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38.※ ガマンできない

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「紺野、家に帰るのか? だったら、送ってくけど」

紺野はまだ赤い瞳でニコって笑った。

「ありがと。 でも大丈夫。 綾乃と待ち合わせしてるの」

「河原と?」

「うん。 今日綾乃、城井くんに会おうって言われたって・・・・ あ、レイキくん、知ってるよね?
それで、綾乃もフラれちゃうだろうから、慰め合おうって言ってるの」

「そー・・・なんだ・・・」


2人とも、ホントにオレたちのこと気づいてたんだな・・・・



河原との待ち合わせ場所を聞いたら、オレがあきらと待ち合わせしているところと同じだった。

ここから、そう遠くない公園。

その噴水の前だった。


「あ・・・・オレたちもそこで、待ち合わせ、してんだ・・・。 でも、ちょっと微妙、だよな・・・・」

あきらに連絡して、待ち合わせ場所を変えるか・・・

そう思ってLINEしようとすると、


「レイキくん、変えなくていいよ。 ・・・・・一緒に行こう?」

「でも・・・・」

「いいの・・・・ 送って、くれる?」


・・・・送ってやるって、言ったしな。


「わかった。 送るよ。 一緒に行こう」





待ち合わせ場所の噴水の前に行くと、あきらと河原はまだ来てなかった。


「・・・・・まだみたいだな」

「・・・・・うん」


・・・・・沈黙が降りる。

・・・・・・なんか、気まずい・・・・・



その時、オレのスマホが鳴った。

・・・・・・あきらだ。


『レイキ? 今から待ち合わせ場所に行くんだけどさ』

あきらは場所を変えようと言ってきた。


「あのさ、紺野がそのままでいいからって。 オレ、今紺野と一緒に待ってんだ」

『そう・・・・なんだ』

あきらも少し驚いたようだ。


『・・・わかった。 じゃあ、河原と、そこ、行くな』


電話を切って、紺野を見る。

「あきらたち、来るってさ」



しばらくすると、あきらと河原がやってきた。


「美月・・・・・!」

「綾乃・・・・・・!」

2人は駆け寄って、手を取り合った。 ・・・・2人とも、瞳が潤んでる。


「2人とも・・・ゴメンな・・・・」

オレが声をかけると、紺野は潤んだ瞳のまま、微笑んでオレを振り返った。


「ううん。 ゴメンじゃないよ。 ・・・・・レイキくん、ありがとう」


不意に、手を掴まれた。

「あきら」

「レイキ、いこーぜ。 ・・・・2人とも、また学校でな」


そのままあきらはオレの手を引いて歩き出した。

オレは2人に手を振って、あきらについていく。


オレの手を引いて歩いていく、あきらの後ろ姿を見つめる。

・・・・河原には、ちゃんと話をしてきてくれたんだろう。

河原じゃなくて、オレの手を取ってくれたんだ・・・・


改めて、あきらが女のコじゃなくて、オレを選んでくれたんだって感じて、嬉しくなった。


・・・・・急にあきらに抱き着きたくなる。


オレは歩いてきた方を振り返った。

・・・・もう、2人は見えなくなったよな。



「あきら」

オレが呼ぶと、あきらは足を止めてオレを振り返った。


ここの公園は大きくて、日曜日というのもあり、人もたくさんいる。

さっきの噴水の前は、待ち合わせのスポットだし、

ジョギングしてる人、

散歩をしてる人、

子連れで遊んでる人、

そんな人が、周りにはたくさんいる。



でも

どうしてもあきらに触れたくなって。



オレはあきらの首に腕を回して抱き着いた。


「あきら・・・・好きだよ」

あきらの耳にだけ届くように、呟く。


あきらもオレの腰と背中に腕を回して抱きしめてくれた。

ふわって、香水のかおりにも包まれる。


「レイキ・・・・オレも。 好きだよ」



あきらの低くてイイ声が耳元で響いて・・・・


オレの腰が、ぞくって、した。



あきらの声、好きだな・・・・



あきらの手が、オレの後頭部に回された。


「レイキ・・・・・ゴメン。 オレ、ガマンできねー・・・・」


言って、あきらはオレに唇を寄せてきた。



・・・・周りには、人がたくさん、いる。

抱きしめあってるだけでも、目立つ、はず、だけど。



「・・・・・オレも、ガマンできねーよ・・・・・・」


オレは目を閉じて、あきらのキスを受け入れた。



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