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リチャードは屋敷に戻ると父である公爵の元へ向かった。今回の事を報告するためであるが足取りが重かった。全ては計画通りに進みミスはない。ないからこそ気が重い。
部屋の扉を叩くとすぐに返事があった。リチャードは挨拶をして部屋に入ると笑顔の公爵が出迎えてくれた。
数日前に手紙を送っていたが、改めてウェバー家であった事を報告すると公爵を嬉しそうに頷いた。 それがリチャードにとって意外であった。娘を可愛がっている公爵ならば反対すると踏んでいた。
「良いのですか? このままではカトリーナも黒の国に向かう可能性があります」
「願ったり叶ったりじゃないか」
「……カトリーナにもしもの事があるかもしれません」
「あってほしいものだ」公爵は小さく息を拭いた。
「いいのですか? 幼い頃は小さな怪我をするだけで心配なさっていたでしょう」
「それはそうだ。大切な王太子殿下の婚約者だからな」公爵のその言葉にリチャードは目を細めた。「確かに、今も婚約者だがあの子、王太子から逃げているだろう」
「……」
「世間では病弱で通っているが王家が騙されない。他の女性を用意している」公爵はイラ立ったように言った。「あの子が王太子殿下を蔑ろにして侍従ばかり構うから疑われているよ」
公爵は大きなため息をついて、人差し指で机を叩いた。
「我が家の恥じだ」
「お言葉ですが、あの二人にそう言った関係はありません」
「そんな事は知っている。事実ならばすぐに家を追い出している」
カトリーナもリチャードも常に監視されている。その内容は全て公爵へ報告されている。
「しまいには『緑の瞳』なんて厄介事を引き入れて」
公爵の人差し指を彼の感情に同調するように更に大きく動いた。
「あの子はバカであったなら、それを理由にできるが優秀すぎる。あの子以上に優秀な令嬢はおらん」
伯爵は大きな音を立てて、机を叩いた。
「だから、黒の国で全てなかったことになればいい」公爵は手を止めてニヤリと笑った。「お前が、王女殿下と婚約できたから王家のとのつながりも問題ない」
つい先日、顔も拝見した事がない王太子エドワードの妹との婚約が決まった。
「王女は確か、カトリーナと同い年ですよね」
「そうだ。何も分からないだろうから教えてやるといい」
嬉しそうに話す公爵に気持ち悪さを感じた。
公爵家の長子と生まれたからには政略結婚は当然だと考えていた。だが、王女とは年が離れすぎている。珍しい事ではないが、妹と同い年というのはいたたまれない。
「幼子に不満があるなら待てばいいだろ」公爵は人差し指でリチャードを指した。「あぁ、正式に結婚するまでは他の女に手を出すなよ。相手が王家にいるうちは面倒だ」
「……」
リチャードに女性の相手をしているほどの暇はない。日々やる事は山積みだ。
「私はカトリーナが行くことを反対しています」
「反対してもあの子は行くでしょ」
「そうですが……」
カトリーナは何にも縛られない。自分が正義だと思うことに忠実だ。
「王太子殿下にはどう説明なさるつもりですか? 彼の方はカトリーナを気に入っている様に思います」
「事実を知っても、王太子殿下が王太子殿下でいる以上は、下手な動きはできない。彼個人ではなく王家の一存でも物事は進む」
「……」
エドワードがそんなたまではないとリチャードは感じていた。ただ、権力にしがみつけているだけの男ならカトリーナを追いかけるような真似はしない。さっさと自分を好いてくれる都合のいい令嬢の方がいい。
仮にカトリーナと結婚したら、苦労するのは目に見えている。彼女は破天荒であるがバカではない。知識は豊富であり、身体能力も優れている。
しかし、公爵にそれを言っても意味がないため、頭を下げて部屋をでた。
部屋の扉を叩くとすぐに返事があった。リチャードは挨拶をして部屋に入ると笑顔の公爵が出迎えてくれた。
数日前に手紙を送っていたが、改めてウェバー家であった事を報告すると公爵を嬉しそうに頷いた。 それがリチャードにとって意外であった。娘を可愛がっている公爵ならば反対すると踏んでいた。
「良いのですか? このままではカトリーナも黒の国に向かう可能性があります」
「願ったり叶ったりじゃないか」
「……カトリーナにもしもの事があるかもしれません」
「あってほしいものだ」公爵は小さく息を拭いた。
「いいのですか? 幼い頃は小さな怪我をするだけで心配なさっていたでしょう」
「それはそうだ。大切な王太子殿下の婚約者だからな」公爵のその言葉にリチャードは目を細めた。「確かに、今も婚約者だがあの子、王太子から逃げているだろう」
「……」
「世間では病弱で通っているが王家が騙されない。他の女性を用意している」公爵はイラ立ったように言った。「あの子が王太子殿下を蔑ろにして侍従ばかり構うから疑われているよ」
公爵は大きなため息をついて、人差し指で机を叩いた。
「我が家の恥じだ」
「お言葉ですが、あの二人にそう言った関係はありません」
「そんな事は知っている。事実ならばすぐに家を追い出している」
カトリーナもリチャードも常に監視されている。その内容は全て公爵へ報告されている。
「しまいには『緑の瞳』なんて厄介事を引き入れて」
公爵の人差し指を彼の感情に同調するように更に大きく動いた。
「あの子はバカであったなら、それを理由にできるが優秀すぎる。あの子以上に優秀な令嬢はおらん」
伯爵は大きな音を立てて、机を叩いた。
「だから、黒の国で全てなかったことになればいい」公爵は手を止めてニヤリと笑った。「お前が、王女殿下と婚約できたから王家のとのつながりも問題ない」
つい先日、顔も拝見した事がない王太子エドワードの妹との婚約が決まった。
「王女は確か、カトリーナと同い年ですよね」
「そうだ。何も分からないだろうから教えてやるといい」
嬉しそうに話す公爵に気持ち悪さを感じた。
公爵家の長子と生まれたからには政略結婚は当然だと考えていた。だが、王女とは年が離れすぎている。珍しい事ではないが、妹と同い年というのはいたたまれない。
「幼子に不満があるなら待てばいいだろ」公爵は人差し指でリチャードを指した。「あぁ、正式に結婚するまでは他の女に手を出すなよ。相手が王家にいるうちは面倒だ」
「……」
リチャードに女性の相手をしているほどの暇はない。日々やる事は山積みだ。
「私はカトリーナが行くことを反対しています」
「反対してもあの子は行くでしょ」
「そうですが……」
カトリーナは何にも縛られない。自分が正義だと思うことに忠実だ。
「王太子殿下にはどう説明なさるつもりですか? 彼の方はカトリーナを気に入っている様に思います」
「事実を知っても、王太子殿下が王太子殿下でいる以上は、下手な動きはできない。彼個人ではなく王家の一存でも物事は進む」
「……」
エドワードがそんなたまではないとリチャードは感じていた。ただ、権力にしがみつけているだけの男ならカトリーナを追いかけるような真似はしない。さっさと自分を好いてくれる都合のいい令嬢の方がいい。
仮にカトリーナと結婚したら、苦労するのは目に見えている。彼女は破天荒であるがバカではない。知識は豊富であり、身体能力も優れている。
しかし、公爵にそれを言っても意味がないため、頭を下げて部屋をでた。
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