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しおりを挟む「……近藤正樹か」
木山恵のその言葉に心臓が高鳴った。顔が熱くなり彼から視線をそらした。それでは肯定しているようなものだと分かっていたが否定する言葉はでなかった。
「イチから連絡がきた時、正樹を誘うように言われた」
木山恵の感の良さに警戒した。下手をすれば全て暴かれるような気がした。その時、わざとらしい大きな足音が聞こえた。
「湯川さん」
名前を呼んだのは河沼一香だ。彼女は、怒りに満ちた顔で木山恵と悠の間にはいった。
「木山恵は私のよ」
きっぱりと言うと、木山恵は「イチ~」とだらしない顔をした。今まで無表情で淡々と話していたクールな姿は見る影もなかった。
河沼一香は横目で木山恵を見ると目を細めた。その表情、木山恵は興奮しているように見えた。
「恵、私以外と長時間二人きりになったわね」
「あわわ、ごめんなさぁい」
謝罪しているが木山恵は悪びれた様子はない。それよりも期待に満ちた目で河沼一香を見ていた。
「湯川さんは恵狙い?」
彼女の視線が悠に移った。
「いいえ」はっきりと答えた。彼らの様子を見ているとそこは明確にしとくべきだと感じた。
「……正樹」ぼそりと小さな声で木山恵が言った。すると河沼一香はニヤリと笑い頷いた。
「だから、あの男は『アイツを誘え』って言ったのね。貴女を呼んで恵にぶつけるためね」
「僕が好きなのはイチだけだ」
木山恵は可沼一香に後ろから抱き着いた。まるで大型犬がじゃれているようであった。
河沼一香は、木山恵の頭を撫ぜながら悠を上から下までじっくりと見た。
「アイツと知り合い?」
「保育園が一緒で。その後も時少し……」
「へ~」
彼女は楽しそうに笑った。それから、真後ろにいる木山恵を見上げた。
「アイツ、今なにしてるの?」
「この辺で女の子と飲んでいる」木山恵は不満そうに言った。
それを聞いた瞬間、身体の中で熱くなる物モノを感じた。それはあまりいい感情ではないが止められなかった。
「良いこと教えてあげるわ」
河沼一香に手をひかれて店の外にでた。後から木山恵がついてきた。
暦の上では春であったが、夜風は涼しく上着を羽織って歩いている人が多くいた。
「――公園」と木山恵は言った。
「え?」突然言われて驚いた。
「アイツ下戸なの。この辺で酒飲まされるとそこで休憩しているわ」
河沼一香の指示で木山恵は鞄を思ってきた。
「あの……」
「あなたの支払いは当然あの男なんでしょ」
「うん」
こういった形で虎司から誘われる時は全ての支払いは彼がする。でなければ金銭的な理由で断っている。
悠は二人に促されて、居酒屋の中にはもどらずに公園に向かった。すると、公園から嘔吐する声が聞こえた。近づくと、食べた物を出している正樹がいた。
彼は嘔吐した後、地面に座り込んだ。情けない姿なのに、愛おしかった。
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