天音巫女になりまして

夕立悠理

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 「えっ、でも……私は、」
私には天音巫女の自覚なんかないし、それに代替わりの儀をしてしまえば、もう二度と家には帰れない。そんな気がした。

 「戸惑いもわかるわ。でも、時間がない。リアム、彼女を儀式の間へ」
「かしこまりました。さぁ、行きましょう」
リアムが私の手をとり、美しい女の人の後ろをついていく。リアムの手を振りほどこうとしたけれど、強い力で握られていて、振りほどけない。

 「リアム──」
「命令は聞けません。あなたはまだ、正式な巫女ではない」
だから、今代の巫女であるという女性の命令の方が優先度が高いということだろう。

 そのまま、ずるずると引きずられるようにして歩くと、大きな扉の前についた。巫女が手をかざすと扉が光り、開いた。

 「リアム、あなたは入れないからここまででいいわ」
「はっ」
リアムが私の手を離す。その隙に逃げようとしたけれど、体が動かなかった。
「力の落ちてきた私でもね、これくらいはできるのよ」

 そう自嘲するように笑って、巫女は私の手をとり、扉の中へ入った。部屋の中央へ入ると、扉がひとりでに閉まる。

 床にはびっしりと、何かの文字が書き込まれ、その文字が揺らめいているように見える。
「なに、これ……」
文字が意思を持っているみたいで、気持ち悪い。

 「古代文字が既に見えるのね。なんて膨大な神力なのかしら」

 そう呟いて、巫女は私の手をぎゅっとにぎり、叫んだ。
「今代から、新代へ。巫女の座を明け渡します」

 すると文字が光り、浮かび上がった。ぐるぐると、私たちの周りを回る。
「う、あ……」
急に頭痛がした。殴られたように頭が痛い。それに、身体中が熱い。自分の体が、内側から作り替えられる見たいだ。


 もう、だめ、耐えられない。

 ──そしてそのまま、私は意識を失った。
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みんなの感想(1件)

poka
2019.12.13 poka

不穏な感じで始まりましたが、今後の展開楽しみにしています。3話目最後、セリフ、偽ではなく、儀かなあ?と思います。ご確認下さい。

夕立悠理
2019.12.13 夕立悠理

お読みくださり、ありがとうございます。また、ご指摘ありがとうございます!修正させていただきます。

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