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出社すれば日常
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家を出てからは、いつもの電車にのりいつもの時間に会社についた。
同じ会社の人間にあうたびに挨拶をされたりしたりしながら、自分のフロワーまでくると席座った。
(アレは夢みたいだ)
優吾の勤務会社はフレックスであるが、もうすぐコアタイムになるためフロワーには殆どの社員が仕事をしていた。
「おはようございます。この案件について宜しいでしょうか?」
パソコンに電源をいれてすぐに、優吾の部下が話しかけてきた。
「あぁ」
優吾は表情をかえずに返事をすると彼が持ってきた案件をみた。
「君は昨日の会議は欠席したのか?」
優吾が彼の顔を見ると、彼はビクリとして下を向き「いえ」と小さな声で答えた。
優吾はため息をつくと、パソコンを向きメッセージを送った。
すると、すぐに眼鏡をかけた太目の男性が慌ててきた。
「彼の補佐は君だったな」
「はい」
優吾は頷くと、彼が持ってきた資料を男性に渡した。男性は、資料をじっと見ると「失礼致しました」頭を下げた。
「どうしたんですか?」
「あー、これは昨日の会議で仕様変更したんだ」
「あ、そういえば」
納得する部下に男性は頭をかかえた。
優吾は彼らを細い目でみると、「これ貰う」そう言って資料を男性から受け取ると近くのゴミ箱にすてた。
「え……」
部下が驚いていると、優吾は「必要ないから」と一言言うとパソコンの画面をむいた。
部下は真っ青な顔をして動けなくなった。男性は彼の方を優しく支えて、席まで送った。
「彼は優しいな、星も見習った方がいいよ」
横の机に座っている同僚の速水がにこやかに声をかけた。
「私は、そんなに厳しくないと思うが」
「いやー、今部下をびびらせたじゃん。案件間違えたくらいで怒らないでよ」
彼の言葉に優吾は首を傾げた。
「怒ってはない」
「資料捨てたじゃん」
「それは、もう必要ないからだ。彼が持って帰ったらまた間違うかもしれない」
速水は「あー」と言って額に手をやった。
「なんだ? 間違っているか?」
速水はため息をつきながら、「正しいと思うよ」と言った。
コアタイムが終わり少したつと、優吾は机の周りを片付けて帰宅の準備をはじめた。
「あれ? もう帰るの?」
「あぁ」
「珍しいじゃん。こんなに早く帰るなんて」
速水が優吾の机を覗き込んだ。彼の机は必要な物しかなく埃ひとつない。
「あぁ。いつも部下の仕事内容を確認していたが今日はそれを昼にやった。午後の分は明日やる」
「へー」
速水はニヤリと口角をあげた。
「何か予定があるの? こんな早いの何年ぶり?」
「……いや、別に。それでは先に失礼する」
そう言うと、優吾は鞄を持ち部屋を出て行った。それを速水は面白そうに見てた。
「速水さん、よく星さんにあんなこと聞けますね」
速水の真後ろに座る岡田が不安そうな声で、言った。速水は椅子をクルリと回して彼の方を見た。
「えー、まぁ同期だし?」
「同期でも上司ですよ。リーダーに軽口が叩けるのは尊敬します」
「そーかぁー」
速水は椅子の背もたれにより、掛かりながらゆらゆらと椅子を左右に揺らした。
コアタイムが終了したため、フロワーにいる人数はたいぶ少なくなったが雑談をする速水と岡田を気にする女子社員がチラホラいた。
「だって、星さんめちゃくちゃ怖いじゃないですか。笑わないし」
「怖くはないけど、確かに飲み会でも笑わないよね。表情筋死んでるんじゃないかぁ」
速水はケラケラと笑った。
「速水さん。明日、星さんに今日のこと聞いて下さい」
「今日の?」
岡田はワクワク、何かを期待しているような顔して、速水に頼んだ。
「はい。あの星さんが早くも帰った理由ですよ」
「自分で聞けよ」
「怖いんですよ。女の子ですかね?」
「女の子ねぇ? 俺、星とは何年も付き合いになが聞いたことないんだよね? モテるのにね」
「ほんとにソレです」
岡田は不満そうに、眉を寄せて優吾の綺麗に片付いた机をみた。
「仕事ができて、顔が良いことは認めますが愛想ないですよ。すぐ、睨む」
「あはは、だから皆、隠れファンみたいなんだよね」
本人不在の優吾の席を見て目を大きくしコソコソと話す女子社員が速水と岡田の目に入った。
