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第12話「美味しい水」
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俺の脳裏に閃いたアイデアに関しては、ろ過装置を利用した美味しい水の販売となる。
元営業マンなうえ、薬師関連のスキルしかない俺が、本格的なろ過装置を作ることは不可能な話だが…
小学校の自由研究の定番だったこともあり、ペットボトルを利用した簡易版程度なら前世で作成した経験がある。
(といってもこの世界にペットボトルなんてないし…)
(商売用となると大量のろ過水が必要だからね)
(素直にワイン樽でも使うのが吉だよな)
そう考え、近所の木工工房に向かうと、平日の昼下がりということもあり、若い職人たちが額に汗を浮かべながら樽作りに励んでいた。
「アレ?」
「エイジさんじゃないの、珍しいね」
そんな弟子たちの背後に立ち、厳しい視線を向けていた親方だったが、俺の姿に気が付くと、一転して人の好さそうな笑みを浮かべた。
「実は、ワイン樽が欲しくなってさ」
「お邪魔じゃなかったら、ちょっと見せて欲しいんだけど」
顔なじみのご近所同士ということもあり、いつもの世間話の延長で商談もポンポンと進んでいった一方で…
いざ倉庫に足を運び、サイズを選ぶ段階になると予想外の出来事が待ち構えていた。
(一番小さいやつでもこんなに大きいのか)
前世では、容量10~30L程度の手頃なサイズが簡単に手に入ったワイン樽だが、この世界では酒造業者向けがメイン。
小樽サイズでも200~300Lものワインが入る大きさなうえ、見るからに重厚そうながっしりとした作りだった。
(こんなの運ぶだけで腰を痛めそうだな)
重さ数十キロはありそうな強敵を前に、思わず引きつった笑みを浮かべていると…
「あははは」
「確かに、実際に見ると面を食らっちゃうよね」
「だけど大丈夫」
「今すぐにって話じゃなければ…」
「もっと小さ目のサイズとかも対応出来るよ」
親方がすぐに助け舟を出してくれた。
「それに樽の方は馬車で届けるからさ」
「持ち帰りの心配とかは大丈夫だよ」
おまけに、出来上がり次第家まで届けてくれる神対応付きだとか。
(それなら、50Lサイズを2個くらいお願いしておくかな)
お値段の方は、総額金貨6枚。
日本円にして60万円もしたが…
この先10年20年使う代物と考えれば高くはないだろう。
(後は中身の調達だが…)
(ガーゼや脱脂綿は古タオルで代替出来るし…)
木炭も調理に用いる機会が多いため、専門に取り扱う問屋はいくらでもあるし、市場で購入することも出来る。
(砂もガラスの原材料とかだしね)
(職人向けの問屋に行けば必ず売っているはずだよな)
小石や砂利だって、川原にいけばいくらでも転がっている代物だが…
モンスターの生息地でもある川は、この世界では危険なスポットの1つ。
ヤレドでも防衛上の都合から、領内に川を引き込んでいなかったりする。
そうなると、頻繁に城外に出る職業の人間。
つまりは、冒険者に頼んで調達して貰うしかないわけだが…
アイテムボックスみたいな都合の良い便利スキルが存在しないこの世界。
クエスト中に、何十キロもの小石や砂利の入った袋を抱えて移動することになる面倒臭い仕事は、知人にほど頼み辛いものだ。
(この辺は、ギルドで依頼するしかないか)
そのため、冒険者ギルドに向かい、受付のお姉さんに募集の張り紙をお願いすると…
「小石や砂利の採集のご依頼ですか?」
と怪訝な顔をされてしまった。
(そりゃ、こんなおかしな依頼頼む奴は早々おらんよな)
そのせいで、クエストを引き受けてくれる冒険者が現れるのか心配になってしまったが…
