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第二十八話 依頼

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「すまないねラルフ君、食事の後だというのに呼び出してしまって」


「とんでもないです、僕は全然……」


 俺は今、王の私室にいる。


 王の私室は意外にも、シンプルな家具や素材が使われている。


 だがシンプルさの中に気品を感じられるような空間となっており、センスの良さが垣間見える。


 まぁ普通だったら、キラキラのピッカピカみたいな部屋じゃあ落ち着かないよな。


 さすがは王の部屋といったところか。


 そして扉の横にはハリーが待機している。


 ハリーを除けば完全に二人きりだ。


「それで、ここに呼んだ理由なのだが……」


 アルベルトが早速口を開く。


「裏切り者について……ですよね?」


「うむ、その通りだ」


 食事の際、裏切り者の話をしているアルベルトは終始難しい表情を浮かべていた。


 食事の席で話す内容では無いため隠していたのだろうが、実際のところかなり深刻なのだろうとは思っていたのだ。


「実は今回の侵入を手助けした者は、帝国と繋がっている可能性が高いのだ」


「帝国というと、イヴァリス帝国ですよね?第一王子が動向を探ってるっていう……」


「あぁ、その通りだ」


 まさか帝国が絡んでくるとはな。


 それとも、最初からゲネシス教と帝国はズブズブの関係だったのか?


「それも侵入者が言っていたんですか?」


「いや、実は被害に遭った門兵のそばにこんな物が落ちていたのだ」


 アルベルトは、ハリーに何かを持ってこいという仕草をする。


 するとハリーが何かを持ってきた。


「それがこれだ」


「これは……金貨……ですか?」


「あぁ、帝国で流通している金貨だ」


 金銭のやり取りでもしたのだろうか?


 その際に、一枚金貨を落としてしまったと考えるのが妥当か。


「帝国を調べる価値はありますね。ですが、第一王子殿下がすでに動向を探っているのでは?」


「あぁ、それなんだがな……」


 アルベルトは、言いづらそうに顔を歪ませる。


「私はダグラスこそが裏切り者だと思っている」


 なんてこった……!


 確かに姿は一切見ていないが、それも帝国の動向を探りに行ったからだとばかり……
 

 自分の子供を疑うほどだ、何か理由があるはずだ。


「何か理由があるのですか?」


「うむ、実はダグラスとは王国の方向性で昔から揉めていてな……私は専守防衛を主とした方向性なのだが、ダグラスは真逆の思考なのだ……」


「まさに帝国のような思考だと……」


 なるほどな。


 理由としては頷ける。


「帝国の動向を探ると言い出したのもダグラスだ。ダグラス派の兵のみを率いてな」


 通常時なら専守防衛とは真逆の思考とはいえ、やられる前にやるという思考からの行動と考えるかもしれない。


 だが侵入者が出た非常事態時に、わざわざ帝国の動向を探りに行きたいと申し出るのは確かに怪しいな……


「確かに少し怪しいですね……」


「そこで君の腕を見込んで、頼みがある」


 アルベルトは俺の眼を真っ直ぐに見る。


「ラルフ君、私からの正式な依頼だ。どうか帝国、それとダグラスの動向を探ってはくれないだろうか」


 やはりそうきたか。


 まぁ俺としても使徒を探す目的があるので、ちょうどいい。


 それにナイジェルと接触できた今、特に学園に通う必要もなくなってしまったしな。


 それに、王からの直接の依頼を断る訳にはいかないからな……


「わかりました。やらせて頂きます」


「ありがとうラルフ君。この礼は必ず」


 さて、それじゃあ帝国へ行く準備をしなきゃな。


 まずは、スティーブンスの所へ報告に行くか。





 
 
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