異世界でカフェを開くことになりました

34. 夕食

温泉で体の芯まで温まった後、私たちは一息つく間もなく、旅館で用意された夕食の間に足を運んだ。広々とした和風の部屋には、すでに豪華な料理が並べられていて、どれもこれも食欲をそそるものばかりだった。旅館の女将が、笑顔で私たちを迎えてくれた。

「さあさあ、ゆっくりとお召し上がりください。カレンドラの山の幸と、温泉地ならではの料理でございますよ」

部屋に入った途端、リュウが豪快に鼻を鳴らし、「うわぁ、すごい匂いだ！これはすぐにでも食べたいな！」と目を輝かせていた。

テーブルには色とりどりの料理が並び、鹿肉のステーキや、山菜の天ぷら、地元で採れた新鮮な魚の刺身が美しく盛られている。どれも見ただけで胃袋を刺激するような迫力があり、私たちは席につくなり、まるで戦闘態勢のような雰囲気になった。

「これがカレンドラの名物か……こんなに豪華な食事は久しぶりだな」と、マークが感嘆の声を漏らしながら、目の前の鹿肉ステーキをじっと見つめていた。彼の目はもう完全に料理に釘付けだ。

「本当にね。さっきまでの疲れが一気に吹き飛んだ感じ」と、アリスが笑顔で同意し、箸を手に取ると、慎重に鹿肉に手を伸ばした。

「それじゃ、いただきます！」と、私たちは声を揃えて食事を始めた。

リュウが最初に鹿肉に噛みついた。その瞬間、彼の目が一気に輝き、「これは……柔らかい！すごくジューシーだ！」と感動の声を上げた。

「ほんとだ、これ、最高だな」と、マークも続けて口に運び、同じように満足そうな顔をしていた。

「うん、確かに美味しいわ。噛むたびに肉汁が溢れてくるし、鹿肉特有の香りが鼻に抜けていくのがたまらないわね」と、アリスがしっかりとしたコメントを残すと、リュウは「お前、食レポでもしてるのか？」と冗談を飛ばし、みんなが笑った。

私もその笑いに乗りつつ、目の前の山菜天ぷらに手を伸ばした。サクサクとした食感が心地よく、山の香りが口いっぱいに広がった。「天ぷらも美味しいよ。これ、揚げたてだし、素材の味がしっかり残ってる」と私が言うと、ガイデンも頷きながら同じ天ぷらを口に運んだ。

「確かに、これは絶品ね。山の幸をここまで贅沢に味わえるなんて、素晴らしいわ」と、ガイデンも感心している様子だった。

「それにしても、この刺身も新鮮だな。山の中でこんなに新鮮な魚が食べられるなんて驚きだ」と、リュウが目の前の刺身を一口頬張る。カレンドラは山間に位置しているが、地元の川や湖で採れた新鮮な魚が供されているのだ。

「この魚は川魚だね。身が引き締まっていて、少し甘みがある。刺身って普段あまり食べないけど、これは美味しいわ」と、アリスが感想を述べ、ガイデンも「確かに、特にこの醤油が、魚の味を引き立てているわね」と、食事に夢中になっていた。

それぞれが食べたいものを自由に楽しみながら、みんなの会話は自然と弾んでいった。戦いの話題や過去の苦労話も出るが、どこか明るい調子で語られていた。

「この温泉街、本当に素敵な場所だな。美味しい料理に、絶景の温泉。来てよかったよ」と、リュウが満足げに言うと、マークも「いや、俺も同感だ。戦いばかりの日々だったから、こういうリフレッシュは本当に大事だな」と笑った。

「うん、こうしてみんなで食事ができるなんて、本当に幸せだね。これもレオンのおかげかもしれない」と私が呟くと、みんなが少し黙って、穏やかにうなずいた。

「レオンも、今ごろ私たちを見守ってくれているかもね」とアリスが優しく言い、ガイデンも「彼なら、私たちが楽しんでいる姿を喜んでくれるはずよ」と静かに付け加えた。

しばらくの沈黙の後、マークがふと笑顔で言った。「じゃあ、レオンのためにも、しっかり食べて楽しもう！」

その言葉にみんなが笑顔で賛同し、再び料理に舌鼓を打ち始めた。

料理は次々と運ばれ、私たちの前に並ぶ食事の豊富さに、いつの間にか会話も盛り上がっていた。特に鹿肉の煮込みや地元の野菜を使った煮物は、どれも丁寧に作られていて、食べるたびに体が温まる。

「この煮込み、すごく深い味わいだな。じっくり煮込んであるんだろうな」とリュウが感心しながら口に運ぶ。

「うん、柔らかくて、口の中で溶ける感じがするね」とアリスも満足そうに頷いた。

「この出汁、山の恵みそのものって感じね。ほんと、自然の力ってすごいわ」とガイデンが感心しながら味わい、私たちもその豊かな味に心から満足していた。

食事が進むにつれて、リラックスした雰囲気がますます強まり、やがて笑い声も増えていく。リュウとマークがふざけて冗談を飛ばし、アリスがそれをたしなめながらも微笑んでいる。

「もう少し食べたら、また温泉に行くか？」とリュウが提案すると、マークが「おお、それいいな！でも今はちょっとお腹がいっぱいだ」と笑いながらお腹をさすった。

私たちは満足感に浸りながら、再び温泉に入る計画を立てていたが、今はまずこの豪勢な夕食を楽しんでいた。目の前には新鮮な山の幸が並び、ジューシーな鹿肉や香ばしいきのこが味覚を刺激する。食後のデザートまで、すべてが完璧な夜だった。

夕食を終えた後、部屋に戻りながら、私はふと思い出した。「みんな、ちょっと待ってて。消化に良いハーブティーを淹れるわね」

そう言って、私はハーブティーのセットを取り出した。今日のハーブティーは、消化を助けてくれるペパーミントとカモミールのブレンド。お湯を注ぎながら、ティーバッグから広がる香りが部屋を包み込み、みんなの表情が和らいでいくのが見えた。

「わあ、いい香りね」とアリスが微笑み、リュウも「これならお腹の重さもすぐに取れそうだな」と笑いながらカップを受け取った。

私たちは静かな時間を共有しながら、温かいハーブティーで一服した。リラックスした雰囲気の中で、しばしの間、消化を助けるハーブティーと共に、心地よい余韻に浸った。