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閉めた扉に寄り掛かりながらイズクはカズマを見上げた。
「お前、自分で退団申請しなかったのはなんで?」
「……」
しばらく沈黙が続いた後、イズクは大きく頷いた。「あぁ、面倒くさいからだね。申請すれば王都まで行き審議になる。退団を認めない俺を何とかしても今度は費用返還問題でリリらと争う事になるしね」
「……」
一人で話しているイズクをカズマはじっと見ていた。彼の言っている事は間違ってはいないから反論する気はない。
不思議なのはイズクが負けた時の話をしている。可能性がなくはないがソレをあまり口に出す事は今までなかった。それも変な話だ。不確定要素やイレギュラーな事が多い魔王討伐の旅、常に上手く行かなかった場合を考えて対策する必要がある。実際カズマもそうしている。しかし、イズクはない。まるで失敗しないかのように振る舞う。実際、彼が失敗している所を見た事がない。
「勇者であるイズクの意見が優先されるだろ」
勇者パーティーは勇者あっての団体だ。勇者が活動しやすいように配慮される。
「基本はね」イズクは飛び跳ねるようにカズマのベッドに座った。「お前が裏に手を回せばなんとかなるかもしれない」
「手を回す?」馬鹿馬鹿しい話だ。そういう取引のような事をやった経験なんてない。「なら、費用の件もリリさんたちに押し付けられるじゃん」
「そうかもしれないけど、リリらと組む前の資金は彼らから取れないよ。それも結構な額になるし」
「なら、全部負担するよ。俺は別に支援金だけで生活していない。殆ど手付かずで残っている」
イズクの顔色が変わった。「そんなのは許さない」低い声で言うと部屋の隅にあった剣に手を伸ばした。驚いている間に後ろに回られ、首に刃が触れた。
「……」
イズクは強い。だから勇者になる事ができた。しかし、魔物を前にすると気持ちが下がってしまう。それをカズマが補佐している。ソレさえ克服できればカズマは用なしだ。そこまで執着するような者ではない。
「勇者のメンバー殺しは大罪だ」
「知っている」怒鳴り声は泣いているようにも聞こえた。「お前がいないなら俺は勇者になれない。ならいらない」
「過激すぎない?」
「なら、俺といてよ」
「だから」カズマは首の前にある刃の上に手を置き、剣を下げた。「いるって言っている」
「嘘だ」
刃が首の前に戻ってきた。力比べではイズクに勝つことは出来ない。
「どうすればいい?」
約束をしても否定されるなら、成すすべがない。困っていると、イズクは大きな声を上げた。
「絶対にいなくならないでね」
そう言って縄で身体を縛られた。抵抗するとイズクが暴れそうなので従った。その様子に満足したようで部屋から出て行った。
「……」
自分の身に何が起きているのかよく分からない。
縄にしばられたままベッドに転がった。出て行こうと思ってから一時間も経っていない。
窓から入る月の光がカズマを照らした。
「なんだかなぁ」
イズクの暴走は今始まった事ではないが、今回はいつもと違う気がした。彼が何をするつもりか何しに行ったか分からない。
何もできないと眠くなってきた。睡魔に抵抗することなく目をつぶった。
「お前、自分で退団申請しなかったのはなんで?」
「……」
しばらく沈黙が続いた後、イズクは大きく頷いた。「あぁ、面倒くさいからだね。申請すれば王都まで行き審議になる。退団を認めない俺を何とかしても今度は費用返還問題でリリらと争う事になるしね」
「……」
一人で話しているイズクをカズマはじっと見ていた。彼の言っている事は間違ってはいないから反論する気はない。
不思議なのはイズクが負けた時の話をしている。可能性がなくはないがソレをあまり口に出す事は今までなかった。それも変な話だ。不確定要素やイレギュラーな事が多い魔王討伐の旅、常に上手く行かなかった場合を考えて対策する必要がある。実際カズマもそうしている。しかし、イズクはない。まるで失敗しないかのように振る舞う。実際、彼が失敗している所を見た事がない。
「勇者であるイズクの意見が優先されるだろ」
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「基本はね」イズクは飛び跳ねるようにカズマのベッドに座った。「お前が裏に手を回せばなんとかなるかもしれない」
「手を回す?」馬鹿馬鹿しい話だ。そういう取引のような事をやった経験なんてない。「なら、費用の件もリリさんたちに押し付けられるじゃん」
「そうかもしれないけど、リリらと組む前の資金は彼らから取れないよ。それも結構な額になるし」
「なら、全部負担するよ。俺は別に支援金だけで生活していない。殆ど手付かずで残っている」
イズクの顔色が変わった。「そんなのは許さない」低い声で言うと部屋の隅にあった剣に手を伸ばした。驚いている間に後ろに回られ、首に刃が触れた。
「……」
イズクは強い。だから勇者になる事ができた。しかし、魔物を前にすると気持ちが下がってしまう。それをカズマが補佐している。ソレさえ克服できればカズマは用なしだ。そこまで執着するような者ではない。
「勇者のメンバー殺しは大罪だ」
「知っている」怒鳴り声は泣いているようにも聞こえた。「お前がいないなら俺は勇者になれない。ならいらない」
「過激すぎない?」
「なら、俺といてよ」
「だから」カズマは首の前にある刃の上に手を置き、剣を下げた。「いるって言っている」
「嘘だ」
刃が首の前に戻ってきた。力比べではイズクに勝つことは出来ない。
「どうすればいい?」
約束をしても否定されるなら、成すすべがない。困っていると、イズクは大きな声を上げた。
「絶対にいなくならないでね」
そう言って縄で身体を縛られた。抵抗するとイズクが暴れそうなので従った。その様子に満足したようで部屋から出て行った。
「……」
自分の身に何が起きているのかよく分からない。
縄にしばられたままベッドに転がった。出て行こうと思ってから一時間も経っていない。
窓から入る月の光がカズマを照らした。
「なんだかなぁ」
イズクの暴走は今始まった事ではないが、今回はいつもと違う気がした。彼が何をするつもりか何しに行ったか分からない。
何もできないと眠くなってきた。睡魔に抵抗することなく目をつぶった。
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