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第十九話 ひろいもの②
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ひな子はアパートの扉を前に立つと村上に「立てる?」と確認した。彼女がうなずくと、村上の足をゆっくりと地面につけた。
「一階なの?」
村上が不安そうに質問すると、「うん。安いから」とひな子はぶっきらぼうに答えた。
彼女は防犯の面で心配したのだろうがひな子にとって大きなお世話であった。ひな子はそこら辺の人間には負けない自信があった。
「帰る?」鍵を開けながら聞くと、村上は首を振った。「そう、ならどーぞ」
扉を開けて、村上を中に入れるとひな子は扉を閉めて鍵をかけた。そして、中に入ろうとしたら、村上が靴も脱がずに部屋を見て固まっている。
「なにしてんの?」
「え……、ベッドとクローゼットしかないから驚いて」
「それだけあれば十分でしょ」
ひな子は素っ気なく答えると、棒立ちしている村上をよけて靴を脱いだ。
「え、だって……。服は?おしゃれじゃん。化粧は?」
村上の質問にひな子は面倒くさそうな顔をして、玄関横にあるクローゼットを開けた。そこには、服と化粧品が入っていた。
「見せて」
村上は靴を脱ぎ捨てると、クローゼットの中をじっと見た。
「え、これだけ?これを着まわしてんの?」村上はクローゼットに掛かっている数着の服をじっくりと見た。「これが化粧品の箱ね。ってこれ、基礎化粧品しか入ってないじゃん」
村上はひな子のもとに戻ってくると服をひっぱり、顔を寄せた。彼女の顔が近くなり離れようとしたが村上があまりに真剣なために諦めた。
「え、元がいいってそういうこと? 肌きれい。あれでこれを維持してんの?」
突然元気になった村上に、ひな子はため息をついた。
「あ、ごめん。なんか、この部屋入ったら気持ちよくて」
ひな子は眉を寄せて村上をじっとみると「……詳しく」と言い、村上を自分から引き離すと、床に座らせた。ひな子は彼女の隣に座るとベッドによりかかり村上を上から下まで舐めるように見た。
その視線に戸惑ったのか村上は「あの……」と言って顔を赤らめて身体をモジモジと動かした。
「なに?どうしたの?」
「あ、いえ……」村上は真っ赤になり下を向いた。それがひな子は面白く感じた。
「私のいう事はなんでも聞くでしょ。今の気持ち言いなさい」
「あぅ……」顔を上げた村上は涙目であった。「見られて……。気持ちよくて」
「見られたいの?どこを?」
「あ……、全部」そう言って、村上は服を脱ぎ始めた。ひな子は驚いたが止めずにニヤリと笑い見ていた。
下着姿になった村上の身体には多くの傷があった。それをじっと見ると彼女は脱ぎ捨てた服を拾い慌てて身体を隠した。
「あの……これは…その」
赤かった村上の顔は青くなった。
「説明」
痣だらけの彼女の身体を見ると、さっきまであった『楽しい気持ち』が一気に消えた。それと同時にモヤモヤしたものが襲ってきた。
「え、あ……。私はSubで真人君とプレイしてたの。その時で」
「ふーん」
ひな子は村上を上から下までゆっくりと見た。人工的に膨らませた不自然な胸。それを支えられのか疑問に思うどのやせ細った身体。厚化粧であるため顔色はよく見えたが実際とは異なるのだろう。
神田が村上を満足させていないことは明らかだ。
「それ、満足してないでしょ。なんで神田とプレイ続けるの?」
「それは真人君しかないから。今まで生きてきて出会えたDomは真人君だけなの」
吐き出す様に言った。
ひな子の周りにはDomが多くいたから意識してなかったが、DomもSubも希少種だ。だから、ダイナミクスの研究はなかなか進まない。Neutralの人間はダイナミクスに対して無関心な傾向にある。その種が世の中で一番多いのだからしかない部分はある。
