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偽物聖女と新聞
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「聖女マーガレット様!」
——聖女。そう呼ばれる、聖なる力を実際に持った神聖な女性がいたのは、遠い過去のこと。
「はい、なんでしょうか?」
「最近、腰が痛くて……」
この国の聖女は、今や人々の愚痴聞き係として、バイトが担当していた。
「それはお辛いですね……。病院には行かれましたか?」
◇◇◇
「ふぅー、今日も稼いだぁ!」
私は今日もバイトの日当をもらい、うきうきと上機嫌で寮に帰っていた。
私の今のバイトは、聖女(偽物)だ。……と言っても、私が偽物なのはみんな知っている。
なにせ、本物の聖女様は、もう久しく現れていない。
一番最後に現れた聖女様が、人々の悩みを聞き、癒しとなったので、今や聖女は愚痴聞き係の別名になっている。
ただ、その愚痴を聞いて適度に相槌を打つだけなので、本当に楽なバイトだ。しかも、その日にその日分のお給料がもらえるのがいい。
私がバイトをしている理由は、通っている学園の学費を稼ぐためだ。私には、身寄りがない。
所謂孤児だった。
それでも、この国に生まれたことは恵まれていて、孤児はある程度支援がしてもらえる。
……でも、それも学園に入るまで。
学園に入って以降は、学費を自分で稼がねばならないのだ。
「それに、制服も可愛いしね」
聖女の制服は、聖女という名の通り、清らかな女性をイメージした制服になっている。真っ白を基調として、金の模様が入ったそれは、女子学生の憧れの的だ。
「あ、マーガレット。おかえりー」
女子寮につくと、ルームメイトのアンナがひらひらと手を振った。
「ただいま、アンナ。どうしたの、新聞なんて読んで珍しいわね」
「だって今日の新聞、ランドルフ様が載っているんだもの!!」
急に立ち上がり、興奮気味に話し出したアンナの話に耳を傾ける。
「へぇー。アンナは、『青き軍神』サマの大ファンだものね」
——青き軍神。そう呼ばれるランドルフ・ノイグ伯爵は、この国どころか、この世界最強の騎士と謳われている。しかもただ強いだけでなく、見目麗しいらしく、アンナのような女性ファンも多い。
「そう、そうなのよ!! ……でも」
急に落ち込んだアンナにびっくりしつつ、続きを促す。
「……でも?」
「ランドルフ様、騎士を辞められるんですって……」
「怪我でもしたの?」
最強騎士といっても、怪我をしたら第一線では戦えないだろうし。
けれど、アンナは首を振った。
「それが新聞によると、ランドルフ様は、本当に仕えるべき真の聖女様を見つけたんですって」
「へー!」
真の聖女……ねぇ。
本当にいるなら、会ってみたいわ。
でも、そしたら偽物聖女は廃業になるかしらね。
まぁ、なんにせよ、青き軍神のことなど、しがないバイト学生である私には関係のない話だわ。
……なんて、思っていた。
「ようやく見つけました。俺の聖女様」
——聖女。そう呼ばれる、聖なる力を実際に持った神聖な女性がいたのは、遠い過去のこと。
「はい、なんでしょうか?」
「最近、腰が痛くて……」
この国の聖女は、今や人々の愚痴聞き係として、バイトが担当していた。
「それはお辛いですね……。病院には行かれましたか?」
◇◇◇
「ふぅー、今日も稼いだぁ!」
私は今日もバイトの日当をもらい、うきうきと上機嫌で寮に帰っていた。
私の今のバイトは、聖女(偽物)だ。……と言っても、私が偽物なのはみんな知っている。
なにせ、本物の聖女様は、もう久しく現れていない。
一番最後に現れた聖女様が、人々の悩みを聞き、癒しとなったので、今や聖女は愚痴聞き係の別名になっている。
ただ、その愚痴を聞いて適度に相槌を打つだけなので、本当に楽なバイトだ。しかも、その日にその日分のお給料がもらえるのがいい。
私がバイトをしている理由は、通っている学園の学費を稼ぐためだ。私には、身寄りがない。
所謂孤児だった。
それでも、この国に生まれたことは恵まれていて、孤児はある程度支援がしてもらえる。
……でも、それも学園に入るまで。
学園に入って以降は、学費を自分で稼がねばならないのだ。
「それに、制服も可愛いしね」
聖女の制服は、聖女という名の通り、清らかな女性をイメージした制服になっている。真っ白を基調として、金の模様が入ったそれは、女子学生の憧れの的だ。
「あ、マーガレット。おかえりー」
女子寮につくと、ルームメイトのアンナがひらひらと手を振った。
「ただいま、アンナ。どうしたの、新聞なんて読んで珍しいわね」
「だって今日の新聞、ランドルフ様が載っているんだもの!!」
急に立ち上がり、興奮気味に話し出したアンナの話に耳を傾ける。
「へぇー。アンナは、『青き軍神』サマの大ファンだものね」
——青き軍神。そう呼ばれるランドルフ・ノイグ伯爵は、この国どころか、この世界最強の騎士と謳われている。しかもただ強いだけでなく、見目麗しいらしく、アンナのような女性ファンも多い。
「そう、そうなのよ!! ……でも」
急に落ち込んだアンナにびっくりしつつ、続きを促す。
「……でも?」
「ランドルフ様、騎士を辞められるんですって……」
「怪我でもしたの?」
最強騎士といっても、怪我をしたら第一線では戦えないだろうし。
けれど、アンナは首を振った。
「それが新聞によると、ランドルフ様は、本当に仕えるべき真の聖女様を見つけたんですって」
「へー!」
真の聖女……ねぇ。
本当にいるなら、会ってみたいわ。
でも、そしたら偽物聖女は廃業になるかしらね。
まぁ、なんにせよ、青き軍神のことなど、しがないバイト学生である私には関係のない話だわ。
……なんて、思っていた。
「ようやく見つけました。俺の聖女様」
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