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しおりを挟む私が魔術師の塔で働くことが出来るなんて!!
ずっと憧れていたけど諦めてたんだよね。
自分の力では魔術師になれない。
魔力をコントロール出来ない私では、下級魔術師も難しかった。
魔術師の秘書としてだけど、憧れの場所で働けるなんて、とんでもない幸運だよね。
公爵令嬢には感謝しないと、もしも就職の邪魔をされてなかったら、こんなチャンスが巡ってくることもなかった。
「凄く嬉しそうだな」
「はい!!小さい頃から塔所属の魔術師になるのが憧れだったんです。自分の実力では絶対に無理だったので、秘書としてですけど塔で働けることが嬉しいです」
「小さい頃から?そっか……、お前はアルファード夫婦の娘だったな。塔に回される仕事は危険なことばかりだから、それをよく知ってるあの人達が反対するんじゃないか?」
カイル様は面倒そうに言う。
カイル様からしたら、私を雇って怒りの矛先が自分に向くのが嫌なのかな?
確かに2人に話したら反対される可能性がある。
2人は夫婦揃って塔所属の魔術師で、今も現役で活躍している。
だからこの仕事がどれだけ危険か1番理解している。
塔で働けることに浮かれていたけど、2人に報告したら反対されるかもしれない。
私は2人と違って自由自在に魔法が操れない。
そんな私が危険な任務に同行するなんて、普通の親なら絶対に反対するよね。
「それなら心配ないぞ。親には俺が説明している。相手がカイルなら安心だって言ってたよ。親はミレイヤが塔所属の魔術師になることに、ずっと憧れてるのは知ってたからな」
「本当に!!2人から反対はなかったの?」
「問題ない。これが任意書とミレイヤ宛への手紙だ。それと父上からお守りのブレスレットだ。絶対に外さないようにだってさ」
デニス兄様はそう言って、カイル様に1枚の紙を渡して、私には分厚い手紙と可愛いブレスレットを渡す。
カイル様は私の手の上にあるブレスレットをジーッと見る。
そしてニヤッと笑う。
「凄いな。過保護にも感じるけど、俺の秘書になるって考えたら、これぐらいしてもおかしくないな」
「何がですか?」
「ブレスレットに保護の魔法が何重にも掛けられてる。物理攻撃を跳ね返すのと、魔法攻撃を跳ね返すのと、毒や呪いを跳ね返す魔法もあるな」
えっ?
それって国宝級のブレスレット何じゃないかな?
このブレスレットを狙って、私を襲う人が現れてもおかしくないよね?
これ売ったら大金になるだろうし、貴族は喉から手が出るほど欲しがる代物だよね?
とんでもない物をお父様から贈られて、頭から血の気が引いていく。
「父上らしいな。俺は男だから放置気味だけど、ミレイヤのことは過保護だからな。今回のことも自分の気持ちより、ミレイヤを優先することに決めたけど、心配でこれを贈ったって感じだろうな」
あり得るかも
お父様もお母様も過保護なのよね。
だけど仕事でいつも近くに居られないから、仕事が休みな時や暇な時期は私から離れなくなる。
お母様なんて私の部屋で一緒に寝るぐらいですからね。
あれだけ溺愛されていたら、普段は仕事で滅多に一緒に居られないけど、親からの愛情を疑うことは1度も無かった。
「少しでも怪我なんかさせたら、かなりの報復が待ってそうだな」
「そんな事はないと思うけど、ネチネチなんか言われる可能性はあるかもな。特に父上から」
………やっぱり無しなんて言われないよね?
厄介な親がついてるって知られたら、普通なら面倒臭いって思うよね。
「はぁ~~、ちょっとそのブレスレット貸してくれ」
「えっと………、はい。」
素直にカイル様にブレスレットを渡すと、カイル様はブレスレットに何か魔法を掛け始めた。
何をしてるのかな?
魔法が終わるとカイル様は私の手にブレスレットを返してくる。
「何をしたんだ?」
「別に大したことはしてない。ブレスレットに本人の意思以外では、ブレスレットを外せないようにしたのと、位置情報が分かる魔法を掛けただけだ」
ブレスレットが外せないようにするのは盗難防止だろうけど、位置情報は何故?
「位置情報は何故ですか?」
「お前がブレスレットを外した時に盗まれても位置がわかるようにと、それと無いとは思うが誘拐されたときのためだ」
えっ?
誘拐される可能性があるってこと?
魔術師の秘書ってそんなに危険な仕事なの?
「魔術師の秘書ってそんなに危険な仕事だったか?」
「俺の弱味を握ろうって奴は多いからな。秘書が出来たら何かしてくるやつがいる可能性もある」
成る程~~~
カイル様は天才魔術師って呼ばれてるぐらいだから、本人に何かするよりも、私を人質にしたほうが早いってことね。
「秘書になるの後悔してるか?今ならまだ無かったことに出来るぞ」
「大丈夫です!!もしもそんな不届き者が居たら、全出力で魔法をぶっ放しますわ。犯罪者に遠慮は要らないですから」
もしもそれで相手が亡くなったり、大怪我をしたとしても自業自得になるはず!!
「頼もしいな」
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