「でも、失敗した捨てられる。それにお仕置きが待っている」村上はガタガタと身体を震わせた。「あ……、今頃家にいるかも……」
サブドロップを今にも起こしそうな村上をひな子はブランケットで包むと抱きしめた。
「大丈夫。神田は捕まったよ」
「え?」
「公共の場で相手の同意なしにコマンドを使用したんだ。傷害罪だよ」
「なんで?」村上は顔を上げて、ひな子を見た。「私は強いGlare(グレア)を食らって倒れたんだよ。あんな強いGlare(グレア)を放てるならコマンドを使うの必要ないでしょ。Glare(グレア)は傷害罪にならない」
村上は動揺した。
「アレは神田のGlare(グレア)じゃないよ。星と神田は中庭にいたんだよ。君が倒れたところまで十メートル以上はあった」
「そうなの?」村上は首を傾げた。「う~、確かに真人君のGlare(グレア)より強烈だったけどそれだけ怒ってたのかと思って……」
教科書にダイナミクスの事は大まかにしか載っていない。正しくは分からない事が多くなせられない。
Glare(グレア)の事も『名前がある』程度だ。範囲や効果、制御可能なのかなどは調べても答えを知るのは難しい。だから、村上の知識不足を責めるつもりはないが彼女のこれからを考えると同情した。
「Glare(グレア)の制御については個人差がある」
「じゃ、誰? あ、やっぱり『遥君がSubってのは嘘で本当はDom』って言う噂が本当とか?」
「う~ん」ひな子は目を細めた。どこまで彼女に情報開示をするか悩んだ。「余り他人のダイナミクスを詮索するのは良くないと思うよ」
ひな子が村上から離れると彼女は掛けてもらったブランケットをギュッと握りしめた。
「神田は何をしようとしていたの?」
「……真人君は優秀なDomだから彼と関係を持ちたいSubはたくさんいるの」
「優秀ねぇ」
鼻で笑ったが、村上は気にせずに話を続けた。
「真人君は遥君を敵視してたの。いつも『Subの癖にモテやがって』と怒っていた。新宮さんの事も気にしてるみたいで。口には出さないけど……」
全部心当たりがある話だ。
「一階なの?」
村上が不安そうに質問すると、「うん。安いから」とひな子はぶっきらぼうに答えた。
彼女は防犯の面で心配したのだろうがひな子にとって大きなお世話であった。ひな子はそこら辺の人間には負けない自信があった。
「帰る?」鍵を開けながら聞くと、村上は首を振った。「そう、ならどーぞ」
扉を開けて、村上を中に入れるとひな子は扉を閉めて鍵をかけた。そして、中に入ろうとしたら、村上が靴も脱がずに部屋を見て固まっている。
「なにしてんの?」
「え……、ベッドとクローゼットしかないから驚いて」
「それだけあれば十分でしょ」
ひな子は素っ気なく答えると、棒立ちしている村上をよけて靴を脱いだ。
「え、だって……。服は?おしゃれじゃん。化粧は?」
村上の質問にひな子は面倒くさそうな顔をして、玄関横にあるクローゼットを開けた。そこには、服と化粧品が入っていた。
「見せて」
村上は靴を脱ぎ捨てると、クローゼットの中をじっと見た。
「え、これだけ?これを着まわしてんの?」村上はクローゼットに掛かっている数着の服をじっくりと見た。「これが化粧品の箱ね。ってこれ、基礎化粧品しか入ってないじゃん」
村上はひな子のもとに戻ってくると服をひっぱり、顔を寄せた。彼女の顔が近くなり離れようとしたが村上があまりに真剣なために諦めた。
「え、元がいいってそういうこと? 肌きれい。あれでこれを維持してんの?」
突然元気になった村上に、ひな子はため息をついた。
「あ、ごめん。なんか、この部屋入ったら気持ちよくて」
ひな子は眉を寄せて村上をじっとみると「……詳しく」と言い、村上を自分から引き離すと、床に座らせた。ひな子は彼女の隣に座るとベッドによりかかり村上を上から下まで舐めるように見た。