「はぁ、俺のがにこにこして優しいのに……」
「岡田……」
優吾を羨ましいがる岡田を見て速水は同情した。
同じ会社の人間にあうたびに挨拶をされたりしたりしながら、自分のフロワーまでくると席座った。
(アレは夢みたいだ)
優吾の勤務会社はフレックスであるが、もうすぐコアタイムになるためフロワーには殆どの社員が仕事をしていた。
「おはようございます。この案件について宜しいでしょうか?」
パソコンに電源をいれてすぐに、優吾の部下が話しかけてきた。
「あぁ」
優吾は表情をかえずに返事をすると彼が持ってきた案件をみた。
「君は昨日の会議は欠席したのか?」
優吾が彼の顔を見ると、彼はビクリとして下を向き「いえ」と小さな声で答えた。
優吾はため息をつくと、パソコンを向きメッセージを送った。
すると、すぐに眼鏡をかけた太目の男性が慌ててきた。
「彼の補佐は君だったな」
「はい」
優吾は頷くと、彼が持ってきた資料を男性に渡した。男性は、資料をじっと見ると「失礼致しました」頭を下げた。
「どうしたんですか?」
「あー、これは昨日の会議で仕様変更したんだ」
「あ、そういえば」
納得する部下に男性は頭をかかえた。
優吾は彼らを細い目でみると、「これ貰う」そう言って資料を男性から受け取ると近くのゴミ箱にすてた。
「え……」
部下が驚いていると、優吾は「必要ないから」と一言言うとパソコンの画面をむいた。
部下は真っ青な顔をして動けなくなった。男性は彼の方を優しく支えて、席まで送った。
「彼は優しいな、星も見習った方がいいよ」
横の机に座っている同僚の速水がにこやかに声をかけた。
「私は、そんなに厳しくないと思うが」
「いやー、今部下をびびらせたじゃん。案件間違えたくらいで怒らないでよ」
彼の言葉に優吾は首を傾げた。
「怒ってはない」
「資料捨てたじゃん」
「それは、もう必要ないからだ。彼が持って帰ったらまた間違うかもしれない」
速水は「あー」と言って額に手をやった。
「なんだ? 間違っているか?」
速水はため息をつきながら、「正しいと思うよ」と言った。
コアタイムが終わり少したつと、優吾は机の周りを片付けて帰宅の準備をはじめた。
「あれ? もう帰るの?」
「あぁ」
「珍しいじゃん。こんなに早く帰るなんて」
速水が優吾の机を覗き込んだ。彼の机は必要な物しかなく埃ひとつない。
「あぁ。いつも部下の仕事内容を確認していたが今日はそれを昼にやった。午後の分は明日やる」
「へー」
速水はニヤリと口角をあげた。
「何か予定があるの? こんな早いの何年ぶり?」
「……いや、別に。それでは先に失礼する」
そう言うと、優吾は鞄を持ち部屋を出て行った。それを速水は面白そうに見てた。
「速水さん、よく星さんにあんなこと聞けますね」
速水の真後ろに座る岡田が不安そうな声で、言った。速水は椅子をクルリと回して彼の方を見た。
「えー、まぁ同期だし?」
「同期でも上司ですよ。リーダーに軽口が叩けるのは尊敬します」
「そーかぁー」
速水は椅子の背もたれにより、掛かりながらゆらゆらと椅子を左右に揺らした。
コアタイムが終了したため、フロワーにいる人数はたいぶ少なくなったが雑談をする速水と岡田を気にする女子社員がチラホラいた。
「だって、星さんめちゃくちゃ怖いじゃないですか。笑わないし」
「怖くはないけど、確かに飲み会でも笑わないよね。表情筋死んでるんじゃないかぁ」
速水はケラケラと笑った。
「速水さん。明日、星さんに今日のこと聞いて下さい」
「今日の?」
岡田はワクワク、何かを期待しているような顔して、速水に頼んだ。
「はい。あの星さんが早くも帰った理由ですよ」
「自分で聞けよ」
「怖いんですよ。女の子ですかね?」
「女の子ねぇ? 俺、星とは何年も付き合いになが聞いたことないんだよね? モテるのにね」
「ほんとにソレです」
岡田は不満そうに、眉を寄せて優吾の綺麗に片付いた机をみた。
「仕事ができて、顔が良いことは認めますが愛想ないですよ。すぐ、睨む」
「あはは、だから皆、隠れファンみたいなんだよね」
本人不在の優吾の席を見て目を大きくしコソコソと話す女子社員が速水と岡田の目に入った。
「はぁ、俺のがにこにこして優しいのに……」
「岡田……」
優吾を羨ましいがる岡田を見て速水は同情した。
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