異世界でカフェを開くことになりました

ならん

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36. 川遊び

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朝の光がゆっくりと温泉旅館の窓から差し込むと、私たちは昨日の疲れを忘れ、静かに目覚めた。昨晩の温泉でリラックスし、豪勢な夕食でお腹も満たされていたため、久しぶりに心地よい目覚めだった。朝食を終えると、今日もこの美しい温泉地でのんびり過ごそうという気持ちが湧いてきた。

「今日はどうする?」リュウが、手元の湯呑みを置きながら提案するように問いかけた。

「せっかくだし、近くの自然を散策するのも良いんじゃないか?」と私が応じると、マークが興味津々に顔を上げた。

「散策か、いいな!どうせなら川遊びとかもしてみたい。清流で涼むのも最高だろ?」マークが嬉しそうに笑うと、アリスも笑顔を浮かべて頷いた。

「それ、楽しそうね。川辺で遊ぶなんて久しぶりだわ」

ガイデンは少し遠くを見つめるようにして、「カレンドラ周辺は自然豊かで美しい場所が多いわ。特に、川の水が澄んでいることで有名なの。山の水が集まる清流だから、冷たくて気持ちいいはずよ」と、植物に詳しい彼女はその知識を披露する。

私たちは、そんなガイデンの説明を聞きながら、今日の計画を固めた。朝の涼しい空気を感じながら、私たちは軽い支度をして出発する準備を整えた。

外に出ると、旅館の周囲にはすでに温泉街の静けさが広がっていた。朝の太陽が山々を照らし、澄んだ空気が爽やかだった。私たちは清流を目指して、木々の間を抜ける道を歩き始めた。鳥たちのさえずりが心地よく耳に入り、川のせせらぎが遠くから聞こえてくる。

「こういう静かな自然って、心が落ち着くよな」とリュウがつぶやきながら、ゆっくりと歩いていた。彼の表情は穏やかで、戦いの疲れをすっかり忘れたようだった。

「自然の力は偉大ね。リフレッシュできるわ」とアリスもその言葉に同意するように微笑んだ。

しばらく歩くと、澄んだ川が目の前に現れた。水は透き通っていて、小さな魚たちが泳ぐ姿が見えるほど清らかだった。川岸には平らな岩があり、そこに腰を下ろして水に手を浸すと、ひんやりとした感触が気持ちよく伝わってきた。

「すごく綺麗な川だな!」とマークが目を輝かせて川に駆け寄ると、すぐに靴を脱いで水の中に足を入れた。「冷たくて最高だぞ!」

リュウも川岸に腰を下ろし、「よし、少しのんびりしようか」と言いながら川辺でリラックスし始めた。

私たちはそれぞれ川の冷たい水に足を浸し、爽やかな感触に思わずため息をついた。水は透き通っていて、足元の小石がキラキラと反射する光を映し出している。私は両手で水をすくい上げ、冷たい感触を肌に感じながら、顔を洗った。その清々しさは、昨日の温泉とはまた違った癒しをもたらしてくれる。

「ここの水、ほんとに冷たくて気持ちいいな」とリュウが嬉しそうに言いながら、川の中で大きく伸びをした。その言葉に、私も笑顔で頷いた。戦いの疲れが、少しずつ体から抜けていくようだった。

マークは川の中で、子供のように足元の石を拾い上げ、あれこれと形を見比べていた。「ねえ、これ見てみろよ。変な形の石を見つけたんだ」と、彼が持ち上げた石はまるで動物の顔のような形をしていた。

「ほんとだ!それ、何に見える?」私が興味津々に聞くと、マークはしばらく考え込んでから「うーん…狼かな?いや、もしかしたら…鹿か?」と、妙に真剣に答える。

「そんな石、どこで拾ってきたのよ」とアリスがくすくす笑いながら彼に声をかけると、マークは得意げに「川の底さ!きっとここにしかない貴重な石だ」と言い張った。私たちはそのやり取りに微笑み、和やかな空気が漂った。

一方、ガイデンはというと、川辺で静かに植物を観察していた。「このあたりに生えている植物は、昔から薬草として使われているのよ」と彼女が言いながら、小さな白い花を摘んで私たちに見せてくれた。

「ほら、この花。この川のそばでしか見られない特別な種類よ。疲労回復に効くと言われていて、私も昔から使っているの」と、ガイデンが語るその声は、穏やかでどこか懐かしい響きを持っていた。

「そんな薬草もあるんだな。ガイデン、本当に色んなこと知ってるな」とリュウが感心したように声を上げると、ガイデンは軽く微笑んだ。「まあ、年の功ってところかしら」と冗談交じりに答えたが、その知識の深さにはいつも驚かされる。

私たちはその後も川で石を積んでダムを作ったり、魚を追いかけたりと、まるで子供のように遊び続けた。水しぶきが太陽の光を浴びてキラキラと輝き、私たちの笑い声が川のせせらぎに溶け込んでいく。

しかし、その楽しいひとときは、マークの突然の声で一瞬にしてドタバタへと変わった。「うわっ!」という叫びと共に、彼がバランスを崩して川にドボンと落ちたのだ。

「え、嘘でしょ?」私たちは一瞬驚いたが、マークのずぶ濡れの姿を見て、すぐに笑いがこみ上げてきた。

「大丈夫か、マーク?」とリュウが半笑いで声をかけると、マークはびしょびしょになりながら、満面の笑みで「なんとか…でも冷たくて気持ちいい!」と答えた。その姿に、私たちも笑いをこらえきれず、とうとう全員が爆笑した。

「本当にお前ってやつは」とリュウが呆れながらも笑顔で言い、アリスも「まあ、マークらしいわね」と苦笑いを浮かべていた。

「おいおい、せっかく涼しいんだから、こういうのも楽しんでいこうぜ!」とマークが言うと、私たちはまた和やかな空気に包まれた。

川遊びが一段落したところで、リュウが「みんな、ちょっとここで休んでピクニックでもしないか?」と提案した。その言葉に全員が賛成し、川辺に腰を下ろして軽食を広げた。

川のせせらぎと静かな風が心地よく、自然の中での食事は、何気ないものでも特別に感じられた。

「こんな平和な時間を過ごせるなんて、本当に幸せだな」とリュウがポツリと言った。「レオンも、きっと俺たちがこんな風に笑って過ごしているのを喜んでくれるはずだ」

その言葉に、私たちはしばし沈黙した。レオンのことを思い出すと、寂しさが胸をよぎるが、彼が私たちを見守ってくれていると信じている。

「そうね。レオンも、きっと私たちのことを見守ってくれているわ」とアリスが静かに言い、彼女の瞳には感慨深いものがあった。

「彼の意思を継いで、私たちは前に進むしかないな」とマークが優しく声をかけ、ガイデンもうなずいて同意した。

私もレオンのことを思い出しながら、川のせせらぎに耳を傾け、彼がいなくなってからも私たちの絆がさらに深まっていることを感じていた。

こうして、私たちは静かな自然の中で、ゆったりとした時間を過ごした。川遊びやピクニックを通じて、自然の美しさとともに心の中の疲れが癒されていくのを感じた。
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