その視線に戸惑ったのか村上は「あの……」と言って顔を赤らめて身体をモジモジと動かした。
「なに?どうしたの?」
「あ、いえ……」村上は真っ赤になり下を向いた。それがひな子は面白く感じた。
「私のいう事はなんでも聞くでしょ。今の気持ち言いなさい」
「あぅ……」顔を上げた村上は涙目であった。「見られて……。気持ちよくて」
「見られたいの?どこを?」
「あ……、全部」そう言って、村上は服を脱ぎ始めた。ひな子は驚いたが止めずにニヤリと笑い見ていた。
下着姿になった村上の身体には多くの傷があった。それをじっと見ると彼女は脱ぎ捨てた服を拾い慌てて身体を隠した。
「あの……これは…その」
赤かった村上の顔は青くなった。
「説明」
痣だらけの彼女の身体を見ると、さっきまであった『楽しい気持ち』が一気に消えた。それと同時にモヤモヤしたものが襲ってきた。
「え、あ……。私はSubで真人君とプレイしてたの。その時で」
「ふーん」
ひな子は村上を上から下までゆっくりと見た。人工的に膨らませた不自然な胸。それを支えられのか疑問に思うどのやせ細った身体。厚化粧であるため顔色はよく見えたが実際とは異なるのだろう。
神田が村上を満足させていないことは明らかだ。
「それ、満足してないでしょ。なんで神田とプレイ続けるの?」
「それは真人君しかないから。今まで生きてきて出会えたDomは真人君だけなの」
吐き出す様に言った。
ひな子の周りにはDomが多くいたから意識してなかったが、DomもSubも希少種だ。だから、ダイナミクスの研究はなかなか進まない。Neutralの人間はダイナミクスに対して無関心な傾向にある。その種が世の中で一番多いのだからしかない部分はある。
「でも、失敗した捨てられる。それにお仕置きが待っている」村上はガタガタと身体を震わせた。「あ……、今頃家にいるかも……」
サブドロップを今にも起こしそうな村上をひな子はブランケットで包むと抱きしめた。
「大丈夫。神田は捕まったよ」
「え?」
「公共の場で相手の同意なしにコマンドを使用したんだ。傷害罪だよ」
「なんで?」村上は顔を上げて、ひな子を見た。「私は強いGlare(グレア)を食らって倒れたんだよ。あんな強いGlare(グレア)を放てるならコマンドを使うの必要ないでしょ。Glare(グレア)は傷害罪にならない」
村上は動揺した。
「アレは神田のGlare(グレア)じゃないよ。星と神田は中庭にいたんだよ。君が倒れたところまで十メートル以上はあった」
「そうなの?」村上は首を傾げた。「う~、確かに真人君のGlare(グレア)より強烈だったけどそれだけ怒ってたのかと思って……」
教科書にダイナミクスの事は大まかにしか載っていない。正しくは分からない事が多くなせられない。
Glare(グレア)の事も『名前がある』程度だ。範囲や効果、制御可能なのかなどは調べても答えを知るのは難しい。だから、村上の知識不足を責めるつもりはないが彼女のこれからを考えると同情した。
「Glare(グレア)の制御については個人差がある」
「じゃ、誰? あ、やっぱり『遥君がSubってのは嘘で本当はDom』って言う噂が本当とか?」
「う~ん」ひな子は目を細めた。どこまで彼女に情報開示をするか悩んだ。「余り他人のダイナミクスを詮索するのは良くないと思うよ」
ひな子が村上から離れると彼女は掛けてもらったブランケットをギュッと握りしめた。
「神田は何をしようとしていたの?」
「……真人君は優秀なDomだから彼と関係を持ちたいSubはたくさんいるの」
「優秀ねぇ」
鼻で笑ったが、村上は気にせずに話を続けた。
「真人君は遥君を敵視してたの。いつも『Subの癖にモテやがって』と怒っていた。新宮さんの事も気にしてるみたいで。口には出さないけど……」
全部心当たりがある話だ。
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