ブラッククエストを自覚して金貨5枚の報酬を提示しておいた効果なのか、翌日になると、ギルドの方から依頼が成立したとの報告を受けることになった。
元営業マンなうえ、薬師関連のスキルしかない俺が、本格的なろ過装置を作ることは不可能な話だが…
小学校の自由研究の定番だったこともあり、ペットボトルを利用した簡易版程度なら前世で作成した経験がある。
(といってもこの世界にペットボトルなんてないし…)
(商売用となると大量のろ過水が必要だからね)
(素直にワイン樽でも使うのが吉だよな)
そう考え、近所の木工工房に向かうと、平日の昼下がりということもあり、若い職人たちが額に汗を浮かべながら樽作りに励んでいた。
「アレ?」
「エイジさんじゃないの、珍しいね」
そんな弟子たちの背後に立ち、厳しい視線を向けていた親方だったが、俺の姿に気が付くと、一転して人の好さそうな笑みを浮かべた。
「実は、ワイン樽が欲しくなってさ」
「お邪魔じゃなかったら、ちょっと見せて欲しいんだけど」
顔なじみのご近所同士ということもあり、いつもの世間話の延長で商談もポンポンと進んでいった一方で…
いざ倉庫に足を運び、サイズを選ぶ段階になると予想外の出来事が待ち構えていた。
(一番小さいやつでもこんなに大きいのか)
前世では、容量10~30L程度の手頃なサイズが簡単に手に入ったワイン樽だが、この世界では酒造業者向けがメイン。
小樽サイズでも200~300Lものワインが入る大きさなうえ、見るからに重厚そうながっしりとした作りだった。
(こんなの運ぶだけで腰を痛めそうだな)
重さ数十キロはありそうな強敵を前に、思わず引きつった笑みを浮かべていると…
「あははは」
「確かに、実際に見ると面を食らっちゃうよね」
「だけど大丈夫」
「今すぐにって話じゃなければ…」
「もっと小さ目のサイズとかも対応出来るよ」
親方がすぐに助け舟を出してくれた。
「それに樽の方は馬車で届けるからさ」
「持ち帰りの心配とかは大丈夫だよ」
おまけに、出来上がり次第家まで届けてくれる神対応付きだとか。
(それなら、50Lサイズを2個くらいお願いしておくかな)
お値段の方は、総額金貨6枚。
日本円にして60万円もしたが…
この先10年20年使う代物と考えれば高くはないだろう。
(後は中身の調達だが…)
(ガーゼや脱脂綿は古タオルで代替出来るし…)
木炭も調理に用いる機会が多いため、専門に取り扱う問屋はいくらでもあるし、市場で購入することも出来る。
(砂もガラスの原材料とかだしね)
(職人向けの問屋に行けば必ず売っているはずだよな)
小石や砂利だって、川原にいけばいくらでも転がっている代物だが…
モンスターの生息地でもある川は、この世界では危険なスポットの1つ。
ヤレドでも防衛上の都合から、領内に川を引き込んでいなかったりする。
そうなると、頻繁に城外に出る職業の人間。
つまりは、冒険者に頼んで調達して貰うしかないわけだが…
アイテムボックスみたいな都合の良い便利スキルが存在しないこの世界。
クエスト中に、何十キロもの小石や砂利の入った袋を抱えて移動することになる面倒臭い仕事は、知人にほど頼み辛いものだ。
(この辺は、ギルドで依頼するしかないか)
そのため、冒険者ギルドに向かい、受付のお姉さんに募集の張り紙をお願いすると…
「小石や砂利の採集のご依頼ですか?」
と怪訝な顔をされてしまった。
(そりゃ、こんなおかしな依頼頼む奴は早々おらんよな)
そのせいで、クエストを引き受けてくれる冒険者が現れるのか心配になってしまったが…
ブラッククエストを自覚して金貨5枚の報酬を提示しておいた効果なのか、翌日になると、ギルドの方から依頼が成立したとの報告を受けることになった。
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