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もしかして  (神の呪いじゃないでしょうね?)

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未開の集落に突然現れた異端児は、たいてい、ろくな運命をたどらない。

悪魔の子、とか言われて、良くて放逐悪くて惨殺がテンプレだろう。


だが、未開の度合いもここまですっきり原始だと、まず、悪魔とかいう概念すら生まれていない。

ワタシの唐突な言語開発も、なんか便利な事が始まったくらいのライトさで普通に受け入れられたようだった。

ワタシも用心して、必要最低限の単語を編み出すにとどめた。

言語の発達は、両刃の剣。

表現が広がれば広がるだけ、それは、より複雑な思考へのスクリプトと化していくのだ。


それこそ、気味が悪いとか、脅威だとかの概念が生まれてしまったら、こんな幼児は速攻でアウトだ。


多分だが、ここでワタシが普通にしゃべっていれば、ここの集団はいずれ日本語を話せるようになるだろう。

それこそ、文明社会の子供らが自然に言葉を覚えて行くのと同じだ。

だがあえてそこは避け、単語を羅列するにとどめるように気を付けた。


この集落は、今世のワタシの故郷となるのだ。

不潔でもいい。

未発達でもいい。

なんとなく、この邪気のない原始集落のままでいてほしかった。


そんなわけで、言語の発展はひとまず置いておくことにした。

どうくつの周辺までならうろうろできるようになったワタシは、道具の製作に取り組もうと思い至った。


だが、あまりにもモノが無さすぎる。

ヒトは道具を使いこそすれ、良さげな形の石を拾ってきてそのまま使うレベルであった。

小枝を雑に井桁に編んだだけのザルもどきを作って見せたら、たちまち大流行した。 すぐに工夫を凝らす者が現れて蔓草や木の皮を編んだりという、爆速発展ぶりに、ワタシのほうが驚かされた。 同時に、叩いて柔らかくした樹皮や草を撚って縄や紐が発明された。

すごい。


ちなみに、希望を捨てきれずに魔法の類いの発現を試み続けているのだが、今のところ、何もない。

ステータス画面も出ないし、鑑定も亜空間収納もできず、火も水も光も出せないままだ。


この転生……、苦情を聞き入れてくれた温情じゃなくて、もしかして単なるクレーマー処理?

神様的ざまあ、ってやつなんじゃなかろうか。

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