと手を伸ばすと、中身を少しかき混ぜ、自分の分を取り分けてから千亜季へと手渡す。
 千亜季も自分で取り分けると、隣の佳織へとお玉を手渡した。

「……圭一の皿うどんも久しぶりね」

「えっ!? 佳織ちゃん、食べたことあるの!?」

 しみじみとした呟きに反応したのは静だ。

「佳織ちゃんずるい」

 千亜季も小さい声で反応しているが、俺にはしっかりと聞こえている。
 幼馴染なんだから、普段から自炊する俺が作った料理を佳織が食べることはあるのだ。
 お玉が一周して全員に行き渡ったところでさっさと食おう。

「「「「いただきます!」」」」



 皿うどんは好評だった。簡単に作れて失敗する要素もほぼないので、当然と言えば当然だが。
 後片付けは三人に任せ、風呂掃除などの雑用を済ませると自分の部屋へと戻る。もちろん男部屋ではなく、今の自分の部屋だ。

「おかえりー」

「ただいまー……、って何やってんの?」

 三人集まって床に広げた何かを見ているようだが、俺の部屋にみんなの関心を引くようなもの置いてあったかな。
 首を傾げていると、三人揃って床に置いた物と俺を交互に見比べている。
 ……ってアルバムかい。どこから持ってきたんだ。ってそりゃ俺の男部屋からか。……いや、佳織が持ってきたアルバムかもしれんな。

「似てる……、わね……」

「うん……。圭ちゃんをちっちゃくしたらこんな感じじゃないかな」

「ちゃんと見比べたことなかったけど……、確かに」

 そういや佳織のおじさんとおばさんにも言われたな……。小さい頃の俺に似てるって。だからって昔のアルバムを引っ張り出して確認はしなかったが。

「どれどれ」

 三人の輪の中に入って一緒にアルバムを眺めるが、どうやら佳織のアルバムらしかった。ちょうど開いているページは幼稚園くらいの写真だろうか。
 佳織と俺が手を繋いでピースサインをした姿が写っていた。
 これくらい小さいと男と女の違いなんて髪の長さと服装くらいだろうか。身長のほぼ変わらない二人がそこにはいた。

「うーむ……」

 ……似てるっちゃ似てるのかな。言われただけではピンとこなかったが、実際に写真を見れば似てるかもしれない。
 ポーチから鏡を取り出して改めて自分の顔を確認すると……。

「……俺っぽいな」

「でしょー」

 俺としてはまったく別人になった気分だったが、顔は似ているようである。
 ふむ……。そうか……。
 別の角度からも、俺は俺なんだと再確認できたことはいいことだな。

「さーて、じゃあ買い物行くか!」

 しばらく他愛のない会話をしていたが、区切りがついたところで俺は三人に向かって宣言する。

「買い物?」

 首を傾げるのは静だ。まぁ言いたいこともわからんでもない。唐突に言ったしな。
 だがしかし、それにはわけがあるのだ。

「おう。夕飯の食材を調達に行かねばならんのだよ」

 我が家で駄弁だべってゴロゴロしていても晩飯は勝手に出てこないのだ。

「はい!」

 横柄に俺が理由を述べていると、静が勢いよく手を挙げた。

「どうした静くん」

「カレーが食べたいです!」

 口調もそのままに続きを促すと、手を挙げた姿勢のままに希望を告げてくる。

「佳織と千亜季は?」

「あたしもカレーでいいよ」

「私も大丈夫だよ」

 他の二人にも意見を聞いてみるが、特に反対はないらしい。

「じゃあキッチンで在庫を確認して買い物に出発!」

「「「おー!」」」
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