星の涙

決意

リトの突然の言葉に翔太とリアナは驚愕した。リトが人間の言葉を話すのを聞いたのはこれが初めてだった。翔太は目を丸くしてリトを見つめた。

「リト……話せるの？」翔太の声には驚きと戸惑いが混じっていた。

リトは頷き、静かに答えた。「うん。リアナが星の涙の力を使ったとき、私は彼女の過去を見ることができたんだ。彼女の言葉は真実だよ。」

リアナはリトに感謝の目を向け、彼女の表情には救われたという安堵が見て取れた。「リト、ありがとう。あなたが私の気持ちを理解してくれて、本当に嬉しいわ。」

翔太は深くため息をつき、リアナの方を見た。「リアナ、僕はまだ全てを理解しているわけじゃない。でも、リトがそう言うのなら、僕も信じるよ。」

「リト、君が話せるようになったのはいつからなんだ？」
翔太はリトの新たな能力に驚愕し、リアナも同様に困惑していた。
翔太は興味深げに尋ねた。

リトは穏やかに答えた。「星の涙の力が暴走し始めたとき、その力の波動が僕にも影響を与えたんだ。少しずつ、この世界の言葉を理解し、話せるようになっていった。」

「それはすごいね。君も星の涙の力に影響されたのか……」翔太は感心し、リアナを見た。彼女もまたリトの変化に関心を持っているようだった。

リトは翔太とリアナを見つめながら、彼の新たに得た知識を共有した。
「リアナが星の涙の力を使ったとき、彼女の心の奥深くにある真実が見えたんだ。彼女は本当に苦しみ、痛んでいた。彼女の過去、失った両親、そして彼女が抱える孤独と罪悪感……これら全てが僕にも感じられたよ。」

翔太は驚きの表情を浮かべ、リアナを見た。
「リアナ、それが本当なら……」

リアナは目を伏せ、静かに言葉を紡いだ。「はい、それが真実よ。私は長い間、両親を失った悲しみと孤独と戦ってきた。そして、星の涙を手に入れることで、何かを変えられると信じたの。」

リトはさらに付け加えた。「リアナは影の守護者に利用されていただけだったんだ。彼らは彼女の感情を操り、自分たちの目的のために使おうとしていた。でもリアナは、彼らの真の意図を知り、自分の過ちを悟った。彼女は今、過去を乗り越え、新しい道を歩もうとしているんだ。」

翔太はリアナに向き直り、深くため息をついた。「リアナ、君がそんなに苦しんでいたなんて……。僕は全然気づいていなかった。ごめん。」

リアナは翔太の目を見つめ、小さく微笑んだ。「翔太、君には何も悪くないわ。これは私が乗り越えなければならない過去なの。でも、これからは君たちと一緒に、正しい道を歩みたいの。」

「リト、ありがとう。君のおかげで、僕たちはまた前に進めるようになったんだ」と翔太が言った。

リアナはリトに感謝の目を向け、「本当にありがとう、リト。君がいなかったら、私たちはもう一度、理解しあうことはできなかったわ」と言った。

リトは彼らに微笑みながら、「僕たちは一緒だ。これからも一緒に進もう」と言い、星の涙の力に影響されたことで得た新たな力を用いて、翔太とリアナを支え続けることを決めた。


◇◇◇


キャンプファイアのほのかな光の中で、翔太、リアナ、リトは星の涙の未来について話し合った。

翔太が切り出した。「星の涙をどう扱うべきか、どう思う？」

リアナが深刻な表情で切り出した。
「星の涙を破壊することで、その危険な力を永遠に封じることができるかもしれないわ。」

翔太は思慮深く答えた。「リアナ、その案は理解できるけど、もし星の涙の力が暴走したら大きな災害を引き起こす可能性がある。本当にそれが最善の方法なのかな？」

ここでリトが言葉を発した。「翔太、リアナ、僕は星の涙の力が自然と深く繋がっていると感じる。破壊は最後の手段にした方がいいよ。」

リアナはうなずき、「リトの言う通りね。星の涙が持つ自然の力を考慮すれば、破壊はあまりにも危険すぎる。」

「星の涙を深い谷に投げ入れたらどうだろう？」翔太が提案した。「誰も手が届かないような場所なら、誰にも利用されることはないし、危険も回避できるかもしれない。」

リアナは首をかしげながら答えた。「確かに誰も手を出せない場所なら安全かもしれないけど、星の涙がそんな簡単に影響を失うとは思えないわ。」

リトは慎重に言葉を選んでいた。「もし星の涙が谷に落ちたら、その力は地下水脈や土壌に影響を与え、未知の自然現象を引き起こす可能性がある。それは生態系全体に深刻な影響を及ぼすかもしれない。この世界の自然バランスを乱すリスクを背負うことになるよ。」

翔太は深くうなずき、「そうだね、リト。星の涙をただ放棄するのは、リスクが高すぎる。他にもっと安全な方法を考える必要がある。」

リアナは彼らに同意し、「私たちには星の涙を正しく取り扱う責任がある。谷に捨てるのは、その責任から逃れるようなものね。」

「破壊も、谷に投げ入れるのもリスクが高すぎる。だったら、もう一度封印するしかないんじゃないか？」翔太が提案した。

リアナは考え込んだ後、同意した。「そうね。元々星の涙は聖地で保護されていたわ。私たちにできる最善の方法は、その場所に戻して、再び封印することね。」

リトはその話に興味深く耳を傾けていた。「封印するなら、星の涙の力を完全に制御する必要がある。僕たちにはその知識と力が必要だ。」

「それには、もっと多くの知識と準備が必要になるだろうね。でも、それが星の涙を正しく扱う唯一の方法だ」と翔太は言った。

リアナは深くうなずき、「私たちならできるわ。私たちの旅はただの冒険ではなく、この世界を守るための使命なのね。」

リトは二人に加わり、「一緒に学び、成長し、そしてこの責任を果たそう。僕たちの旅はまだ終わっていないよ」と力強く言った。

翔太とリアナはリトの言葉に力を得て、新たな旅の計画を立て始めた。彼らの目的は、星の涙を安全な場所に戻し、エルダナの世界の平和を守ることだった。これまでの冒険が彼らに必要な力と知恵を与えてくれたことを信じて、彼らは新たな目標に向かって一歩を踏み出した。